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コレクションを中心とした小企画:泥とジェリー

岸田劉生 《The Earth》1915年頃 概要 絵具とは不思議なものです。それはべちゃべちゃしたねばっこいモノでありながら、同時に色となり形となって、キャンバス上に人物や風景といった図柄を作ります。絵具のべちゃべちゃが目につくとき、図柄は私たちの意識から引っ込み、逆に図柄が目立つとき、べちゃべちゃは退きます。そこで、あまりべちゃべちゃが目立たないよう表面をなめらかにならすのが、ふつう私たちの考える絵画のあり方です。では仮に、絵具のべちゃべちゃを極端に際立たせてみたら、一体どんな作品が生まれるでしょう。 人はそもそも、文化や時代の別を越えて、べちゃべちゃしたものをこねまわす喜びに惹かれます。この喜びを、多くの場合触覚を抑え、視覚に専念するよう求める「絵画」という枠の中で扱うとき、どんな可能性が開けるのでしょうか。この小企画展では、MOMATのコレクションより、岸田劉生の重要文化財《道路と土手と塀(切通之写生)》(1915年)をはじめ、31点をご紹介します。 ここが見どころ 岸田劉生といえば、大正時代を代表する洋画家。ちょっと取りつきにくい?いえいえ、そんなことはありません。今回初出品される、長女、麗子(有名な「麗子像」シリーズのモデルです)のために描いた、あまりにも風変わりなイラスト(?)を見れば、そんなイメージも吹き飛ぶはず。一緒にご紹介する短編小説「道悪」も、なんでこうなるの?という衝撃の展開です。どんな風に「風変わり」で「衝撃」なのかは、ぜひ会場で。 また今回は、作家の協力により、岡﨑乾二郎の絵画および彫刻作品も出品されます。劉生との密かなコラボレーションをどうぞお楽しみに。 展覧会構成 1. 24歳の時、「草土社」というグループを結成した大正期の画家、岸田劉生。重要文化財《切通之写生(道路と土手と塀)》(1915年)は、まさに「草」と「土」を描いた劉生の代表作です。前後に制作された素描や版画を見ると、劉生にとって特にやわらかな「土」が、人間が人間以前の状態にあることを示す、危うくも魅惑に満ちた、独特の意味を持つものであったことがわかります。 このコーナーでは、劉生にとって「土」が意味するものを、絵画作品のみならず、劉生が書いた短編小説「道悪」の一節や、長女、麗子のために描いたユーモラスな戯画とともに探ります。「道悪」では、若い画家の前にべちゃべちゃした忌わしいものが次々と立ち現れ、その制作を妨げます。しかし最後に画家は、これら「べちゃべちゃした忌わしいもの」を材料にして、その忌わしさを克服し、美しいものに作り替えることこそが、芸術家の使命であると気づくのです。 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年重要文化財 岸田劉生《自画像》1914年 岸田劉生《「天地創造」より 1.欲望》1914年 岸田劉生《壺の上に林檎が載って在る》1916年 2. 前衛グループ「具体」に属した画家、白髪一雄の作品を中心にご紹介します。白髪は1954年、天井から吊るした縄につかまり、床に置いたキャンバスの上を滑走しつつ足で描く、という方法を編み出しました。その経緯を白髪は次のように述べます。 「絵具を大量に使って、一ぺんに短時間に描くと非常にフレッシュなものができる…そして[キャンバスを]立てて描くと、絶対に絵具がたれてしまうさかいに、それは結局寝かして描かねばならない。寝かして描くと、大きい画面やとまん中の方に手が届かない。そうすると画面の中に入らなしょうがない」。 ふつうは垂直に壁にかけるキャンバスを水平に床置きしたことで、キャンバスは画家の闘技場に、絵具はその上で画家が全身を使って挑む格闘の相手になったのです。ここにはまた、岸田劉生がヴァン・ゴッホの厚塗りを通して知った描画スピードの問題が顔をのぞかせています。つまり、乾燥を待たず急いで絵具を塗り重ねると、絵具の質感、感情の表出ともに「フレッシュなものができる」、というわけです。 3. 岡﨑乾二郎と中西夏之の作品を中心にご紹介します。 岡﨑乾二郎の画面は、素早い筆の動きを思わせる、いろいろな方向性を持つタッチで埋められています。個々のタッチは色とりどりで、さまざまな透明度を持ち、どこかおいしそうなジェリーを思わせます。しかし、勢いのあるタッチは決して「激情」によって描かれたものではありません。岡﨑の作品の中には、長い熟慮と瞬時の動作、といった複数の時間の経過が孕まれているのです。 中西夏之は、1960年前後、練った砂を画面上に盛り上げる作品を制作しました。まるで左官仕事のようです。また、その上に茶のエナメル塗料で描かれた傷跡のような形には、濃淡の陰影が付けられ、本当に盛り上がっているわけではないのに立体感があるように見えます。つまり、本当に盛り上がっている砂と、陰影付けによって盛り上がっていないのにいるように見える描かれた形とが、二重に層をなしているのです。この問題意識は、見た目はかなり異なる約20年後の絵画作品にそのまま引き継がれています。 会場配布物 イベント情報 キュレーター・トーク ① 岡﨑乾二郎 (出品作家) 日程: 2014年2月21日(金)時間: 18:00-19:00 ② 蔵屋美香 (本展企画者・美術課長) 日程: 2014年3月8日(土)時間: 15:30-16:30 ③ 蔵屋美香 (本展企画者・美術課長) 日程: 2014年3月28日(金)時間: 18:00-19:00 ※いずれも参加無料(要観覧券)/申込不要 開催概要 本館 ギャラリー4 (2F) 2014年1月21日(火)~4月6日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)*入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし3月24日、31日は開館) 一般 420円(210円)大学生 130円(70円) 消費税増税に伴い、2014年4月1日(火)以降、所蔵作品展観覧料が次のとおり変更となります。