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新富町

《築地明石町》、《新富町》、《浜町河岸》の三部作は、清方にとって思い出深い町の風情を、ふさわしいモチーフと似つかわしい女性像によって象徴的に描いた作品です。新富町は古くから劇場をかかえた土地柄で、花街としても知られました。女性は新富町芸者。縞の着物に小紋の羽織という粋な装いです。背景には新富座。清方が生まれた年に新築なった新富座は、ガス燈、絵看板に、やぐらのない建物が特徴の近代的な劇場でした。明治期に全盛を誇った新富座も大正に入ると衰退し、関東大震災で被災して廃座となりました。清方がここに描きとどめた風情は、すでに失われて久しいものでした。 【重文指定年月日:2023(令和5)年6月27日】

築地明石町

 明石町は、明治期にはハイカラな外国人居留地でした。水色のペンキが塗られた柵は、そこに洋館があることを示しています。朝霧にかすむ帆船のマストも、画面に異国情緒を添えます。朝顔ももう終盤。秋の風に袖をかきよせる女性は、上流の夫人を思わせる夜会巻ともイギリス巻とも言われた髪型で、指には大きな金の指輪をはめています。清方にしては珍しく、イメージに合う知人の女性、江木ませ子にモデルを頼み、スケッチにのぞんだことも知られています。 【重文指定年月日:2023(令和5)年6月27日】

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ|ドキュメンタリー映画『彫る 棟方志功の世界』上映会+アフタートーク

国際的に活躍した版画家・棟方志功の芸術と日常生活に密着したドキュメンタリー映画『彫る 棟方志功の世界』(1975年、41分)。監修は美術評論家の河北倫明、製作は草壁久四郎、監督は柳川武夫。1976年ベルリン国際映画祭記録映画部門グランプリなど、国内外の映画祭で高い評価を得た棟方の記録映画を上映します。アフタートークには、棟方志功の孫であり、本展に学術協力をいただいた石井頼子氏をお招きし、研究家として、そして家族としての視点から、映画制作にまつわる秘密と棟方の知られざる一面をお話しいただきます。 2023年10月7日(土)14:00-15:30(開場は13:30) 石井頼子氏(棟方志功孫・棟方志功研究家) 東京国立近代美術館 地下1階講堂 140名(先着順) 開催当日の10:00より、1階インフォメーションカウンターにて整理券を配布します。 整理券は、定員に達し次第、配布終了となります。 整理券の配布枚数はお一人につき1枚まで、参加者ご本人が直接お受け取りください。 整理券に番号はありません。会場内は全席自由です。 参加無料(観覧券不要) イベントの撮影、録画、録音はお断りしております。 イベント参加後の展覧会への再入場は可能です。 内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。 イベントのオンライン同時配信、アーカイブ配信はありません。

コタ・バル B

所蔵品ガイド(火・木・土、定員制)

所蔵品ガイド(定員制) ギャラリーでの所蔵品ガイドは、感染症対策のため定員制で実施いたします。対話を通して当館のコレクションをお楽しみください。 ご参加にあたって: 作品とテーマは、ガイド前に1階エントランスに掲示されます。 参加希望の方には、インフォメーションカウンターにて整理券(先着順)をお渡しします。 スタッフからの「感染症対策に係るおねがい」をご理解のうえご参加ください。 会場の混雑が予想される場合、中止することがあります。 お問い合わせ 東京国立近代美術館教育普及室メール: volunteer@momat.go.jp電話:03-3214-2605(受付時間:平日10:00-17:00)

ガウディ・ウィーク

6月25日はガウディの誕生日です。本展では、6月20日から25日を「ガウディ・ウィーク」として、来場された方にポストカードをプレゼントします!ガウディ自身のことばがあしらわれた非売品のポストカードです。本展に関してSNSで投稿してくださった方には、追加でもう一枚プレゼント。さらに、ガウディの誕生日にあたる6月25日には、図録をご購入の方に展覧会ポスター(非売品)をプレゼント!みなさまのご来場をお待ちしています。 ポストカードプレゼント ガウディ・ウィーク限定のオリジナルポストカード(非売品)をプレゼントいたします。 2023年6月20日(火)~25日(日) 展覧会場にご入場の際、お1人様につき1枚お渡しいたします。 Instagram/Twitter/Facebookのいずれかで、ハッシュタグ「#ガウディ展」をつけて展覧会について投稿してください。 東京国立近代美術館1Fインフォメーションカウンターにて投稿画面をご提示ください。その場でポストカードをさらに1枚プレゼントします ※ご参加はお1人様1回でお願いします。 各日、配布枚数に限りがございます。予めご了承ください。 ポストカードは6種類ございますが、種類はお選びいただけません。 ポスタープレゼント サグラダ・ファミリア聖堂外観(2023年1月撮影)がデザインされたポスター(非売品)を図録購入者にプレゼントいたします。 2023年6月25日(日) 東京国立近代美術館内で本展公式図録をお求めいただいた方(1冊ご購入につき1枚お渡しいたします) 本展ポスター(B3サイズ、非売品)をプレゼント ポスターイメージ

