の検索結果

の検索結果

No image

本野東一の染色:自由への旗印

展覧会概要 染色の歴史が、主に衣料との深い関わりをもって発達してきたということは 曲げようもない事実です。 しかし、工芸の領域で用をもたない造形美の追求が試みられたとき、 染色家たちの眼は、まず壁面へと向かいます。 新しい生活様式の室内に掛けられた作品は、 単なる装飾を超えて、現代の本質をも描出するようになりました。 本野東一(1916-1996)は、40年以上にわたる作家活動において、 抽象的構成と臘染の融合による創作を展開しました。 臘や染料の動きと作家の洒脱な感性の共鳴から生み出された作品の数々は、 染色の素材と技法による表現に大きな可能性を開きました。 重ねあわせても透明感を失わずに深みを増す染めの特質は、 網膜に快い刺激を引き起こし、 一見単純な構図にも妙なる味わいをもたらしています。 今展ではモダンアート展にはじめて出品した《壁面構成》から、 静かな情熱を感じさせる晩年の《対話》シリーズまでの30余点を並べ、 本野東一独自の染めの世界を回顧します。 本野東一略年譜 京都に生れる 京都高等工芸学校(現 京都工芸繊維大学)図案科卒業 島津製作所マネキン部、昭染化学工業、七彩工芸にてデザイナーとして勤務 独立、染色家としての制作をはじめる モダンアート展生活美術部に出品 モダンアート協会生活美術部会員、以後毎年出品 個展(五番館画廊/東京)二人展[本野東一/染色・藤原健嗣/立体](秋山画廊/東京) 藤川デザイン研究所(現 京都芸術短期大学)勤務 個展(紅画廊/京都) 大阪芸術大学教授 個展(Contemporary Crafts Gallery, Portland, U.S.A.) 大阪芸術大学工芸学科長個展(平安画廊/京都) 個展(ギャラリー射手座/京都)['73~'76] クラフト3人展[本野東一/染・森野泰明/陶・高木敏子/織](今橋画廊/大阪)個展(California College of Arts and Crafts, Oakland, U.S.A.) 個展(Contemporary Crafts Gallery, Portland, U.S.A.) 個展(朝日画廊/京都) 個展(不二画廊/大阪) 第34回モダンアート展作家大賞 個展(ギャラリー岡崎/京都) 「1960年代の工芸」(東京国立近代美術館工芸館) 「9人の現代作家による競演」(プロムナードギャラリー/大阪) 1980年代の15点」(大阪芸術大学大学芸術情報センター) 「清流展」(京都市美術館)[~'94] 死去 イベント情報 ギャラリートーク 1999年6月12日(土),7月10日(土)午後2時から 工芸館会場 開催概要 1999年5月21日(金)~ 7月11日(日)月曜日休館午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) 東京国立近代美術館工芸館〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1地下鉄東西線「竹橋駅」1b出口より徒歩8分地下鉄東西線・半蔵門線、都営新宿線「九段下駅」2番出口より徒歩12分 区分個人観覧団体観覧備考一般420円210円学生130円70円高校・大学生小人70円40円小・中学生 * 消費税込み* 団体観覧は20名以上* 無料観覧日:第1日曜日,第1・3水曜日,第2・4土曜日 電話03‐3272‐8600(NTTハローダイヤル)http://www.momat.go.jp/(東京国立近代美術館ホームページ)