一般 430円(220円)大学生 130円(70円) 高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。 それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。お得な観覧券「MOMATパスポート」でご観覧いただけます。キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 本展の観覧料で、当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご観覧いただけます 2月2日(日)、3月2日(日)、4月6日(日) (所蔵作品展「MOMATコレクション」、「泥とジェリー」展のみ) 東京国立近代美術館

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カスタムブロック調査

ブロックエディタのカスタマイズについて諸々の調査確認を行う ブロックエディタによるページ編集の実際ブロックエディタの標準機能をさらってみるカスタムブロックとは何か?カスタムブロックをどのように実現するか?カスタムブロックの実装を試行する https://github.com/info-lounge-momat/momat-web/issues/11#issuecomment-1207728089 ギャラリー ギャラリーテスト用IL池 pt1 ギャラリーテスト用IL池 pt2 見出し 引用 新宿駅は巨大な駅だ。一日に延べ三百五十万人に近い数の人々がこの駅を通過していく。ギネスブックはJR新宿駅を『世界で最も乗降客の多い駅』と公式に認定している。いくつもの路線がその構内で交わっている。主要なものだけで中央線・総武線・山手線・埼京線・湘南新宿ライン・成田エクスプレス。それらのレールはおそろしく複雑に交差し、組み合わされている。乗り場は全部で十六ある。村上春樹 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 通常の段落この下にウィジェットを挿入してみる。 カスタムブロック 通知ボックス 見出しと段落とボタンを許可。リンクは貼れる 回答その1 回答その2 回答その3 回答その3あいうえおかきくけこ テーブル1テーブル2内容1内容2 リストを追加しましたこれでどうかな? TEST

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森正洋:陶磁器デザインの革新

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夏の家

世界で注目される建築事務所スタジオ・ムンバイによる日本初の建築プロジェクト 東京国立近代美術館は2012 年に開館60 周年を迎えました。この機会に、美術館(本館)の所蔵品ギャラリー(2-4F)を大幅にリニューアルするため、7月30 日-10 月15 日の間、美術館は休館いたします。本企画「夏の家」は、休館中も多くの方々に来ていただくために、美術館の前庭に東屋を設置し、憩いの場として開放するものです。設計・施工を担当するのは、話題の建築事務所スタジオ・ムンバイ(インド)。世界で注目を集める彼らの、日本初となる建築プロジェクトです。彼らの得意とする、オーガニックな素材をつかった心地よい空間で、散歩の合間に休憩したり、夕涼みをしたり、多くの方々に気軽にお過ごしいただけます。また、多くの大工職人を抱え、自ら建設まで行うスタジオ・ムンバイの特徴を多くの方に知っていただけるよう、今回はインドから大工を招聘し、施工の様子を公開します。 What is "barakku" ? ―スタジオ・ムンバイによる「バラック」 東京国立近代美術館が開館した1952 年は戦後復興の途中であり、東京にはまだまだバラックが多く残っていました。それらは、何もかもを失い、家をつくる必要に迫られた人々が、建設の知識がないまま自分の手で工夫を重ねてつくりあげたすまいの原型であるといえます。そしてバラックには、人々が自分の過ごす場所をその都度工夫していく、未完の建物ならではの魅力があります。新築/改修、職人/素人に関わらず建物を建て、日々更新していくという建築のあり方は、スタジオ・ムンバイが建築に取り組む方法と重なります。 本来バラック(barrack)は兵舎という意味ですが、日本人がイメージするバラックは英語のshelter やhut(小屋)も含んでいます。今和次郎は、『震災バラックの回顧』(1927 年)において、この日本語の「バラック」が指すものを丁寧に調査し、示しました。そして、関東大震災後に地面から湧き出るように次々と建てられた「バラック」の数々と、田舎の農家や開墾地の家々を、同質の視点で見つめ、それら原始的な建て方の小屋に、人がすまいを自ら工作することの価値を見出したのです。この視点は、震災を経た2012 年の日本において重要な問題でもあります。 かねてよりインドの田舎の集落や移動住居を調査してきたスタジオ・ムンバイは、今のバラック調査に大きく共感しました。そこで、本プロジェクトでは、小さな建築を建てることを通して、日本語の「バラック」が持つ可能性を追求します。