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教育普及レポート 教育普及 ピーター・ドイグ作品で物語をつくろう!  第1週入選作品(2020)

教育普及室

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『この人はだれ?何をしているの?』『このあとどうなるのかな?』

どこか懐かしくて不思議なピーター・ドイグの作品をみていると、想像がどんどん広がります。
あなたの心に浮かんだストーリーを、短い文章にして応募してみませんか?
「遠くて美術館に行けない…」そんな人でも大丈夫です!

対  象: 小学生・中学生・高校生
応募期間:2020年8月4日(火)~8月31日(月)

第1週 8/4(火)~8/10(月・祝)

【第1週】は、36通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品8点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品2点を選出しました。
おしくも入選とならなかった作品のなかにも、すてきな物語がたくさんありました。

研究員のイチオシ

ピーター・ドイグ《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館

大須賀祈音さん(中学2年生)

突然、道が開けた。
僕が彼女と海を描きに来たのは、もうこれで何度目だろう。そう、僕らは画家の卵だった。美大が休みのときはどちらともなくさそい合い、よく海に行った。小さな入り江は僕らだけのプライベートビーチだった。彼女が海を描き、僕は山と星を描いた。またあるときは彼女が山と空を、僕は海を描いた。
あるとき、僕は彼女とキスを交わした。彼女は照れたように笑い、なにか言いたげに僕を見つめた。僕らはもう一度口付けをした。
「お待ちしておりました。」
厳かな老人は言った。黄色いコートに黒いハットと奇妙ないでたちだった。だけど僕にはどうでも良かった。
「どうぞこちらへ」
無表情な老人に案内され、僕は彼女と歩いた。ランダムタイルの壁がどっしりと構えた。
僕は、彼女を海に帰した。
彼女は、粉になり、舞いおちていった。

研究員からのコメント

衝撃のラストに驚きました。「僕」は二人並んだ人物の左の方ということでしょうか。この作品の前に立つと、砂糖の結晶のような絵の表面に目がいくのですが、粉になって海に帰った彼女だと思って見るとしんみりとしそうです。(教育普及室 細谷)

ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵

ゆあさん(中学3年生)

天気は快晴。それなのに動物界では百獣の王とも呼ばれているライオンが鬣を垂らして俯いている。落ち込んでいるのか。いやライオンは怯えているのである。
コツコツコツと足音が聞こえる。足音が聞こえるのに周りは誰もいない。誰もいないのに足音が聞こえる。どこから敵が現れるのか、そんな恐怖に百獣の王でもあるライオンが脅えているのである。
「こんな恐怖に襲われるのなら檻の中で過ごした方がマシだ。」そんなことすら思う程に。
そんな時笑い声が聞こえた。楽しい笑い声ではない。バカにするような笑い声。檻の中にいる仲間が「自業自得だな」とバカにしているような。
それを耳にしたライオンは怒りに震えている…のでなく、さらに怯えて震えている。ゆっくりライオンが檻を覗いてみる。ゆっくりゆっくり。やはりだ。誰もいない……。
誰もいないのに誰かの監視下にあるような恐怖。
ライオンは自らまた檻へと戻っていった。

研究員からのコメント

ついついライオンに目が行きがちなこの作品ですが、左側に透けて景色に同化している人物や檻の中の人物など、人の気配がします。見えていない誰かの視線を感じているライオンの心情描写に、お話を読んだこちらも考えさせられました。(教育普及室 細谷)

入選作品

ピーター・ドイグ《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー

余湖夕真さん(中学2年生)

俺の名前は「カール・キャメロン」
趣味は登山。今日は自宅から30キロ離れた標高一四七六メートルのとある雪山を一人で登っていた。冷たい風が顔にあたり、指先や足先の感覚もなくなってきた。体の体温も奪われていく中、標高九八〇メートル。強い吹雪が突然起き、視界が一瞬にして真っ白になった。「おかしい、今日の天気は曇りのち晴れのはずなのに。」つい声に出して言ってしまった。視界が悪い中、標高一〇八〇メートル付近にある山小屋を目指し、思い当たる道を少しずつ進んだ。小屋を目前にした一〇六〇メートル、体力を奪われていく中、足をすべらせてしまった。
目を覚ました時、吹雪はやみ空は曇っていた。辺りを見回すと、雪解け水によって出来た水溜りが紫色に輝いていた。水面の上に立つと、いきなり自信がなくなり、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。気付いたらそこは白銀に輝く世界だった。