No image

近代日本の工芸 : 常設展示

No image

鈴木治の陶芸:詩情のオブジェ

開催主旨 「工芸は用と美を兼ねる」というのが明治以来の通念ですが、一方で工芸のフィールドか ら用を持たない、いわゆるオブジェと称される作品が出現して既に半世紀近くが経ちま した。それらは、1950年代、日本とアメリカでほとんど同時に制作され始めましたが、日 本でその先駆けとなったのは「走泥社」という陶芸家グルーブでした。鈴木治はその創 立メンバーであり、以降、常にそうした革新的陶芸の中心的・指導的な役割を果たして 今日に至っています。 鈴木治は1926(大正15)年京都に生まれ、京都市立第二工業学校窯業科を卒業し、戦後、 陶芸家の道に入りました。1948(昭和23)年、八木一夫(物故)たちと「走泥社(そう でいしゃ)」を結成し、新しい陶芸制作を推進、1955(昭和30)年頃から用を持たない作 品、いわゆるオブジェ焼を発表しました。 鈴木氏の作品は、馬、牛、鳥、魚などの動物や、雲、風、太陽といった自然現象をモチー フに、信楽の土を使った焼き締め陶や、淡い色調の青白磁で表現したものに特色があり、 穏やかなフォルムの中に、鋭い感性を秘めた独特な魅力に満ちています。さらに近年は、 そうした往年の作風に、より一層おおらかさと柔和さが加わり、一段と円熟の境地に入っ ています。 本展は、そうした鈴木治の半世紀におよぶ制作の軌跡を、初期から最新作までの約137点 により紹介するものです。その幅広い作風の全体を楽しみつつ、彼の作品に象徴ざれる 戦後の陶芸の歴史と21世紀に向けての新しい造形のあり方を探ります。 主催者 主なみどころ 鈴木治と走泥社 鈴木治は、戦後間もない1948(昭和23)年7月、八木一夫、山田光 らとともに、前衛陶芸家集団「走泥社」を結成しました。走泥社は、 陶芸の革新的集団として先駆的な活動を展開し、つねに時代をリード してきましたが、昨年10月、結成50周年の走泥社展をもって解散し ました。鈴木治は、走泥社において、とくに八木一夫(1979年没) 亡きあとは、中心的・指導的役割を果たしてきました。 オブジェ 「走泥社」のメンバーは、古典や伝統にとらわれない新しい陶芸の 制作をめざして、作品を発表していきましたが、やがて、器の口 を閉ざした焼きものを作るようになっていきました。器ではない やきものは、オブジェ焼と揶揄的に呼ばれましたが、やがて、陶 芸の新しい分野として定着していきました。鈴木治がこのような オブジェ作品を作り始めるのは1955(昭和30)年頃からですが、鈴 木治の場合、オブジェを「土偶」、「泥像(でいぞう)」、 「泥象(でいしょう)」と呼んでいます。 馬 鈴木治は、馬や牛や鳥など、動物をモチーフにしたオブジェ作品 「泥象」を数多く作っています。中でも「馬」の一連の作品は、 鈴木治の代表的な作品群として高く評価されています。鈴木治の 「馬」は、埴輪を思わせる古代の原始的なフォルムに、鈴木治 特有の詩情を溶け込ませ、独特な魅力にあふれています。 