また、今和次郎の他、ジョン・ラスキンやバーナード・ルドルフスキー『建築家なしの建築』などにも共通する民俗的な建築の魅力を、スタジオ・ムンバイがどう思考し、実践するかが本プロジェクトのみどころのひとつです。 Process : "making" and "doing" ―考えること、つくること、使うこと スタジオ・ムンバイが設計をするときの大きな特徴は「つくりながら考える」ことです。スタジオ・ムンバイでは、大工職人が、先人から引き継いできた技術をもとにまず手を動かします。そして、つくられたモノを軸に、デザイナーと大工が一緒になってデザイン、また手を動かします。この絶え間ない往復によって、徐々に設計が進んでいくのです。「考えること」と「つくること」を同時に進めていくこの方法は、設計や施工をすることだけに対応するものではありません。終わることのない試行は、建物が竣工したのちも、その空間を使う人によって続けられるのです。 今回は、日本で施工するためにインドから大工がやってきます。また、施工風景は一般に公開されます。大工が手作業で建てる様子は、建築に馴染みがない人でも面白く見ることができるはずです。それは料理をつくったり、針仕事をしたり、家のどこかを直したり、私たちの普段の生活に身近な出来事と同じことだからです。デザインをする人と使う人が分かれてしまい、建築をつくるものだと考える人は少なくなってしまった現在、彼らの施工の様子を見ることは、「建築をつくることは日々の生活の延長線上にある」と多くの人が考えるきっかけになることでしょう。 プロフィール スタジオ・ムンバイ 1995 年、ビジョイ・ジェインがムンバイに設立した、大工職人と設計者による、設計から施工まで一括して手掛ける建築事務所。当初15 名程度だったスタッフは、現在120 名を超える。土地の材料や伝統的な技術を重んじ、手作業による施工をベースにしたオーガニックな建築作品を数多くつくる。職人や芸術家とともに独自の建材をつくり、スケッチや大きなモックアップでの検討を何度も繰り返すプロセスそのものがデザインになることが特徴。建築作品の殆どはインドに建設されているが、ヴェネチア・ビエンナーレ建築展(2010 年)への出品をはじめ、建築雑誌『El Croquis』で特集されるなど、世界で注目を集める。 カタログ情報 イベント情報 ビジョイ・ジェイン氏(スタジオ・ムンバイ代表)講演会 ビジョイ・ジェイン(スタジオ・ムンバイ代表)(講演タイトル未定、逐次通訳付) 2012年9月1日(土)14:00 - 16:00(開場13:30- )東京国立近代美術館講堂(地下1階) *要申込(応募者多数の場合は抽選)、聴講無料(130名)申込は終了いたしました。 申込方法:電子メールでお申し込みください。件名を「ビジョイ・ジェイン講演会」とし、本文に氏名、ふりがなを明記のうえ0901@momat.go.jpにお送りください。締切後受講証(抽選の場合は抽選結果および受講証)を送付します。携帯電話のメールアドレスでご応募の方は、必ず@momat.go.jpからのメールを受け取れるよう設定をお願いいたします。 締切 2012年8月20日(月) 午後12時 申込は終了いたしました。定員を上回るご応募ありがとうございました。 *応募はお一人さま1回、1通につき1名までとさせていただきます。*個人情報につきましては、講演会申込手続のみに利用させていただき、その他の目的による利用は一切行いません。 8/25更新情報:定員を上回るお申込がありましたため、Ustreamでの配信をおこないます。 9月1日(土)14:00~ (リアルタイム配信)URL:http://www.ustream.tv/channel/studiomumbai-momat *リアルタイム配信終了後も、上記URLから視聴可能。 公開は終了しました。 連続レクチャーシリーズ「青空教室」―考える、つくる、動く、また、つくる 9月1日に竣工予定の「夏の家」。完成後、夏の家を会場に、レクチャーシリーズ「青空教室」をおこないます。 「家とはなにか?」そして、「家を自分でつくること」。「夏の家」にこめられたこれらのコンセプトについて、世代を超えて、多彩な方々をお招きし、世界の事例や、歴史的な出来事、今現在の状況を取り上げながら、3回にわたり、お話しいただきます。 「考える、つくる、動く、またつくる」という流れは、スタジオ・ムンバイの建物の建て方、とりわけ今回のプロジェクトの軌跡―スタジオ・ムンバイが考え、手を動かし、つくり、それを日本に移築する―に当てはまります。そして、建てられた「夏の家」でレクチャーが開催され、さまざまなトピックについて参加するみなさんと考えることは、つくられた建築が更新されていく=また、つくる ことになるはずです。ふるってご参加ください。 いずれも会場は「夏の家」にて。聴講無料。申込不要です。 第1回|動く|牧紀男(計画家)、中谷礼仁(歴史工学家)、坂口恭平(建築家など) 9月22日(土)18:00-20:00 テーマ:「動く家、仮の家」 「夏の家」は、住まい手が自ら材料を集め、自力で建設するバラックにインスピレーションを得ています。さまざまな素材をブリコラージュすることによってつくられるバラックは、一時的な不便をしのぐ仮のすまいであるがゆえに、移動さえも可能な、軽やかな家の在り方を示しました。実際にインドから日本へ動き、期限付きの家である「夏の家」を通じて、動く家、仮の家のもつ軽やかさについて考えます。 第2回|考える|  藤森照信(建築史家)、塚本由晴(建築家) 司会:後藤治(建築史家) 9月28日(金)19:00-21:00 テーマ:「家の条件」 「家」が「家」であるのは、屋根があるから?壁で囲まれているから?