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教育普及レポート 教育普及 ピーター・ドイグ作品で物語をつくろう!  第3週入選作品(2020)

教育普及室

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『この人はだれ?何をしているの?』『このあとどうなるのかな?』

どこか懐かしくて不思議なピーター・ドイグの作品をみていると、想像がどんどん広がります。
あなたの心に浮かんだストーリーを、短い文章にして応募してみませんか?
「遠くて美術館に行けない…」そんな人でも大丈夫です!

対  象: 小学生・中学生・高校生
応募期間:2020年8月4日(火)~8月31日(月)

第3週 8/18(火)~8/24(月)

【第3週】は、62通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品13点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品3点を選出しました。
今週は「ピーター・ドイグ展」を担当した桝田主任研究員も審査に加わっています。

研究員のイチオシ

ピーター・ドイグ《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー

北澤陽菜さん(高校2年生)

また来たのか。君は毎日俺に会いに来ては友達ができないだとか、親に叱られるだとか、聞かされるのはこれで何回目だ…?こちらの身にもなってほしい。君は俺に比べたら充分幸せ者じゃないか。俺なんて友達をつくるどころかこの凍った湖から出ることすらできないのに。
そんなことを考えながら黙って彼の話を聞いていると、不意に彼が「僕は君になりたい…。」と言った。あぁ、そうか、最初からこうすれば良かったんだ。俺は彼に手を伸ばす。……「なぁ、湖の中の居心地はどうだ?」

研究員からのコメント

少しこわい結末から星新一のショートショートを思い出しました。絵は入れ替わる前なのか、それとも後なのか。それによって見方が変わりますね。(企画展室 桝田)

ピーター・ドイグ《赤いボート(想像の少年たち)》2004年、油彩・キャンバス、200×186cm、個人蔵

谷本優真さん(小学4年生)

このジャングルには、時々「人間」と呼ばれる生物がやってくる。その「人間」とやらは、実に奇妙だ。なんたって、バランスの取りにくい二足歩行なんだ。しかも歩くだけじゃなくて、走ることまでできる。僕に追いかけられて、逃げ切れるほど速くはないけど。
さらに、やる事も奇妙だ。このジャングルをあんな風にしちゃうなんて。ジャングルは、最初からあんな奇妙じゃなかった。あれは、「人間」がゴミを捨てたりして荒らしたせいなんだ。おかげで、葉の色も幹の色もおかしくなって、木もぐねぐねと曲がり始めた。最近は川まで緑色に濁ってしまった。いずれ茶色になるだろう。
おっと、自己紹介が遅れたね。僕は、ジャガー。水の中でも速く泳げるし、地上も速く走れる。だから、僕は見張っているんだ。今日もまた「人間」が舟に乗ったまま、こちらを見ている。あいつらがもし上がってくるなら、追っ払ってやる。なぜかって、それは僕のすみかを汚すからさ。

研究員からのコメント

絵を見る視点を語り手(ジャガーの目線)として捉えているところが良いですね。「人間」たちも不安そうに見えます。(企画展室 桝田)

ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵

わたしさん(中学2年生)

「助けなきゃ、僕の大事な友達!」足音を忍ばせてそっと近づく。そう、あれはほんの三十分前のこと。僕は毎日の日課である散歩をしていたんだ。すると突然後ろから何か大きな物がぶつかってきた。僕はその場に倒れ込み、気がついたら幽霊になっていた。訳も分からずその場に立ちつくしていると、どこからかサイレンの音が聞こえてくる。「○○近くで野生のライオンの目撃情報がありました。みなさん気をつけて下さい。」僕の友達がいる場所の近くだ、そう思って急いで駆けつけると、最悪なことにすでにライオンはそこにいた。もし彼がすぐ近くにライオンがいることを知らなかったらどうしよう。彼が襲われるのだけは阻止しなきゃ。でもドアのすぐ前には腹を空かせたライオンがいる。僕はそっと後ろから近づく。幽霊になっても何故か気配を消そうと必死になってしまう。そのとき、ドアがゆっくりと開き始めた。待ってくれ、ドアの前にはライオンが…「危ない!」

研究員からのコメント

突然、透明人間になった僕。友達を助けるためにライオンに近づく、緊迫した場面の臨場感がよく伝わります。ドアの小窓には確かに「友達」らしき人影が。この後どうなるのか気になりますね。(教育普及室 浜岡)

入選作品

ピーター・ドイグ《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー

岩竹まえさん(中学3年生)