はじめて≪馬≫を制作したのは1967(昭和42年)のことでした が、その後、すこしづつ形を変えながら今日まで断続的に制作 しています。 雲、太陽、風、木 馬などの動物のほかに、鈴木治は、雲、太陽、風など の自然現象をモチーフにした作品も制作しています。 これらの作品では、自然現象などの現実的なイメージ や風景を、簡潔明瞭な輪郭線で象徴的に表現していま す。また、最近では、木をモチーフにした作品も制作 しています。 器 鈴木治は、土偶、泥像、泥象などの用途を持たない オブジェ作品の制作と平行して、1950年代中頃から はクラフト運動にも関わり、実際の生活で使う器の 制作にも積極的に取り組んできました。遊び心あふ れた酒器、香炉や香合などのほか、茶碗や水指など においても鈴木治特有の魅力が感じられます。 作家略歴 (主な受賞など) 1月15日京都に生まれる 京都市立第二工業学校窯業科卒業 八木一夫、山田光らと「走泥社」を結成(以後毎年、走泥社展を 開催し出品) 非器物の作品をつくりはじめるのちに、非器物を「泥象(でいしょう)」 と名づける 1959年度日本陶磁協会賞受賞 ブラハ国際陶芸展に出品、金賞受賞(チェコスロヴァキア) ヴァロリス国際陶芸ビエンナーレ展に出品、 金賞受賞(フランス) ファエンツァ国際陶芸展に出品、貿易大臣賞受賞(イタリア) 京都市立芸術大学美術学部教授となる(1992年退宮) 日本陶芸展に出品、日本陶芸展賞受賞 1983年度日本陶磁協会金賞受賞、藤原啓記念賞受賞 1984年度毎日芸術賞受賞鈴木治陶磁展(日本経済新聞社主催/東京、大阪、岡山) 京都府文化賞功労賞受賞 鈴木治展(京都府立文化芸術会館主催) 京都市文化功労者受賞 紫綬褒章授章、京都美術文化賞受賞 鈴木冶陶展(伊勢丹美術館) 鈴木冶陶磁展-春夏秋冬(瀬津雅陶堂)第30回日本芸術大賞受賞(陶芸界で初受賞)創立50周年記念-走泥社京都展(京都市美術館)戦後前衛陶芸の旗手-走泥社展(広島県立美術館)走泥社50周年記念展をもって「走泥社」を解散 1998年度(第69回)朝日賞受賞(陶芸界で初受賞)鈴木治の陶芸展(日本経済新聞社共催、束京国立近代美術館、福島県立美術 6館、京都文化博物館、広島そごう、倉敷市立美術館) 開催概要 1999年3月19日(金)-5月9日(日) 東京国立近代美術館工芸館(北の丸公園/地下鉄東西線 竹橋駅下車1b出口) 午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)月曜日休館(ただし3月22日と5月3日は開館、 3月23日(火)と5月6日(木)は休館) 東京国立近代美術館/日本経済新聞社 区分当日割引前売団体一般1100円1000円950円800円高・大学生800円750円650円450円小・中学生350円300円250円200円 *団体は20名以上 (福島展) 1999年5月22日(土)- 6月27日(日)福島県立美術館 (京都展) 7月8日(木)- 8月8日(日)京都文化博物館 (広島展) 9月1日(水)- 9月6日(月)広島そごう (倉敷展) 9月10日(金)- 10月24日(日)倉敷市立美術館