インフラがあるから?これからのすまいをつくるための、家のガイドラインについて、世界の民家を参照しながら、考えていきます。 第3回|つくる|内田祥哉(建築家)、高橋てい一(「てい」は青偏に光))(建築家) 司会:戸田穣(建築史家) 9月29日(土)18:00-20:00 テーマ:「建築の造り方」 戦後以降の日本の街並みをつくったともいえる高層ビルやプレハブ住宅の草創期に着目し、工業化が進む建築の生産の背景にあった、「どのように建築を造るのか?」の試行錯誤を辿っていきます。 お月見会 小さなお月見台もある「夏の家」。秋の夜長を楽しむイベントとして、お月見会を開きます。当日は予想では弓のような月ですが、屋外投影や、BEER MOMATの特別メニューなど、お月見ならではのスペシャルコンテンツを多々ご用意しています。ぜひご参加ください。 日時:9月15日 18:00-21:00 (雨天順延) 参加無料、申込不要 スケジュール:18:00-18:30 ギャラリートーク 本プロジェクト企画者による、「夏の家」の解説をおこないます。 18:00- お月見会終了まで当館で7月まで開催していた「写真の現在4」の出品作家である中村綾緒さんによる映像を投影します。コンセプトは、「あつめたひかりをそらにかえす」です。 当日は、BEER MOMATに出店している料理家のyoyo.さんとお仲間による、お月見にちなんだスペシャルメニューも販売します。 秋の夜長にぜひご参加ください! 開催概要 東京国立近代美術館 前庭 8月26日(日)~ 2013年1月14日(月・祝) 9月1日(土)完成予定。8月26日(日)~ 31日(金)は、職人が施工している様子をご覧いただけます。リニューアル工事に伴い、敷地内に車両搬入等を行う場合があります。一時的にご迷惑をおかけする可能性がありますが、ご理解・ご協力をお願いいたします。入場無料(申込不要) 8月26日(日)~ 9月8日(土) 10:00 - 22:009月11日(火)~ 10月13日(土) 10:00 - 17:00(9月13日(木)から29日(土)までの、毎週木・金・土は21:00まで)10月16日(火)~ 2013年1月14日(月・祝) 10:00 - 17:00(金曜日は20:00まで) 8月26日(日)~ 9月8日(土):無休 9月11日(火)~ 10月13日(土):日曜日、月曜日 10月16日(火)~ 2013年1月14日(月・祝):月曜日(12月24日、2013年1月14日は開館)、年末年始(12月28日(金) ~ 2013年1月1日(火・祝)) 東京国立近代美術館 インドのスタジオ・ムンバイで、着々とプロジェクトが進む様子をブログで紹介しています 公開を終了しました。

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2012-3 所蔵作品展 MOMATコレクション 

窓展|みどころイラスト

連載企画「カタログトーク#2|「大竹伸朗展」

展覧会に伴って発行される展覧会カタログ。豊富な図版や解説、最新の研究成果を踏まえた論文、文献一覧、年譜、意匠を凝らしたデザインなどなど、単なる展覧会の記録にとどまらない貴重な資料です。このコーナーでは展覧会カタログの制作に関わった方々にこだわりのポイントや制作秘話を伺いながら、その魅力を掘り下げていきます。 出席者:小関学(デザイン)成相肇(東京国立近代美術館主任研究員)聞き手・構成:長名大地(東京国立近代美術館主任研究員)-2022年12月16日(金)東京国立近代美術館ミーティングルーム 個性的なカタログ 長名:本日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。展覧会担当の成相さん、カタログのデザインを担当された小関さん、どうぞよろしくお願いいたします。『現代の眼』の連載企画「カタログトーク」の第2回目としまして、「大竹伸朗展」のカタログについて制作秘話や、こだわりのポイントなどをお聞きできればと思っております。 成相:よろしくお願いします。ちなみに前回は何展のカタログを取り上げたのでしたっけ? 長名:「民藝の100年」展です。 成相:正反対のカタログですね(笑)。 長名:はい(笑)。今回、とても個性的な展覧会カタログになっていますので、ぜひ詳しく聞かせてください。まず、今回の展覧会ですが、「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」という7つのテーマ設定がなされています。これは、大竹さんが決めた枠組みになるのでしょうか? 成相:この7つのテーマ設定は、大竹さんの仕事を振り返った時に浮かび上がってきたキーワードを元にしていて、大竹さんを含めた展覧会チームで話し合って決めたので、誰かが主導して決めたというわけではないんです。ただ、テーマの中には「記憶」と「時間」のように、すっぱりと分けられないものもあり、それぞれ緩やかに重なっています。この7つのテーマが決まってから、テーマに合致する作品を選定していったのですが、それも展覧会チームでこの作品はこっちかな、この作品はあっちかなと話し合って決めていきました。 長名:今回の展覧会カタログは、折本7部(新聞フォーマット、B全シート、パノラマシート)、冊子1部の計8点と蛍光色の表紙1から成るという、過去にあまり前例のない形式になっていると思います。テーマが7つなので、折本7部がそれぞれ対応しているのかなと思っていたのですが、そうではないんですよね。全体を把握しやすくするために、それぞれの印刷物とテーマとの関連をまとめた表を作ってみました。今回、このような構成のカタログになることは、当初から想定されていたのでしょうか? 