所蔵品ガイド

所蔵品ガイド 当館解説ボランティア「MOMATガイドスタッフ」とともに、コレクション3点程度を対話を通して鑑賞するギャラリートーク。ガイドスタッフ・テーマ・作品は毎回変わります。その日出会った参加者との対話をお楽しみください。 開館日の毎日14時~14時50分頃※2023年5月27日(土)、9月9日(土)、9月10日(日)、臨時開館日の8月14日(月)、8月28日(月)、9月4日(月)は混雑回避のため実施しません。 どなたでも なし 3階エレベーター前(MOMATコレクション展示室内) MOMATコレクション展示室内での対話を伴うギャラリートーク 無料(要観覧券) ご参加にあたって: 作品とテーマは、当日ガイド前に1階エントランスに掲示されます。(プログラムの特性上、ガイドスタッフや作品の事前周知はしておりません。ご了承ください。) 災害や会場の混雑が予想される場合、中止することがあります。 お問い合わせ 東京国立近代美術館教育普及室メール: volunteer@momat.go.jp電話:03-3214-2605(受付時間:平日10:00-17:00)

開館70周年特集——「偉大なるマンネリズム」へ向けて

本稿は、開館70周年特集——対談「持続と更新—開館60周年リニューアルから10年」1を受けて書かれたものです。事前でも事後でも、ぜひ対談をお読みください。 それと、少しずつ変化をつけないといけない。前よりも良くなってないといけない。寅さんの場合はファンがいたから、ファンといつも力くらべみたいなところがあって。なんだこんなの前より落ちるぞと言われたらいけない。前より良くなったと常に言われ続けないといけない。しかも基本的にテイストは同じでないといけない。そういうことはとても大変なことなんだけど、それはつくり手にしか分からない。マンネリズムという批評を聞くとそんなふうに悔しい思いをしながら、お前たちにはわからないなんて一生懸命思ったものですよ。2 「小さなテーマが立てられた全12室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示」3。当館ホームページの「所蔵作品展 MOMATコレクション」を紹介するページの一節である。「日本の近現代美術の流れをたどる」は、開館初年の1952年度は23点だった所蔵作品が3,671点に増え、2,200㎡の所蔵品ギャラリーを備えた新館を竹橋にオープンさせた1969年から、2,900㎡への増改築(2002年)を経て連綿と続く、当館所蔵作品展の最大の売りである。そして前半部「小さなテーマが立てられた全12室のつながり」が、2012年の所蔵品ギャラリーのリニューアルによって付け加わった新たな特徴である[図1]。 図1 「疑うことと信じること 2」[2階12室]会場風景|「開館60周年記念 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年[第一部コレクション編]」(2012年10月16日–13年1月14日)|撮影:木奥惠三 2023年現在、所蔵作品は2012年から1,500点ほど増え14,000点に届こうとしている。2012年のリニューアル時のコンセプトや構成を基本に企画してきたこの10年で、より顕在化してきたのは「流れをたどる」ための展示スペースの不足である。展示の始まりは1907年(第1回文展の年)から1890年前後へと約20年拡がり、展示の結びは2012年→2023年と11年延びた。このスペース不足のひずみがあらわれるのはとりわけ展示終盤だ。おおまかには1980~2020年代まで40年超の流れを紹介するスペースが圧倒的に不足している。ある会期では1980年代まで、また別の会期では80~90年代を飛ばして2000年代以降の美術を紹介というように、なんとか各時代の表現の豊かさと厚みを紹介しつつ、所蔵作品展を締めくくるための試行錯誤が続いている[図2][図3]。流れが寸断されたり、ある部分が欠落したりすることを自覚しつつ、特に今現在からそう離れていない時代それぞれを丁寧に整理して紹介することは、将来、その時代の歴史を十全に描き出す上では欠かせない営みであり、そのための調査、研究、収集、展示、保管は継続しなければならない。それはより広大な展示面積を備えた新しい建物ができる時までかもしれないし、当館が扱う時代範囲、つまり近代をたとえば2000年で閉じる決断をするような時までかもしれない(あるいはスペース不足を逆手にとるようなラディカルな解決策が生まれる時が来るのかもしれないが)。 図2 「V 現代美術——1970年代以降」[2階]会場風景「所蔵作品展 近代日本の美術」(2006年5月30日–7月30日)|撮影:上野則宏 図3 「更新されるModern」[2階12室]会場風景|「所蔵作品展 MOMATコレクション」(2023年3月17日–5月14日)|撮影:大谷一郎 もう一つ触れておくべき10年間での変化は、「小さなテーマが立てられた全12室のつながり」をめぐるものだ。