No image

現代世界のポスター : 東京国立近代美術館所蔵品より

1990年度の「グラフィックデザインの今日」展に出品されたポスターが大量に寄贈され、当館のデザインコレクションの核ができ、デザイン部門が設立された。その後収集されたものも加え、所蔵ポスターから選んで構成した展覧会。日本、アメリカ、ポーランドなど、ポスター大国の作品が多いが、それに加えてフランス、イギリス、スイス、ドイツなど、世界各国の第一線で活躍しているグラフィックデザイナーのポスター作品を展示した。 開催概要 東京国立近代美術館フィルムセンター展示室 1996年1月9日‒2月3日(20日間) 643人(1日平均32人) 29.8×21.0cm (2つ折り、折りたたみ時) 53点 勝井三雄 亀倉雄策 サイトウ・マコト 佐藤晃一 田中一光 戸田正寿 永井一正 仲條正義 中村誠 福田繁雄 松永真 グラピュ シーモア・クワスト ヴァルデマル・シフィエジ ヘンリー・スタイナー アイヴァン・チャマイエフ ローズマリー・ティッシ アラン・フレッチャー オルガー・マティス ダン・レイジンガー ヤン・レニッツァ / 21人

No image

近代日本の工芸 : 常設展示

No image

現代の伝統陶芸

概要 伝統工芸は、我が国に伝わる優れた工芸技術を基本にすえ、 その上に立って現代的感覚を表現しようとする考え方で、 戦後の日本工芸界の一大潮流を形成しています。 昭和30年には、重要無形文化財とその保持者の認定、 いわゆる人間国宝の制度がはじまり、さらに、同年、日本工芸会が設立されました。 同会を中心として、「日本伝統工芸展」が開催され、 今年で45回目をむかえましたが、同展は、伝統工芸の素晴らしさを紹介する上でも、 また、後継者を育成する上でも大きな役割を果たしてきました。 陶芸の分野では、色絵磁器、彩釉磁器、染付、青磁、練上手、三彩、鉄釉陶器、 鉄絵、志野、瀬戸黒、備前焼、萩焼、唐津焼、 民芸陶器などが重要無形文化財に指定され、これまでに、 27名が保持者、いわゆる人間国宝に認定されています。 今回のテーマ展示では、平成10年春にトルコ共和国で開催された 「現代日本の伝統陶芸展」に出品された作品約40点により、 人間国宝に認定された陶芸家の作品を中心に、 わが国の伝統を受け継ぎ発展させた陶芸の技と美を紹介します。 開催概要 1998(平成10)年12月4日(金)~1月24日(日)<月曜休館>午前10時~午後5時(入館は、午後4時30分まで) 東京国立近代美術館工芸館東京都千代田区北の丸公園1(地下鉄東西線竹橋駅1b出口より、徒歩8分) 電話03―3272―8600(NTTハローダイヤル)東京国立近代美術館ホームページhttp://www.momat.go.jp/ 東京国立近代美術館 摘要個人団体一般420円210円高校・大学生130円70円小・中学生70円40円 * 消費税込み、( )内は、20名以上の団体料金。

No image

近代日本の工芸 : 常設展示

No image

「かたち」の領分:機能美とその転生

展覧会概要 器物はもともと水をすくったり、なにかを保存しておくための道具でしたが、 それがいつ頃からか、置物として床の間に飾られたり、蒐集されるようにもなっ てきました。この展覧会は、実用の器物が芸術品に取り立てられてきた歴史と、 その現状をご紹介します。 第1部では、「室町桃山時代の茶道具」、「バウハウスのデザイン製品」、 「昭和戦前期の工芸デザイン作品」、「民芸運動が蒐集した日常雑器」を通し て、機能から美が生まれてきた歴史を振り返ります。実用の器物が芸術品へと 昇格されるとき、その器物には既成の芸術を否定していく原初的、本能的な力 があると期待されるのが常でした。桃山時代の茶の湯が実用品を茶道具に見立 てたとき、そこに唐物といわれた中国渡来の高級品を至宝と見做す価値観への 批判が込められていたのは、よい例でしょう。 第2部では、トニー・クラッグ、 小池頌子、 小清水漸、ジュゼッペ・ペノーネ、 重松あゆみ、 沈文燮の六氏による現代造形作品によって、 機能の美が今どのように継承されているのかを探ります。現代の造形作品にあっ ては、椀や皿のように何世代にも渡って見慣れてきた器物は、あたかも石や樹 木に類する自然として見做されているようです。器物にも自然から受けるのと 同じ、飼い馴らすことのできない力が備わっていると期待されだしているので す。古木を見て人格を感じるとき「自然の擬人化」といいますが、これに対応 させて器物を自然の一部と見る目を、「人工物の擬自然化」ということができ るでしょう。 イベント情報 ギャラリートーク 午後2時から工芸館会場にて 午後2時から工芸館会場にて シンポジウム 1998年10月3日(土)午後1時から3時30分まで 本館講堂 先着約200名まで/聴講無料 「器物が芸術になるとき・・・」 現代の造形作品には、器物の形を模したものがみられます。今日の作家たちは 器物をいかなる眼で眺め、自身の作品のうちに取り込んでいるのでしょうか。 ほんらい道具であった器物に、いま、何かが託されようとしています。今回の 出品作家から数名と研究者をパネリストとして迎え、それを考えます。 開催概要 1998年10月3日(土)~ 11月23日(月)月曜日休館、ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌日は休館午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) 東京国立近代美術館工芸館〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1東西線「竹橋駅」下車徒歩8分(1b出口),東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」下車徒歩12分(出口2) 区分個人観覧団体観覧備考一般830円680円学生450円330円高校・大学生小人330円180円小・中学生 *消費税込み*団体観覧は20名以上 03‐3272‐8600(NTTハローダイヤル)