『大竹伸朗展』図録の構成 小関:いいえ、最初から練りに練ってこうなったというわけではなくて、最終的にたどり着いたのがこの形だったということです。 成相:計画的にはこうはならないです(苦笑)。カタログの販売価格として3000円程度を念頭にしたコストとの兼ね合いもあり、結果的にこうなったということですね。 長名:展覧会準備をされ始めた頃、成相さんから今回の展覧会カタログは、新聞紙のような形状になりそうというお話をお聞きしていました。それがまさかこんなに盛りだくさんになるとは(笑)。 小関:僕も思っていなかったです(笑)。なぜこのようなイレギュラーな形になったのかというのは、お話の肝になると思います。僕は2019年に開催された「大竹伸朗ビル景:1978-2019」(熊本市現代美術館:2019年4 月13 日~6 月16 日、水戸芸術館現代美術ギャラリー:7月13日~10月6日)のカタログ制作にも関わったのですが、その時はB4判の大型本にしました。今回の図録も、当初は大型本にしようと思っていたんです。ですが、たとえば《東京―京都スクラップ・イメージ》(1984年、203.4×1622cm、公益財団法人福武財団)のように、横幅のある作品を載せようとすると、どうしても巻き三つ折り両観音開きで綴じることになります。それ以外にも、いくつかの主要作品を同様に取り扱うとして、それで見積りを取ってみたのですが、とても実現は難しいことが早々にわかりました。 成相:観音開きは高いんですよ(苦笑)。 小関:その段階で本の形式でやることの限界が見えてしまったんです。けれど、大竹さんが「図録への挑戦」というテキストで書かれているとおり、今回の図録制作には2つの希望が掲げられていたんです。ちょっと引用しますと、1つ目に「「紙と印刷」による図録を作る以上、デジタルツールでは決して表現し得ない形でなければ意味がない」ということ、2つ目に「今回は、これまで解消されることのなかった「大きな作品図版の再現」に重きを置いた」ということ。この2つの希望を限られた予算の中で満たすには、どうすればよいのかという課題があったんです。そこで見出したのが、パノラマ形式の新聞印刷だったんです。 成相:大竹さんは作品を大きく載せて、ディテールを見せたい。でも、本のサイズだと大きさという面での限界もありました。大竹さんの希望を叶えるために知恵を絞りあっていくなか、小関さんから出てきたのが新聞印刷というアイデア。そうじゃないとこういう形式なんて、とても浮かびませんよ。 小関:パノラマ形式であれば、作品を大きく載せられると思ったんです。 長名:さらにコスト面も抑えられると、この個性的な形式はそういう背景があったのですね。最初、このカタログを手にした時、これはライブラリアンへの挑戦というのを感じました(笑)。少し話は逸れますが、実は今回のような刊行物ですと、大変なのがライブラリの登録作業なんです。昨今、書誌単位を出版物理単位とする流れもあり、それに従うと今回は8つの書誌を作成することも考えられるんです。ただ、そうなると、資料のまとまりがわかりづらくなってしまう。そこで、できるだけ1つの単位として登録したいと。テキストの奥付に「本冊子と折本7冊のセット」という記載があったこともあり、「8. テキスト+資料:Texts」を主として、残り7部の折り本を付属として登録しています。すごくマニアックかもしれませんが、東京都現代美術館の美術図書室では、出版物理単位で8つの書誌が立てられています。 小関:作る時には図書の登録のされ方まで考えもしませんでした(笑)。 「東京国立近代美術館 蔵書検索」の検索結果 「東京都現代美術館 美術図書室 蔵書検索」の検索結果 作品を見せるために 長名:カタログ制作の過程で特に重視したことはどんな点だったのでしょうか? 小関:今回に限らず、大竹さんの図録を作る上で、一貫して意識していることは、デザインを頑張らないことです。大竹さんの作品はそれ自体が素晴らしいので、変にデザイナーが要素を足さず、ある意味そっけないくらいのデザインにして、作品をそのまま見せる方がいいと、そう考えて制作にあたっています。 成相:そのために、作品の図版はすべて小関さんが切り抜いているんですよ。 長名:とんでもない数の作品が掲載されていますが……。 小関:苦労話はしたくはないんですが、新聞フォーマットは本の見開きと違って図版を角版で扱いにくいんです。そして、作品をありのままに見せるには、作品を切り抜かないといけないんですよ。さらに自然に見せるために影もつけないといけない。 長名:たっ、たしかに。目を凝らすと、すべての図版が切り抜かれていて、影がついていますね。この作業の途方もなさが伝わってきますが……。 小関:2、3点だけだったら、大変ではないんですけれど、やはり数が多いですからね。それと大竹さんの作品は輪郭の部分も重要なので。ただ、大竹さんから《モンシェリー : スクラップ小屋としての自画像》(2012 年)の巨大なスクラップブックについて、「本の中身を伝えなきゃだめだろ」って言われてしまった時、これは大変なことになってしまったと感じました。 長名:「4. モンシェリー : スクラップ小屋としての自画像」ですね。スクラップブックの全ページが載っていますが、この膨大な数の画像を切り抜いて影をつけていたとは……。 小関:お金をかければできることもありますが、時間をかけないとできないこともあるんですよね。今回の図録制作で一番準備が大変だったのは、この画像の切り抜きでした。展覧会準備に取り掛かる際、出品作品がまだ決まっていない時期でもあったのですが、絶対に展示されるだろうという作品を見越して、とにかく時間があれば切り抜きをして準備を進めていました。