彼は反応が鈍いせいで、またしても仲間の目にした美しきものを見逃してしまった。それはユキウサギだ。仲間が歓声をあげる中、彼だけはそちらを振り向けずにいた。結局その姿を捉えられなかった。
今朝の出来事を思い返すうちに、彼は自己嫌悪に陥ってゆく。あてもなく歩き続け、山を越えた先の小さな湖に辿り着いた。気分が沈むと必ず来る場所だ。冷たい湖にそっと足を踏み入れた。いつも通りに湖の真ん中まで進んだ。
突然、強い北風が吹くと、彼は別世界にいた。
そこには黒く澄んだ瞳をもち、凛々しく真っ直ぐに立っている男がいた。寒い冬の柔らかな陽光に照らされて眩しく輝いていた。
男に見入っていた彼はふと我に返った。その男は湖面に映る自らの姿だったのだ。彼は純真さという自分の美点を思い出した。そして、はにかんだように微笑み、しばらく湖の中に立っていた。雲間から暖かい光が降り注いできた。

サキコさん(中学3年生)

自分を映すものが嫌いだった。鏡も水面も。
あの日、愛犬のハルは水難事故で亡くなった。でも、僕がもっと強かったら死なずにすんだ。その日から自分を映すものが嫌いになった。ちっぽけで弱い自分に気付いてしまうから。もう泣かない。そう思っても涙を溜め、落ちないように我慢している自分が水溜りに映る。あの日から何も変わっていない。かっこ悪い。
ある冬の日、気付くとハルが亡くなった池の浅瀬に足を踏み入れていた。またちっぽけな自分の姿を水面に見た。大好きだったハル。ごめんね。ごめんね。自然と気持ちが溢れてきた。目の前がぼやける、違う、これは水面が揺れているからだ。僕が泣いているんじゃない。でも、溢れた涙は止まらなかった。ふと顔を上げるとまるでさっきとは違う景色に見えた。池が涙を吸収し寄り添ってくれているような気がした。水に映る僕も少し強くなったような気がした。
ねぇ、ハル、僕もう泣かないよ、ホントだよ。

ピーター・ドイグ《オーリン MKⅣ Part2》1995~96年、油彩・キャンバス、290×200cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾

はしもとみちるさん(中学2年生)

ある日あったスキージャンプ大会。みんな大会がおわり、帰り始めたころ突然とんだ男の人が1人いた。しかも、大会で優勝した選手よりもあきらかに高くとんでいる。まだその場に残っていた人は目をみひらいた。しかし、その飛んでいる、ういている本人はというととても無表情。一回とんだあと、何もなかったかのようにその場を去っていった。それを見ていたこの大会で優勝した男は、何かを思い出した。三年前、一番のライバルだった奴だ、と。その男は突然姿を消し、そして今、もっともっと上達して、帰ってきたのだと思った。彼の心は燃えたことだろう。

ピーター・ドイグ《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館

斎藤美月さん(小学6年生)

「鏡の湖」

太陽が沈み星が点々と光りだしたとき、一軒の家の中に光がともった。
森は黒くその家は特に目立っていた。中には、家に住むおじさんとその友達がいた。
「これから何しようか」
おじさんは聞いた。友達との時間は無駄にしたくはない。しかし、やることが思いつかない。
「一息入れて散歩でもしよう」
友達が言った。
二人は家から続く長い橋を渡った。湖には、たくさんの星が鏡のように映し出されている。
二人は門を出て歩き出した。外は肌寒い。しかし、夜とは思えない明るさ。
「きれいな景色だね」
「冬にしか見れない景色だよ」
会話をしていたらもう門に戻ってきた。その時二人は驚くものを見た。
遠くの方にオーロラが輝いていたのだ。何色も色を変え、湖もその様子を映していたので湖まで虹色に輝いていた。
その様子を二人はオーロラが消えるまで眺めていた。

水性ペンさん(中学2年生)

手が届きそうな程の星が輝く夜のこと、突然現れた細くて長い道を、動物達は距離をとって見つめます。ここは世界の片隅にある、自然豊かで静かな場所。葉の色が変わっても、葉が落ちても、それはそれは美しい景色なのです。一年中変わらない澄んだ空気。しかし今夜はいつもと違う、何かが起こる、そんなことを動物達はささやいています。道が現れると同時にオーロラが空を覆い隠し、まるでこの世界ではないようです。すると道から、2人の老人が歩いてきました。
「やっとだ。やっと着いたぞ!もうこの道何年歩いてきたんだ?10年、20年、30年…。」
「子どもの頃に別の世界に行ってみたいと言って、方法を見つけるまでは早かったがなあ。」
「こっちの世界は魔法使えるやつおらんらしい。」
「ほう、色々と不便そうじゃな。」
ここは世界の片隅にある、自然豊かで静かな場所。そして、この世界と別世界をつなぐ道の、入口である。