No image

近代日本工芸の巨匠展 : 常設展 : 所蔵作品による

概要 東京国立近代美術館工芸館では夏の特別企画として、所蔵作品による「近代日 本工芸の巨匠」展を開催します。この展覧会は明治時代から現代にいたるまで の、それぞれの時代に活躍した著名な工芸家を取り上げ、当館の所蔵品のなか から名品を選んで展示し、歴史的な展開を見ていただこうというものです。陶 磁器、友禅、型染、蒔絵、金工、ガラス、竹工などさまざまな分野の工芸作品 が展示されます。 巨匠の名品でたどる近代日本工芸の流れ 今回の企画趣旨は、なによりも近代工芸の歴史を巨匠とその名品によってた どることにありましたので、展示作品の選択にあたっては、あらかじめ特定 のテーマを設けたり、美術にたいする特定の考え方を下敷きにはしませんで した。 しかし、そうして選択された作品でしたが、時代順に配列してみたとき、 結果的にいくつかの傾向が時代ごとに浮かび上がってきました。それらを、 前期と後期に分けてご紹介します。 工芸館の所蔵作品はかぎられており、それによって近代工芸の多様な側面 をすべて捉えることはとてもできませんが、今回の展示によって浮き上がっ てきたいくつかの傾向が、その一端を指し示すことは間違いありません。 前期:明治から昭和20年代まで 明治時代から昭和20年代までを対象とする前期の展示作品は、明治、大正、 戦前の昭和、昭和20年代の各時期ごとに、それぞれつぎのような傾向を示し ています。 明治 ―― 技巧と装飾の時代 工芸館は明治時代の作品をわずかしか所蔵していませんが、それでもそれら を通して二つの傾向が見て取れます。ひとつは19世紀後半に世界各地で開催 された万国博覧会向けの、技巧を強調した作品であり、もうひとつは江戸の 装飾的図案を確かな職人技によって表現した作品です。前者の代表として鈴 木長吉を、後者の例として20代堆朱楊成らを挙げることができるでしょう。 大正 ―― 図案の改革,工芸運動の萌芽 大正2年から、産業工芸の振興を目的として農展(農商務省主催図案及応用作 品展覧会)が開催され、板谷波山はじめ多くの工芸家はここに出品しました。 その後次第に、帝展(文展)に工芸部門の開設を求める運動が盛り上がりを 見せます。これと平行して、楠部弥弌らの赤土社、板谷波山らの工芸済々会 など工芸家の団体が相次いで結成され、その一方で、柳宗悦、河井寛次郎、 浜田庄司らが民芸(民衆的工芸)運動を提唱しはじめました。 戦前の昭和 ―― 個性の開花 関東大震災後の復興によって東京がコンクリートのビルと、鉄橋の都市に生 まれ変わったこの時期には、フランスのアール・デコや、ドイツのバウハウ ス・デザインが取り入れられました。これを担ったのは、高村豊周、広川松 五郎、山崎覚太郎、磯矢阿伎良らです。一方で、石黒宗麿、荒川豊蔵のよう に和漢の古陶磁を再現したり、木村雨山らの伝統性を重視した制作態度が見 られるようになりました。また、富本憲吉、稲木東千里をはじめ時流から超 越して創作性を追求する作家が現れたのもこの時代です。 昭和20年代 ―― 戦後の復興と生活工芸 戦後になって工芸家がまず目を向けだしたのは、日常生活を豊かにするため の生活工芸でした。生活への貢献は工芸の基本要件であるとはいえ、戦前ま では日本の工芸をいかに西洋に紹介するか、反対に、西洋の動向をいかに受 容するかの方が主要な関心事だったのです。会派や分野の違いを超えて、黒 田辰秋、林尚月斎、野口光彦らが身近な生活を制作の基本において活動しました。 後期:昭和30年代から今日の工芸 昭和30年代以降を対象とする後期の展示作品は、おおむね4つの傾向を示して います。それらは、伝統工芸、現代工芸、クラフト、オブジェ作品です。 昭和30年代には、伝統工芸、現代工芸、クラフトが出そろいました。