また、今回の展覧会は、《残景0》(2022年)などの新作を除いて、すでに他のカタログなどに載っている作品が多い。なので、今回の図録での見せ方として、過去の印刷物との違いを出すために大きく見せる必要もあり、図版には特に気を使いました。 長名:切り抜きで強敵だった作品はどれでしょうか? 小関:泣かせてくれるものばかりでしたが(苦笑)。「3. 層 Layer/Stratum, 音 Sound」に掲載されている《レディオ・ヘッド・サーファー》(1994-95年)、これは大変でしたね。 一同絶句 小関:それと双璧をなすのが、「6. スクラップブック Scrapbooks #01-#71,1977-2022」の#68《宇和島》(2014.2.14-2016.5.25)で、ここメッシュでできているんですが、この部分の切り抜きは大変でしたね。最近になればなるほど、大竹さんはこういった布を使った作品が増えていて。 一同絶句 小関:たしかに大変な作業ではあるんですが、自分が大竹さんの作品に興味があるからこそできることですよね。とはいえ作業中、何度か狂いそうになった時もありましたが(苦笑)。 長名:ご無事でよかったです。これだけの作業がなされていることは、お聞きしないと見過ごしてしまうかもしれません。 小関:やればやるほど自然に見える作業でもあるので、作品が自然に見えていれば、それが一番なんです。 印刷への挑戦 小関:「5. 自/他 Self/Other, 記憶 Memory」は大きい作品を大きく見せるために、まとめたシートでした。このシート、折り目のところに色染みが付いているんですが。 長名:これはわざとなのかと思っていました。 小関:いえいえ、実はこれは商業輪転機で印刷をする際に、どうしても上を走るローラーにインクが残ってしまって、それが紙に転写してしまうことによって生じた色染みなんです。それを避けるために図版のサイズを落とすか、濃度を落とすか、印刷所の工場長も交えて検討したんです。でも、ちょうどそのタイミングで、冒頭でもお話した大竹さんの「図録への挑戦」というテキストがあがってきまして。これを読んだら、もう逃げの方向じゃなくて、挑戦しないといけないんだなと悟ったわけです。そこで大竹さんに、色染みの写真を送って、挑戦すると、どうしてもこうしたノイズや汚れが出てしまいますが、よいでしょうかと率直にお伝えしたところ、大竹さんから構わないとお返事があったんです。 成相:通常の図録とは全然違うので、私たちも、このタイミングで印刷された状態を初めて見たんですよ。それまで自分たちで印刷して繋ぎ合わせもしていましたが、最終的にこうなるというサイズ感は実際に印刷物として出てくるまでわからなかった。 小関:途中経過で打ち出そうとしたら、A3で128枚くらいを貼り合わさなければいけなかったので。 長名:とんでもない枚数ですね(笑)。 成相:印刷を請け負ってくださった光村印刷さんの頑張りは強調しておかないといけません。 小関:新聞から冊子まで全部同じ光村印刷さんに頼めたことも大きかったですね。大竹さんへの理解もありますし、色々と先回りして考えてくださって、信頼度が高いので大変助かりました。 長名:至る所に挑戦の跡があるのですね。 小関:何より、大竹さんのファンは印刷物に対しての期待が高いので、そういう方たちの満足度をどう満たせるか、どうやったら驚かせられるだろうかと。B全シートにスクラップブック#71の原寸をやってみようかとか、でもそうなると他のスクラップブックの扱いはどうしたものかとか、色々試行錯誤しましたね。 新聞フォーマットについて 長名:新聞フォーマットの「1. 自/他 Self/Other, 記憶 Memory, 時間 Time」、「2. 時間 Time, 移行 Transposition, 夢/網膜 Dream/Retina, 層 Layer/Stratum」、「3. 層 Layer/Stratum, 音 Sound」は、展覧会の7つのテーマをまとめたものになっていますね。 小関:7つのテーマが決まって、リストが固まった段階で、図録の中でどう並べるか、どう前後をつけていくかというのを決めていかないといけない状況になるわけですが、実際、展示室の展示構成も最後の最後に決まったこともあり、作品の並び順は流動的だったんです。そこで図録と展示の並び順は、完全にリンクしなくていいということになって、とりあえず、ラフレイアウトを作っていったんです。作業としては、「6. スクラップブック Scrapbooks #01-#71,1977-2022」のように、まとまりのあるものから作っていって、最後に新聞フォーマットを整理していくという順番でした。 長名:なるほど、1~3の新聞フォーマットは最後に作られたということなんですね。 小関:はい。ただ、「音」というテーマは、直前になってリストががらっと変わることもあって。こちらも胃が痛い思いがしていました(苦笑)。「音」をどうするかが整理できないまま、たとえばパフォーマンスの写真をカラーで組んでみたりもしたのですが、それよりも、もっと展示作品を大きく載せるべきではないかなど。試行錯誤して叩き台を作って、直接大竹さんとやりとりして整えていきました。 成相:展示作品の絞り込みは本当に大変でした。選定作業は行ったり来たり。絞ったのに増えたり、なかなか最終的な形が決まらなかった。 長名:そういう状況の中で、カタログをまとめていかないといけなかったのですね。1~3には、大竹さんの書かれた言葉が和英で載っていますね。 小関:これは『新潮』編集長の矢野優さんがテーマに即した文章を選択してくださって、大竹さんの了解を得て載せているんです。テーマが軸になっているので、それに従って配置するのですが、言及されている作品が別のテーマに置かれていることもあって、どこに置くべきか、作品の近くの方がいいのではないかとか、そういう整理にすごく頭を使いました。 