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教育普及レポート 教育普及 ピーター・ドイグ作品で物語をつくろう!  第4週入選作品(2020)

教育普及室

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『この人はだれ?何をしているの?』『このあとどうなるのかな?』

どこか懐かしくて不思議なピーター・ドイグの作品をみていると、想像がどんどん広がります。
あなたの心に浮かんだストーリーを、短い文章にして応募してみませんか?
「遠くて美術館に行けない…」そんな人でも大丈夫です!

対  象: 小学生・中学生・高校生
応募期間:2020年8月4日(火)~8月31日(月)

第4週 8/25(火)~8/31(月)

【第4週】は、98通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品16点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品4点を選出しました。
物語の募集は終了しましたが、これからも「ピーター・ドイグ展」をはじめ
東京国立近代美術館の企画をお楽しみいただけたら嬉しいです。

研究員のイチオシ

ピーター・ドイグ《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー

緑川修平さん(中学1年生)

僕の住む町は、寒い小さな町だ。自然が豊かで大人はチーズとワインを楽しんでいる。子供たちは、毎日、温かいミルクとパンを楽しんでいる。この町は森が多く町の至る所に木々がありとても静かな町だ。そのはずれに小さな湖みたいな池がありその池の近くを毎日散歩することが日課である。そこによく見かけるおじさんの行動がいつも気になっている。凍った池を足でなぞっている。僕はその姿が楽しそうにも見えなにかを打ちけそうとしているようにも見えていた。それが不思議で気になってしまう。別に見なければいいものを。でもやっぱり気になってしまう。この光景を何度見ただろうか。声をかけようとするが聞きそびれている。もし声をかけたら毎日の散歩がかわってしまう。明日もこの寒い朝におじさんは立っているだろうかなどと思い何となく散歩が楽しみになってきている今日この頃。

研究員からのコメント

「気になるけど話しかけられない」という小さな葛藤を、僕が楽しんでさえいる様子が面白いですね。この絵が僕の眼に映る光景だと思うと、おじさんが気になって自然とじっくり見てしまいます。(教育普及室 浜岡)

ピーター・ドイグ《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館

野村遼大郎さん(中学1年生)

いつも男は漁が終わった午後過ぎにトラガレット・ロードを歩いている。この時間の風は発電所の鼻を刺すような臭いを海へ運んでくれる。車道の向かいにメソジスト教会と治安裁判所があり、その先の街路の角に目当てのレストランがある。今日みたいな日はテラス席からグリルを眺めつつ珈琲の香りを楽しむのが最高だ。
脇のラペイルーズ墓地の古びた墓や共同墓が雑然と並んでいるのが壁越しに目に入る。子供の頃、暗くなったこの歩道で祖父母の手を握ると優しい笑顔があったのを思い出す。その二人も今はこの壁の向こうにいる。海に向かって吹く乾いた風にスティールパンの陽気な音色が重なった。今日は帰りに花束を買おう。

研究員からのコメント

壁沿いの道を取り巻く建物と匂い、音、空気へと情景が広がりますね。お洒落アイテムがたくさん出てきて小説のワンシーンのようです。(教育普及室 細谷)

ピーター・ドイグ《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵

星野夏葉さん(中学3年生)

「お嬢さん。ここの魚を食べると体の中の悪いやつが消えて元気になるんだ…元気になりたいんだろう?ほら、これを食べるんだ…」
「はい…」

幼い頃からひ弱だった私は人生の殆どを病院で過ごしてきた。けれど今日の夜、このオレンジ色の男が突然私の目の前に現れて、こう言った。
「病院から出て元気になりたくないか?」
正直、病院ばかりの生活にうんざりしてた私は、この男の言葉を信じて、病院から逃げ出してきた。
そして今、この魔女のスープみたいに気味の悪い湖にやって来た。