小さな部屋割はバラエティに富んだ多様な切り口を可能にし、たしかに強者による正史という単線的流れとは別の歴史を描き出すポテンシャルを有する。しかし一方で、各々独立した部屋の並びは、時に部屋同士の接続が見えづらく、流れを感じることが難しくなりもした。小さなテーマのシークエンスは、ただ単に隣り合わせるだけでは時代の流れを示すことへと直結はしない。主流と思われるものを分岐、複数化し、小さな物語をいくつも示すことは比較的容易である。逆に複数化したものの連なりの中に流れを捉えることはいかにして可能となるだろうか。これもまたこの10年で様々に試行錯誤してきたことである。小さく区切られた部屋の連なりという形式を、もっと使い倒さねばならない。隣り合う部屋同士のつなぎ目を何によって、どのように確保するのか。おそらくつなぎは、全12部屋を貫くような俯瞰的で統一的なものではなく、隣り合う部屋と部屋ごとに都度、異なるつなぎ目を作り出していくような方法があり得るのではないかと考えている。 また専門性や技能の面で人材が多様化し、各部屋の企画内容がより一層多彩になったことを、ここ最近の良き変化として記しておきたい。たとえば工芸館研究員の参画(「1950s–1960s 「土」のなかに「日本」はあった?/掘り起こしたあとに、何が建ったか」[2019年]4[図4]や「純粋美術と宣伝美術」[2021年]5[図5]など)、アートライブラリや美術資料の管理を専門とする研究員による企画(「プレイバック「抽象と幻想」展(1953–54)」[2022年]6[図6])、さらに同時代的な課題により鋭敏に反応する若い世代が加わり始めたことも大きい。このような企画側の多様化の一方で、今後より踏み込んで取り組むべき課題としては、受け手の多様性への対応が挙げられる。2012年の「ハイライト」コーナー[図7]の設置や2016年に始まった解説の多言語化などはこの一環だろう。しかし、たとえば解説の文章の書きぶりや絵を掛ける高さなどに端的にあらわれているように、現在の所蔵作品展は一定の美術リテラシーを有する大人をスタンダードな受け手として想定している。12部屋もあるのに、10歳の子どもを基準にした部屋が一つもないのはなぜだろう。年齢、性別、人種、経験、趣味嗜好など、多様な来館者それぞれに魅力的な経験を提供するために、考え得る方策はまだある。 図4 小特集「1950s–1960s 掘り起こしたあとに、何が建ったか」[3階8室]会場風景|「所蔵作品展 MOMATコレクション」(2019年6月4日–10月20日)|撮影:大谷一郎 図5 小特集「純粋美術と宣伝美術」[3階8室]会場風景|「所蔵作品展 MOMATコレクション」(2021年10月5日–22年2月13日)|撮影:大谷一郎 図6 小特集「プレイバック「抽象と幻想」展(1953–54)」[3階7室]会場風景|「所蔵作品展 MOMATコレクション」(2022年10月12日–23年2月5日)|撮影:大谷一郎 図7 「ハイライト」[4階1室]会場風景|「開館60周年記念 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年[第一部コレクション編]」(2012年10月16日–13年1月14日)|撮影:木奥惠三 変わらないことと新しいことを同時に期待される、企画する側にとってなかなかに難易度の高い場が当館の所蔵作品展である。ドラスティックな変化や刷新ではなく、日々、繊細な調整を隅々まで怠らずに「偉大なるマンネリズム」を追求すること。美術館をとりまく現状は厳しく、これまで以上に新しいこと、インパクトのあることが求められる現状において、この言い草は反動的に聞こえるかもしれないが、これからの10年でさらに試行錯誤する価値があるのではないかと考えている。 註 https://www.momat.go.jp/magazine/165 山田洋次「山田監督、どうして今寅さんは帰ってきたんですか。〈ほぼ全文掲載スペシャル〉」『電通報』2019年12月20日https://dentsu-ho.com/articles/7056[最終閲覧:2023年7月25日] https://www.momat.go.jp/exhibitions/r5-1https://www.momat.go.jp/exhibitions/r5-1 「所蔵作品展 MOMATコレクション」内で開催された小特集。企画は花井久穂(当時、工芸課主任研究員。現・企画課主任研究員)。https://www.momat.go.jp/exhibitions/h31-1      「所蔵作品展 MOMATコレクション」内で開催された小特集。企画は野見山桜(当時、工芸課客員研究員)。https://www.momat.go.jp/exhibitions/r2-2 「所蔵作品展 MOMATコレクション」内で開催された小特集。企画は長名大地(企画課主任研究員)。https://www.momat.go.jp/exhibitions/r3-2