続く 昭和40年代から50年代後半は、これらの傾向が展開、成熟していった時期と 考えることができるでしょう。 伝統工芸 ―― 伝統的創意の模索 伝統工芸は、国宝などの有形文化財に対して、工芸技術などの無形文化財を 保存しようとする文化庁の施策に基づいて誕生しました。昭和29年から毎年 開催されてきた日本伝統工芸展への出品作を中心にして、その特色を見るこ とができます。石黒宗麿、富本憲吉、金重陶陽、加藤土師萌、12代今泉今右 衛門、松田権六、増村益城、佐々木象堂、森口華弘、鎌倉芳太郎、氷見晃堂 らが伝統工芸を支えてきました。 現代工芸 ―― 工芸における芸術表現 現代工芸は、日展の工芸部や、昭和36年にはじまる日本現代工芸展に所属す る作家たちの作風によって形成された分野でした。技巧よりも作家の個性的 表現に重きをおいた作品が求められました。楠部弥弌、安原喜明、岩田藤七、 藤田喬平、番浦省吾、大西忠夫、高橋節郎、伊砂利彦、宮田宏平、越智健三 生野祥雲斎らが活躍しています。 クラフト ―― 新しい生活様式と工芸 クラフトは、昭和31年に結成された日本デザイナークラフトマン協会(現在 は、日本クラフトデザイン協会)などによって切り開かれた分野です。木や 布など温かみのある材料にも目を向けた工業製品を生みだした、北欧デザイ ンが受容されました。平松保城、内田邦夫、青峰重倫、大西長利、淡島雅吉 らの作品が、新しい生活様式を予感させました。 「オブジェ」以降 ―― 工芸の枠組みを越えて オブジェ作品は、陶芸の分野では昭和23年に京都で結成された走泥社がリー ドしてきましたが、その後昭和40年代の後半、すなわち1970年代以降に、 既成の会派に所属しない作家たちによって継承されました。実用性の放棄、 現代美術への接近、そして素材の特性を見直そうとする特色が看取されます。 八木一夫、鈴木治、熊倉順吉、柳原睦夫、鯉江良二、益田芳徳、鈴木雅也ら が新鮮な印象を与えました。 連続講座 【近代日本美術の流れ】開催のご案内 東京国立近代美術館では夏の全館常陳に併せて連続講座「近代日本美術の流 れ」を開催致します。明治から今日までの日本の美術の展開をあとづけなが ら、時代ごとの美術動向とそれを生み出した芸術的な理念をクローズアップ することをめざすこの講座では、5回の講演会において毎回、今日的な視点 から、当館の所蔵作品を中心にとり上げ、その歴史的な意味を掘り下げつつ、 あらためて、近代日本の美術全体へのパースペクティヴを提示できれば と 思っております。 スライドで紹介される館蔵品の多くは、本館の全館陳列 「近代日本美術の名作 -人間と風景」、工芸館の「近代日本工芸の巨匠」に出品されますので、各展 示会場で実際にご鑑賞いただくことができます。 講座の概要は東近美のホームページに 掲載してます。こちらも併せてご覧ください。 講座日程 「近代化と明治の美術―技術から美術へ」 「大正期の美術―芸術と生活」 「昭和戦前期の美術―伝統と近代の葛藤」 「1950-60年代の美術―変貌する社会,変貌する芸術」 「1970年代以降の美術―同時代への視点」 時間 各回午後2時~4時 / 開場:午後1時30分 場所・定員等 東京国立近代美術館 講堂/先着200名 聴講無料 イベント情報 ギャラリートーク 8月8日(土)、9月12日(土) 開催概要 1998年7月31日(金)-9月20日(日)前期:7月31日(金)-8月30日(日)後期:9月2日(水)-9月20日(日)【前期と後期で展示替えを行います】●月曜日休館[9月1日(火)は展示替えのため臨時休館]●午前10時-午後5時まで(入館は午後4時30分まで) 東京国立近代美術館工芸館 一般 420(210)円/高校・大学生130(70)円/小・中学生70(40)円*( )内は20名以上の団体料金