長名:流動的な状況もある中での作業だったのですね。「2. 時間 Time, 移行 Transposition, 夢/網膜 Dream/Retina, 層 Layer/Stratum」は「時間」に関する引用の英訳から始まっていますが。 小関:本当はセクションの切れ目で整えていけたらよかったんですが。新聞フォーマットというのは、いくらでもページ数を増やせるんです。が、16ページを超えてしまうと、丁合の都合で手折になってしまうんです。そうなるとコストが上がってしまう。なので、このスタンダードなページ数を基準にせざるを得なかったんです。 長名:ということは新聞フォーマットの3部は繋がっていると考えてもいいのですね。 小関:似たような大竹さんの新聞フォーマットというお話でいうと、過去に作ったタブロイドのケースが少しあります。たとえば、「宇和島 / 森山大道×大竹伸朗×谷岡ヤスジ」『Coyote 創刊準備号』(2004年7月)がありますね。 成相:大竹さんが谷岡さんの漫画に色を付けているんですよね。 小関:谷岡さんも宇和島出身なんですよね。あと、ベイスギャラリーの「ON PAPER 大竹伸朗展」(2005年6月6日~8月8日)の印刷物も同種のものになるかと思います。 「これは小関の集大成だから」 成相:ここまでの話でもわかると思いますが、この仕事は、小関さんにしかできなかった。ちなみに、小関さん、大竹さんとのお付き合いはいつからですか? 小関:90年代半ばの雑誌『アイデア』で特集を組んだ時でしょうかね。その頃は、宇和島に初めて行って、もうここには来ないんだろうなって思っていたんですけれど。その後、ちょうど会社をやめた後に、大竹さんの「大竹伸朗 全景 1955-2006」展(2006年10月14日〜12月24日、東京都現代美術館)が決まって、そのお手伝いに声をかけてくださったんですね。その時、僕とカメラマン、大竹さんの3人で宇和島のアトリエで作品の整理・調査・撮影というのをやっていました。それが最終的に「全景」展のカタログという、ボリュームになってしまった。登った山がこんな山だったなんて、最初から知っていたらちょっと考えてしまっていたかもしれませんが(笑)。 長名:この大仕事にも携わっていらしたんですね。これほど大部のものになるとは、誰も想像できなかったと思います。このカタログの分厚さもまた、過去に例のない規模のものですよね。 小関:当時はポジで撮っていたので、用意したポジがなくなるまで撮影をして、東京に戻って整理して、また宇和島に行ってポジがなくなるまで撮ってというのを繰り返していました。そのおかげで、どのような作品があるのかをだいたい知っていたんですよね。大竹さんはアシスタントもなしに、ご自身で作品管理されていたんです。なので、作品の貸出依頼が入ると、その作品を探すところから始まるんですが、それがとても大変で。「全景」展後から画廊が入ってくださったので、今は大分楽になりましたが、それでも初期の作品は別でして。出品するとなるとその作品を探して、図版のためにポジも探してという作業が発生していくんです。つまり、大竹さんとお仕事するということは、7割8割がこうした準備に費やされるってことなんですよね。 長名:その上で、作品画像の切り抜きと影をつけられているんですもんね。 小関:デザイナーというと、クリエイティブなことに重点を置くべきで、そういった作業は外注するものという考え方をする方もいらっしゃると思いますが、大竹さんとお仕事する場合はそこからやらないといけないんですよ。普通、デザイナーが関わる場合、タイトル用のフォントなども考えるわけですが、そういう意味では全部大竹さんがタイトル文字を描いて用意してくださるので、そこがないというのは、また普通のデザイナーの仕事と違う部分かもしれません。 長名:大竹さんとお仕事をするということの意味がよくわかりました。 小関:「全景」展の時ですが、『アイデア』で特集を組んだんですが、そこでもいろんな折り込みとか、ポストカードのようなものを入れてみるとか、さまざまな仕掛けをしたんです。ここまでやらないと大竹さんは納得されないんです。 長名:これはすごいですね。特集雑誌の限界を超えていますね。 小関:紙物でできることを徹底的にやらないと、大竹さんだけでなく、ファンの方も納得されないんですよ。ただ、時代を振り返ると、ちょっと前まで使っていた印刷用紙が廃番になっていたり、こうした凝った製本ができる会社も減ってしまっていたりで、印刷を取り巻く環境も大分変わってきてしまいましたね。5年前であれば、今回のカタログも本という形式にできたかもしれません。 成相:大竹さんが仰っていましたけれど、今回のカタログについて、「これは小関の集大成だから」と。本当にそのとおりです。 「8. テキスト+資料:Texts」について 長名:「8. テキスト+資料:Texts」についてお聞かせください。 小関:僕も大竹さんも本を読みますし、文章やデータ類は読みやすく、使い勝手のいいものにしようという話をしていました。 成相:あと、テキスト類はコピーしやすい形状でと(笑)。 小関:なので「8. テキスト+資料:Texts」は、新聞フォーマットとは分けて、冊子にまとめようというのは早い段階で決まっていました。 長名:なるほど、ちなみにその他の折本が7部になるのは決まったのはいつ頃ですか? 成相:冊子と新聞フォーマットでいくというのは決まっていたものの、最終的な冊子のページ数や、新聞フォーマットの点数が固まったのは本当にギリギリのタイミングでしたね。 