「でもその魚…本当に体にいいんですか?こんな綺麗とは言えない湖にいる魚なんて食べられません。」
「そんなこと言うんじゃない。食べるんだ…」
「そんな…私嫌です。」
「食べるんだ。」
「怖い…」
「口を開けろ…」
「はい…」
パクっ…ウエっ
何この味。毒みたい。あっ、あっ…あれ?目の前が暗くなっていく…

「お嬢さん。手術無事成功しましたよ。」
目を開けるとそこは病院だった。

研究員からのコメント

良薬は口に苦し。あやしさ満点なのに、謎の男と少女の会話はどこか可笑しくて何とも不思議なお話です。毒の味がするという魚はどんなビジュアルなのか気になります。(教育普及室 浜岡)

ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵

すーさん(中学3年生)

見えているものだけしか信じない?そんな君に良いモノをあげよう。これだよ、この玉を通して世界を見てごらん。ね、色々見えてきたでしょう?わからない?じゃ、教えてあげる。黄色い建物のそばを歩いている男の人。よく見ると透けてるよね。あの人、もう亡くなっているんだよ。何か未練があったのか、まださまよっているんだ。あっ、目の前にライオンがいるね。傷だらけだし相当弱ってるね。魂がぬけかけている。痩せているし、食べ物がなくて町まで来ちゃったのかな?扉の内側にも人が見えるって?玉がなくても見えるはず。輪郭もしっかりしているし、彼らは実体で、生きている人だよ。
これでわかったよね、この世は実体のものと実体じゃないものがまじりあってるんだ。あなたの周りにも…

研究員からのコメント

実体のあるものとないもの、見えているものといないもの。一枚の絵の中でいくつもの層が重なっている感じがお話で楽しめました。(教育普及室 細谷)

入選作品

ピーター・ドイグ《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー

梶山詩苑さん(中学1年生)

真冬のある日、雪がしんしんと降る中で男の子が湖の上にたたずんでいました。私は、こんなに寒いのに何をやっているのかと思ったら、ふと違和感を覚えました。こんなに寒いのにもかかわらず、湖の水が凍っていなかったのです。男の子の立っている場所の水はうずを巻いていて、水は凍っていないことを表していました。それにもう1つ不思議なことに気づきました。いつもの湖よりも明らかに水深が浅いのです。もとから水深が深い湖ではありませんが、少なくとも男の子の腰の位置までは水があったはずです。おそらくこの男の子はそれらの謎が気になり、湖に来たのでしょう。私もこの謎が気になったので、行ってみることにしました。湖にはまだ男の子がいたため、まず男の子の所に向かおうとした瞬間男の子が消えてしまいました。驚いた私は、下を見ると水はいつもの水深にもどっており、私はぬれた服を着がえようと急いで家にもどると湖は凍っていました。雪は吹雪に変わり辺は一層寒くなりました。

渕田葵愛さん(中学1年生)

ある日、由弦(ゆずる)は山に囲まれた村の別そう地にやってきた。由弦は毎年のように別そう地に来ている。だが、今回珍しい水たまりがあった。そして、水たまりを見て疑問に思った。なぜあの水たまりは、あんなに太陽が反射して光っていて、風がおだやかに水たまりをゆらしているのか。自然でこんな美しい現象が起こるのかと由弦は思った。歩いて実際に見てみることにした。水たまりの中を入ってみたいので、長靴をはいた。水たまりの中に入ってみると、思ったよりもまったくイメージが違っていた。ものすごくきれいでキラキラ輝いていた。風もちょうどよく吹いていてまるで水たまりと風が美しい音色を奏でているみたいだった。それを感じた由弦は感動しておもわず声を出した。
「なんてきれいなんだ。人生の中で初めて見た芸術作品だ。」と言った。
由弦は、この現象を「世界一美しい金の輝き」と名付けた。

ぴとさん(高校3年生)