ピーター・ドイグ《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館

澤田結奈さん(高校1年生)

ある夏の日に、少し年のとった男性が橋を渡っている。外は晴れているのに、なぜかさをさしているのだろうか。今にも道に倒れてしまいそうだ。この男性は、奥さんとケンカをしてしまい、家を出てきてしまい何か体力をつけるために食べものをさがしている。これ以上、日に当たると倒れてしまいそうなので、ゴミ箱に捨ててあったぼろぼろのかさをひがさがわりにして歩いている。どうしようもないからこのままUターンして家に帰ろうか。と自分の影をみながら考えているそうだ。

一般生徒さん(中学2年生)

久しぶりにここに来た。ここは僕が子供の頃に住んでいた場所だ。この場所があんまり変わってなくて少し安心した。でも子供の頃を思いだすと、少し、ほんの少しだけ寂しいような気がした。ここから見える景色も相変わらずきれいだった。けれど子供の頃より儚く見えた。僕は思い出に浸りながら少し歩いた。今の生活や環境に不満があるわけではない。むしろ楽しいくらいだ。子供の頃が特別僕の人生で充実していたとも思わない。けど僕はまたここに来ようと思った。

ピーター・ドイグ《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家

海野愛乃さん(中学2年生)

火を噴いたゴリラがこちらに突進してくる、そして飛びかかる!なんていうシーンで目が覚めた。ふと上を見るとダレカが心配そうにのぞき込んでいる。いや正確には彼の透明な顔がのぞき込んでいるような気がした。
ダレカに会ったのは50年前。まだ10才だった私は1人で卓球をしていた。しかし1人では寂しかったから「誰か遊ぶ人いないかな」と呟いたのだ。もちろん誰もいないと思っていたから「ここにいるよ。ダレカっていうんだ。」と返事が返ってきたときには驚いた。しかしすぐに透明人間の子供だという彼と私は仲良くなったのだ。
「今日も卓球、やるかい?」いつものように彼は聞いてきた。いつからだろうか。毎朝彼とこうして過ごすのが習慣になっていた。そしてなぜかそうすることが無性に嬉しかった。もしかしたら変わらない友情を感じれるからかもしれない。
私達は裏庭の思い出の詰まった卓球台へ行くといつものように、真剣にでも楽しく打ち合い始めた。

ピーター・ドイグ《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵

まーちゃんさん(中学1年生)

ここは夢の世界。人は寝ている間、夢の世界に来ている。そして、目が覚めると、もとの世界へと戻っていく。境界線を越えて、帰るのだ。たいていの人は、自分でも気づかないうちに帰っていくから、境界線がどこにあるかを知らない。知っているのは、番人だけだ。番人は、自分で帰らない人たちを、帰らせる仕事をしている。

私はもう何日もここにいる。気がついたら、ここに立っていた。なぜか、オレンジ色のウェットスーツを着ている。しばらく立ちすくんでいた私は、近くに島があることに気がついた。もしかしたら、誰かいるかもしれないと思って、島に上がった。しかし、島には誰もいなかった。島を一巡りした後、私はボートに戻った。すると、ボートの上に女の子が座っている。彼女は、黄色いコートを羽織り、うつむいている。何故だかわからないが、彼女を追い出そうとは思わなかった。

ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵

おはなさん(高校1年生)

「もう動けねー。」俺は元々動物園に居たライオンだ。毎日ご飯を与えられ、寝て、人間に見られるそんな毎日が嫌になっていた。ある日俺の飼育員がいつものようにご飯を持って来た。だがそこには俺の大好物の馬肉が無かった。俺は毎日イライラしていたものが爆発して脱走してしまった。あの時は、無我夢中で走っていたから何も思わなかったが今後悔している。後先も考えずに脱走してしまったこと。結果今俺は腹ペコで動けず、ヘトヘトだった。帰りたいと思ってもここがどこかも分からない。俺はここで死ぬのかと思ったら怖くなった。「神様。もうあんなこと思わないから帰してくれ…。」俺は気づかなかった。後ろから聞こえてくる足音に。

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