No image

竹内碧外展:木工芸・わざと風雅

展覧会概要 竹内碧外(1896-1986)は、福井県に生まれ、郷里で当時、唐木 の名工と謳われていた堀田瑞松について修業しました。その後京都に移り、 京指物の技術を研鑚して、大正9年に独立して活動するようになりました。 彼の木工芸は紫檀、黒檀といった唐木材の用法に優れたわざを発揮していま すが、唐木ばかりでなく、柿、楓、欅など様々な材料を使った指物、刳物な ど自由な発想で幅広い制作を行っています。 また、碧外は唐木に限らず各種の用材やその技法に精通しており、後年に は正倉院御物の木器調査に従事して、詳細な記録を作成、復元模造を行いま した。こうした古典の徹底した研究をはじめ、名物裂、硯などについても研 究し、そうした研究の成果、さらに煎茶や漢詩などの素養を深めて、文人的 な趣味を制作に反映させるなど、広い視野に立った独特の作品を創りました。 しかし、碧外は、公募展や団体展に出品することがなかったため、これまで は余り知られていませんでした。この展覧会では、初期の制作品から晩年に いたる代表的な作品を陳列し、あわせて、自作の漢詩や拓本、愛用の印箱、 文房具飾り、木工芸の材料や組み見本などの資料も展示して、竹内碧外の高 い芸術性を示す木工芸の世界を紹介しようとするものです。 竹内碧外・作品のみどころ 行雲流水文硯箱・文台(こううんりゅうすいもんすずりばこ・ぶんだい) 1970 朽木,紅梅,黒柿,栂  京都国立近代美術館蔵 朽木と紅梅、黒柿を寄せてはぎ合わせた、指物による硯箱と牡丹杢の現れた栂の文台 とが組合わせられた作品で、風雅と意匠の洗練さにおいて優れた制作です。 黄楊浄香座(つげじょうこうざ) 1950 黄楊木,陶器  個人蔵 国内産の黄楊木を用いた、茶席を飾る線香立て。蓮の華や葉のすがたを表裏ともに きわめて写実的かつ風趣豊かに表わした、長年月をかけた彫刻の労作。 爐屏(ろびょう) 1960頃 黒柿,名物裂,古色紙  個人蔵 真黒の黒柿材を主に用いた、煎茶の炉先に飾る二枚折の屏風。片面に錦や金襴等の名物裂、片面に古色紙や墨流懐紙等がはられており両面で用いることができる。茶 家の嗜好に適うよう意識され、固有の風趣に充ちた作品。 朽木莨筺(くちきたばこばこ) 1970 朽木, 斑柿,紫檀,黄楊木,桐  個人蔵 正倉院御物の〈朽木菱形木画箱〉をもとに着想されたたばこ入れ。台付き。蓋の表 面の朽木や側面の斑柿、また紫檀や黄楊木等を用いた木画の箱で、用材への博識や 技法にきわめて卓越した制作となっており、気品に富んでいる。 イベント情報 ギャラリートーク 工芸館会場にて大坂弘道氏(木工作家・人間国宝) 工芸館会場にて諸山正則(当館主任研究官・企画展担当) 6月13日のギャラリートークは、木工作家で人間国宝の大坂弘道氏を講師とし てお迎え致します。かつて碧外より薫陶を受けた大坂氏からは、師の人となり や、唐木木工の技法、そして京指物の正統を現代に伝える風雅な作風にまつわ るお話を列品解説とともに伺いたいと思います。また、7月11日は、会場の竹 内碧外の作品を鑑賞しながら、その木工芸のわざと精神について、今展の担当 研究官が分かりやすく解説致します。当館のギャラリートークは事前のお申し込みや特別な料金は不要です。両日とも無料観覧日にもあたっておりますので、 どうぞお気軽にお集まり下さいますよう、皆様のご来場をお待ち申し上げてお ります。 開催概要 1998年5月22日(金)~ 7月20日(月)月曜日休館(但し7月20日は開館)午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) 東京国立近代美術館工芸館/西翼〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1東西線「竹橋駅」下車徒歩8分(1b出口),東西線・半蔵門線・ 都営新宿線「九段下駅」下車徒歩12分(出口2) 区分個人観覧団体観覧備考一般420円210円学生130円70円高校・大学生小人70円40円小・中学生 *消費税込み*団体観覧は20名以上 03-3272-8600(NTTハローダイヤル)東京国立近代美術館ホームページ http://www.momat.go.jp/

Page Top