広い水たまりの淵へ向かう

はらはら

「ああ、だからか」

ゆらゆら
行き場がなくて、呟く
ぽつ

一方向
なんでこんなに綺麗なんだろう

たぷり

全人類が好きなようでずっと1人を好きでいる

「わたしはもっと、自由な気がする」
どぷ

じわり

水が沁みてくる足もとが許せない

「帰ろう」

はらはら
はらり

ピーター・ドイグ《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館

猪飼 菫さん(小学3年生)

森の湖の近くに古いお城が建っていました。寒い冬の夜です。雪が降っています。
遠くでふくろうがやさしい声で泣いています。
二人の男の人がお城の裏口に出てきました。二人ともコートを着ています。二人はやさしいえがおで、旅人をでむかえます。
旅人は、いろいろな国を周って、春に植える種をくばっています。毎年、オーロラが夜空に見える冬の終わりに、こっそりやってきます。
「どうぞ。」二人は旅人をお城にそっと招き入れます。
三人はお城に続く細い道を歩いていきました。

竹内結菜さん(中学1年生)

2020年に海に沈んだ幻の「神のオーロラ島」の物語。この小さな島国オーロラ島でしか見られない星空は「神の天の川」と呼ばれ、その姿は、美しくゆらめくオーロラに蛍のようにきらきらと輝く沢山の星が夜空一面に広がっていました。そこに存在感のある月の姿もありました。そして、「神の天の川」には「カメレオン海」と呼ばれる海にその姿を映し、ここに訪れた人々は「第2の宇宙みたい」と夜景を満喫していました。そして、もっとこの国を知ってもらおうと、国王のクリスが「カメレオン海」に「神の天の川」に沿って橋をかけました。その後、観光客が増え、経済が発展しました。そしてこの国は「宇宙の国」と呼ばれ有名になりました。やがて、だんだん地球温暖化が進み、オーロラ島は沈んでいきました。そして、2020年の1月にとうとう島は完全に沈み、「カメレオン海」の中央には、橋だけが残りました。そうしてオーロラ島は、「幻の神のオーロラ島」と呼ばれるようになったそうです。

ピーター・ドイグ《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館

橋本さん(高校1年生)

「元気かな。」俺は今、久しぶりに実家に帰っている最中だ。
夏の暑い中、小さい頃の記憶を思い出しながら、足を進める。
今では、うるさいと感じるセミの鳴き声もなんだか良いものだと思える。
ジリジリとした暑さのせいで汗が止まらない。せかす気持ちと裏腹に足が思うように動かない。なぜかこの景色に目をうばわれてしまったからだ。
「変わったな。」また俺は足を進めた。

利倉遙日さん(中学2年生)

私は世界中を旅する写真家だ。今、とある町のはずれにある港町におとずれている。船が行き交うだけあって市場には新鮮な魚たちが沢山並んでいた。私は市場の活気あふれる人々を写真に収めたあと、すこし歩いていくうちに沢山の写真を撮ることができた。辺りを見渡すと橋のような大きな一本道が私の目にとまった。ここでは不思議な感覚につつまれながら、あるおじいさんに目線が集中した。空は晴れているのにかさをさしている。しかも、そのかさは女もののぼろぼろなバラ柄のかさ。彼は人の目線をきにもせず真っすぐ歩いている。すこし彼の姿を目でおっていると急にぴたっと彼は止まり、そうするとこちらに手まねきして私を呼んだ。そして彼はいきなりおっとりとした口調でしゃべりだした。
「この壁は思い出なんだ。ここを通った人々のさまざまな思いが染み込んでいるんだよ。」そう言うと彼はかさをさして歩いていった。私は彼の思い出と彼の後ろ姿を写真に収めた。ここには私の思いでも染み込んでいる。

ピーター・ドイグ《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家

かわさん

俺はスポーツが好きだ。なんてったって、自慢の筋肉があるからな。長距離走は苦手だが他の種目には自信がある。今日は友達と卓球だ。卓球を外でってなんか変な感じだが、久々だからすごくワクワクする。でも、やってみたものの、俺がサーブをしてから球が戻ってこない。力強くやりすぎた。戻ってくるまで弱く打つ練習だ。

