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現代の眼 シリーズ アートライブラリ 開館70周年特集―情報コーナーのリニューアル

長名大地 (企画課主任研究員)

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図1 2022年リニューアル後の情報コーナー(4F)(撮影:大谷一郎)

 美術館4階のエレベーターホールから「眺めのよい部屋」へと向かう途中に、情報コーナーと呼ばれる小スペースがある。従来、ここでは「来館者システム」や、自館の展覧会カタログ、『活動報告』、『研究紀要』、美術館ニュース『現代の眼』といった刊行物が閲覧できるようになっていたが、先の新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う感染症対策から、2020年度以降長らく提供を停止していた。徐々に対策緩和への動きが見られるようになり、情報コーナーのあり方について改めて検討を行い、2022年12月1日に当館が開館70周年を迎えたのを機に、美術館の歴史を振り返るコーナーへと刷新することで館内調整が行われた。そして、10月12日から始まる所蔵作品展「MOMATコレクション」に併せて、美術館の歴史を振り返ることのできる大型の年表と展示ケースを設置し、情報コーナーを刷新した(図1)。

 そもそも情報コーナーは、いつ頃から設置されたのだろうか。美術館に初めてその名が登場するのは、2001年の増改築時のことである(図2)。当時の『活動報告』には「美術館3階に情報コーナーを設けて、来館者システムの端末を3台設置するとともに、近年開催の当館展覧会カタログおよび所蔵品目録ほか参考図書の閲覧スペースを用意することができた」1とある。「来館者システム」(図3)とは、いわゆる所蔵作品のデータベースで、当時、館内という制約はあるものの、画像を含めた作品情報を一般の方々が検索できる唯一の仕組みと言えるものであった。

図2 2001年増改築時の情報コーナー(3F)
図3 来館者システム

 現在でこそ、「独立行政法人国立美術館 所蔵作品総合目録検索システム」(2006年公開)2や、当館のウェブサイトリニューアルを契機に設けられた「作品検索」(2023年公開)3などを通して、オンライン上で作品情報を得られるようになっているが、「来館者システム」はそうしたシステムの礎と言えるだろう。筆者の前任者である水谷長志は、この情報コーナーが設置された際、「特に意を用いてデザインしたのは、このコーナーが常設展示場の一角に設けられていることもあり、常にその公開情報と、「いま、そこに」並べられている作品との関係を維持させるということであった」4と述べており、作品とデータベースの相補的な関係性を意図して設置されたことが窺える。その後、情報コーナーは2012年に行われた所蔵品ギャラリーのリニューアルに伴い、3階から現在の4階に移設された。

 さて、今回装いを新たにした情報コーナーでは、従来から設置されていた「来館者システム」の提供を再開しつつ、新たな目玉として「東京国立近代美術館の70年」と題した年表を新設している(図4)。年表は縦書きで組まれ、右から左へと時代が下っていき、上から「年」「月日」「出来事」「資料番号」「作品図版」で構成されている。京橋での開館の経緯や建物の増改築、竹橋への移転、また、歴史的に重要な展覧会や重要文化財などの主要なコレクションの形成に関わる出来事を取り上げている。年表の左側には、色鮮やかな黄色の棒線が伸びているが、これは所蔵品数の増加を示している。その隣には過去の入館者数を表したグラフもある。「資料番号」は年表の下に設置された覗きケースや、ポスター、映像等の美術館の歴史にまつわる展示資料に対応している。なお、年表内の「資料番号」は可変的で、年数回を予定している展示替えにも対応できるつくりになっている。この年表を手掛けたのはデザイナーの木村稔将さん。複数の情報が入り混じる年表にもかかわらず、すっきりと手際よくまとめていただいた。

 開館70周年を迎えてリニューアルした情報コーナー。これまでの美術館の歴史について思いを馳せる場となれば幸いである。

図4 [年表]東京国立近代美術館の70年(デザイン:木村稔将)

  1. 『独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館年報 平成13年度』東京国立近代美術館、2002年、68頁。
  2. 独立行政法人国立美術館 所蔵作品総合目録検索システム(https://search.artmuseums.go.jp/)
  3. 東京国立近代美術館ウェブサイト「作品検索」(https://www.momat.go.jp/collection) 
  4. 水谷長志「東京国立近代美術館の情報システム―本館情報コーナーとアートライブラリーを中心に―」『情報管理』46巻3号 (2003年)、180頁。

『現代の眼』638号

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