小関:図録の販売価格が3000円以内というラインがあったので、想定部数から逆算される範囲でギリギリの点数にして、これ以上増やすのは無理というところまで詰めて。 長名:この内容で2700円ですもんね。 成相:大竹さんとしても、これは安いと仰っていました。 小関:ただ、こういう挑戦をし続けていると、あと何ができるかという大竹イズムが出てきてしまうんですよね。冊子体の表紙と裏表紙は銀地になっているんですが、これは成相さんにも言わずにいたことだったんです。 成相:そうなんですよ!PDFで見た時はただのモノクロだった。 小関:この冊子は表紙も本文も同じ、共紙なんです。なので、色ベタを刷って表紙感を出そうと試行錯誤して、銀ベタでいこうと。 成相:出てきてびっくりしましたよ。 長名:122–123ページの《宇和島駅》(1997年)も設置してから撮影してとなると、ギリギリのタイミングだったのではないでしょうか? 成相:そうです。それ以上に驚きなのが、124ページの《宇和島駅》の設営の絵です。これも最後に入ってきましたから。 小関:写真が載っていればいいと思っていたんですが、大竹さんから《宇和島駅》が設置された状況を残しておかないといけないんじゃないかと言われてしまって。 成相:小関さんから《宇和島駅》の隙間何センチですか?と聞かれた時には、その情報必要?って思いましたよ。 小関:124ページの図面はそういう経緯で描いたんです。 長名:色々と今回のために加わっている情報があるのですね。 小関:あと、84ページには《モンシェリー》の前に立つ大竹さんのポートレートが入っているんですが。 成相:これも出てきてびっくりしました。 小関:冊子が校了した後で、何も入らないページになることがわかって、そこで振り返ってみると、冊子の中に大竹さんのポートレートがないことに気が付いて、急遽入れることにしたんです。 長名:本当に最後の最後まで挑戦続きのカタログだったのですね。 おまけ? 長名:最後に、こちらの「蛍光紙に活版で印刷したカバーシート」で作られている表紙ですが、これも凝っていますよね。 成相:それ、おまけっぽいんですけど、実は冊子と新聞フォーマットよりもコストがかかっているんです。 長名:えっ(笑)。 小関:この紙、実はめちゃくちゃ高いんです。お店に行くと、A4サイズ1枚で200~300円ほどかかるんです。すでに紙自体の在庫が少なくなってしまっていて、この色と黄色くらいしか残っていないんです。ここに活版印刷、裏面も特色印刷なので、相当コストがかかっているんです。 長名:初めてこのカタログのセットを見た時、印象的な厚紙と思っていましたが、まさか一番コストがかかっていたとは……。 小関:あと、結果的に新聞フォーマットという選択も、開いて畳むうちに生じる使用感やダメージは大竹さんの表現と重なるものと思っています。 成相:開けば開くほど傷むわけですが、それを劣化と捉えない。つまり、育てるカタログでもあるんです。 小関:東京国立近代美術館という威厳ある場所でやるのに、あえてこういうテイストのものをぶつけるという意図もありました(笑)。こういう挑戦をすることで、新しい世代の方々に響くところがあるのではと。今回は大竹さんのお仕事の集大成ということもあり、僕としても大竹さんが思いつくことは反映したいという思いでした。これに尽きると思っています。 長名:さまざまな挑戦が随所に見られるカタログでした。ぜひ多くの方々に手に取っていただきたいですね。小関さん、成相さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。 註 蛍光紙の表紙には、東京国立近代美術館の名が入った限定版のネオングリーンと、普及版のネオンイエローの2種類がある。  『現代の眼』637号 カタログ 「大竹伸朗展」カタログ 価格:2,700円(税込み)言語:日本語、英語(一部)仕様:新聞フォーマット3冊(各16ページ)、B全シート1枚(16面)、パノラマシート3冊(各8ページ)、冊子1冊(128ページ) 内容 1 「自/他」「記憶」「時間」2 「時間」「移行」「夢/網膜」「層」3 「層」「音」4 「モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像」5 「自/他」「記憶」6 「スクラップブック #01-#71、1977-2022」7  自作本8  テキスト+資料 8  テキスト+資料 目次テキスト 大竹伸朗、四角い倍音|成相 肇大竹伸朗 音とモンタージュのキャリア|バーバラ・ロンドン大竹伸朗の「ビル景」と香港|ドリュン・チョン臨界量(クリティカルマス)|聞き手:マッシミリアーノ・ジオーニ 音 資料 ノートルダム・ホールにおける「クルバ・カポル」パフォーマンス 1980年6月19日(木)live ones! 1985 オックスフォード近代美術館 1985年6月7日JUKE/19. 活動の記録十九の春|大竹伸朗《ダブ平&ニューシャネル》活動の記録大竹伸朗「音」作品の系譜 大竹伸朗 略歴参考文献コミッション・ワーク本カタログ掲載作品に関する作家エッセイ自選リスト作品リスト

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2013-1 所蔵作品展 MOMATコレクション 

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2013-2 所蔵作品展 MOMATコレクション 

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2013-3 所蔵作品展 MOMATコレクション 

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