ピーター・ドイグ《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵

本当は殻に閉じこもっていたいオカモノアラガイさん(中学3年生)

僕はいつもと同じ時間にいつもと同じように魚を捕りに行った。何か違うことがあったとするなら上弦の月だったことかな。浜についたら池の近くに小学生くらいの黄色い服を着た女の子が座ってた。こんな夜中になんでひとりでいるんだろ…と思いながら、心配だったので一声だけ掛けた。「お母さん達、心配するよ?早く帰りなね」と。すると「うん」とだけいって立ち去っていったから僕はすぐにいつも通りに潜った。帰り道、女の子がいなくなっていたので安心していたら、池に浮いているものに目が行った。黄色の服。僕は走って帰った。女の子はどんな顔だった?どこへかえっていった?それだけが思い出せない。

吉井麗実さん(高校1年生)

舟の方にオレンジ色の男の人と女性がいる。実はこれ結婚プロポーズのシーンだ。男の人は女性に結婚指輪を見せてプロポーズしようとして答えを待っていたところ、女の人がはいと言った瞬間突然突風が吹いて指輪が飛ばされて海に落ちてしまった。あれないと思い周囲を見回したときに指輪が浮かんでいる。その時だった。大きな魚が指輪を食べてしまう。男の人は指輪を取り戻そうと大きな魚を倒しに槍とロープを持ち、海に潜った。すると魚が目の前にいてまず槍を魚の表面に刺してそれからロープで巻き付けた。しばらくすると魚が弱ってきて魚が今まで食べてきたであろうものを口から出した。指輪は無事見つかった。男は神様にお礼をして女性のほうに向かった。見つかったよと言うと女性はなんて勇敢だと涙を流した。そしてあの後、夫婦は幸せに暮らしたとさ。

江原寧々さん(中学3年生)

上は「天国」
下は「地獄」

「あなたはどちらへ行くつもりなのでしょうか。」
黄色い死神が聞いてきた。
「私の格好を見ての通りですよ、察して下さい。」素潜りの格好をした赤い男が呆れた様子で、黄色い死神を嘲笑する。
黄色い死神は赤い男が船の底に行くと察した。
黄色い死神はふと思った。(鎌で仕留めてやろう…人間は邪魔だ…)

1週間後、黄色い死神が変わり果てた姿で陸地に打ち上げられてているのを近隣の住民が発見した。
そう、あの赤い男は素潜りをする理由で船に相席した訳では無いのだ。20XX年の小さな三日月から来た素潜りをする人に変装した宇宙人だったのである。
赤い男は黄色い死神を殺す前にふと思った。(銛で仕留めてやろう…過去の人は邪魔だ…)
黄色い死神の思考がはたらく前に仕留めてしまったのである。

ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵

染井寿野さん(高校2年生)

I氏は目が覚めると、自分の体がないことに気がついた。いや、I氏の体は消えて、透明人間になっていたのだ。
「こいつはしめたぞ。」
I氏はそう言うや否や、さっさと町へ出て行った。今のI氏の頭の中はあれやこれやとイタズラが浮かんでくるばかりだった。
町は海に近いところにあったため、灯台が町の近くに立っていた。だが、この灯台は普段、関係者しか立入りができなかった。I氏も灯台に登って町を見おろしたいと思っていた。そこでI氏は灯台に登り、町を見ると、黄色い家の傍に橙の毛むくじゃらがいるのを見つけた。
「あいつは獅子じゃないか」
I氏はすぐに灯台から降りて、黄色い家へ向かった。行く途中、I氏には獅子の尾を摑み、驚かすことを思い付いた。I氏は獅子の後ろからそっと近付き、にんまり笑って…。
朝、起きたI氏の手に獅子の人形がいた。

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