すいかさん(中学2年生)

今日も来たな。今日もこの子は私に足をひたし、私に話しかける。「おはよう」とこの子が言う。空気がひどく冷たく、昨夜から雪が降り続けていた。寒くないかと私が聞く。彼は全身が私につかるように寝てから言った。「寒くないよ。君が僕を包み込んで暖めてくれるから。」私は黙っていた。この子に必要とされている気がして嬉しくなった。木々に話を聞かれるのが恥ずかしいので、小さい声で話そうと思った。会話がないのがもどかしく感じて、今日どんなことがあったか聞いてみた。「今日、学校で席替えがあって、好きな女の子と隣の席になったんだ。」人間と湖の恋が成立しないとは最初から分かっていた。しかし、この子が他の人を好きになるなんて思いもしなかった。気がつけばあたりは暗くなっていた。帰らなくていいの?彼から返事はない。彼は眠っていた。いつもは一緒に寝るのが嬉しいのに、今日はそうじゃなかった。深く眠る彼を包み込みながら、私は泣いた。

ピーター・ドイグ《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館

鈴木民美さん(中学2年生)

ここは、私が小さい頃からよく来てる場所で、町が見わたせる最高の場所なの。
よくお父さんと来てはしゃいでた、そんなお父さんと今は全然話が出来ていない。
子供の頃からとても優しい父で、私が小さい頃にお絵かきをしてプレゼントしたかさを今も使っているの。
無口で優しくて不器用な父がとっても好き。私も、そんな父に似たのか不器用で、感謝の気持ちも伝えられないのが少しさびしいの。でも似た事がうれしくないわけではないよ。
ついに、明日は父の日なのよ。最高のサプライズプレゼントを用意したくて、買い物をしに出かけたら父が歩いてて、その日はとっても晴れていて少し年季の入った小さい頃にあげたかさをさしていたわ。
その姿に、感動して泣きそうになったの。
さて、明日のプレゼントは何にしようかな、かさの次は何がいいかな、そんな事を考えていたらとってもいい物を見つけた。

ピーター・ドイグ《赤いボート(想像の少年たち)》2004年、油彩・キャンバス、200×186cm、個人蔵

ふじよし まいさん(小学2年生)

「ひみつのしま」
ある日、六人の子どもたちが、ふねにのっていると、見たこともないしまに、まよいこみました。
ふねからおりて、しまの森の中に入っていくと、マンゴーやぶどう、びわなど、たくさんのフルーツがありました。
六人はそれからまい日、ふねにのって、しまにかよいました。
しまではまい日、フルーツをたくさん食べて、たくさんおどりをおどりました。
しまのことは、おとなたちにはないしょにしました。

ピーター・ドイグ《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家

小西瑠美さん(中学3年生)

自然に囲まれて卓球を行うことは、わしの最上級の楽しみである。ここは自然と一体となって猛特訓できる唯一の場所なのじゃ。
もう何時間ここで練習しただろうか?この日焼けがその精進を重ねていった長さを物語っている。球があることを意識してラケットを振り続けていると、周りは黒や青となってぼやけて見える。
「相手がいない」だと?相手なんぞいらん。スポーツなんか、必ずしもボールとか相手だとかそういうものを必要としない。真の敵というのは自分自身だからだ。

宮崎夏奈子さん(小学1年生)

ある日、おじさんがジャングルおんせんに行きました。ジャングルおんせんは、かべにジャングルのえがかいてあるおんせんです。えを見ながらおんせんに入ります。
おじさんがおんせんに入ろうとすると、むこうからだれかやってきました。「やっほー」それは、おじさんのともだちでした。二人はいっしょにおんせんに入ることにしました。
かべには森やとりのえがかかれていて、とおくには山も見えます。ほんとうにジャングルの中でおんせんに入っているようです。
おんせんからでるとともだちが、「たっきゅうやろうぜ!」といいました。おじさんはさんせいしました。おじさんはたまをとおくにうってしまいました。ともだちがたまをとりに行きました。
おじさんはつぎこそはと、かまえます。「きた!!」おじさんはたまをうちました。ところがたまはともだちのおでこにあたってしまいました。ともだちはおこりませんでした。二人ともわらいました。

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