ガウディ展を見て

ガウディの作品も人生も、長いこと濃い霧に包まれていた。たとえば、電車に轢かれて亡くなった時、ただの貧しい老人と思われて病院にしばらく放置されていたとか、あるいは当時のスペインではさして評価されていなかったとか。 こうした人生を包む霧は、この度の展覧会で完全に晴らされ、当時の生の資料により、町の人々からも国からも高く評価されていたばかりか、1910(明治43)年にはパリのグランパレで大きな展覧会が開かれ、工事中のサグラダ・ファミリア教会も展示されていた。ただし、理解はされなかったらしいが。 人生以上に濃い霧に包まれてきたその造形の謎については、正面から取り組まれ、 “自然界の造形”“幾何学”“オリエンタリズム”などに分けて詳しく展開されている。 私が目を開かれたのは“幾何学”に関わる展示で、ガウディが世界で初めて活用し、独創的な外観と内部空間の基本となる放物線と放物面が何をヒントに発見されたかについて、「エジプトの鳩小屋」だというのである。誰でもマサカと訝しく思うが、実際のエジプトの鳩小屋の写真や鳩小屋についての歴史的資料を並べられると、誰でも納得せざるをえないだろう。 鳩小屋デザインはまず1893(明治26)年の〈タンジール計画〉にスタートし、続いて1908(明治41)年には〈ニューヨーク大ホテル計画〉を産み落とす。かのガウディがなにゆえあってニューヨークに建つ360mもの高さのホテルと取り組んだのか。鳩小屋がその珍しい造形性を失わないまま超々高層化したのである。 工事中のサグラダ・ファミリアを見に来たアメリカ人に頼まれて—ということらしいが、スペインの大学から運ばれた鉛筆描きの平面と立面図を目の前にすると、本気だったと思わざるをえないが、謎は深まるばかり。 会場風景|右は《ニューヨーク大ホテル計画案模型》|撮影:木奥惠三 この謎のホテル計画を間に挟んで、エジプトの鳩小屋デザインは工事中のサグラダ・ファミリアに取り込まれ、ガウディ存命中に4本の尖塔として実現している。それにしても、もしあの印象深いトウモロコシのような尖塔をガウディが産み出さなければ、そして4本だけでも実現していなければ、その後のサグラダ・ファミリア人気はなかっただろう。現在までに10本近く完成し、近い将来、10数本で完成を無事迎える、と完成予定模型で初めて知った。 会場風景|左:ガウディによる「降誕の正面」の彫刻(1898-1900年) 右:外尾悦郎による「歌う天使たち」(1990-2000年に設置) |撮影:木奥惠三 展示物の中で一番いい場所を占めているのは、教会の入口上方に取り付けられている彫刻の石膏像の群れだった。大量の資料が集積していた製図室も彫刻室も模型もスペイン内戦の時の爆撃で破壊され、ほとんどの生の資料が失われた中で、唯一残った、それもバラバラになって残った資料にほかならない。穏やかな表情を見せる女性の顔は鼻と顎を欠き、手足がちぎれた女性像は天を見上げ、少年像は手足と顔が欠けている。いずれも痛ましいが、その年月を経た汚れと欠損が、これらの彫刻に心血を注いだガウディの手の痕をにじませてやまない。よくぞこうしたガウディの想いのこもった直接の資料を教会は日本まで送ってくれた。 建築展というもの根本的困難は、建築の実物が展示不可能という点にあり、この欠を補うため、図面、模型、古写真、関係史料などの二次資料を大量に集めるしかないが、よくぞ集めたと感服した。世界各地でいろんな内容のガウディ展、サグラダ・ファミリア展がこれまで開かれ、これからも開かれるにちがいないが、これだけの質と量は滅多にないだろう。 なぜ可能になったかを考えると、二人の日本人の力によるにちがいない。一人は11年も現地で研究を続けてスペインでも高い評価を得てきた本展監修者の鳥居徳敏氏、もう一人は今日まで50年近くにわたりサグラダ・ファミリアの現場で彫刻を彫り続けてきた外尾悦郎氏。二人の長年の労に対し天のガウディは微笑んでくれたのだろう。 『現代の眼』638号

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