新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》の検索結果

新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》の検索結果

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新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》 インターナショナル編

フランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエの彫刻《蟻》(1953年)を初公開します。リシエ(1902–1959)は、第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人で、近年その再評価が急速に進んでいます。オーギュスト・ロダンの助手、エミール=アントワーヌ・ブールデルに学び、古典的彫塑の手法を守った点で近代彫刻の正当な継承者と言える一方、人体と自然界・動植物のイメージを有機的に結合させた独自の作風を確立して注目を浴びますが、キャリア全盛期に病に倒れました。 前会期では、リシエの《蟻》を起点に、時代的、テーマ的に関連づけられる日本人アーティストの作品を中心に展示を構成しました。今会期は「インターナショナル編」と題し、《蟻》はそのままに、フランス、イタリア、アメリカほか当館の海外作家の作品を中心にご紹介します。人脈的なつながり、形体的なつながり、多方向にその網を張りめぐらす、リシエの彫刻の豊かな表現をお楽しみください。 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》1953年 撮影:大谷一郎 開催概要 東京国立近代美術館2Fギャラリー4 2024年4月16日(火)~8月25日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月15日、8月12日は開館)、4月30日、5月7日、7月16日、8月13日 一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 ※「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 ※「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。  5月18日(土)(国際博物館の日) 東京国立近代美術館

新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》

フランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエの彫刻《蟻》(1953年)を初公開します。リシエ(1902–59)は、第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人で、近年その再評価が急速に進んでいます。オーギュスト・ロダンの助手、エミール=アントワーヌ・ブールデルに学び、古典的彫塑の手法を守った点で近代彫刻の正当な継承者と言える一方、人体と自然界・動植物のイメージを有機的に結合させた独自の作風を確立して注目を浴びますが、キャリア全盛期に病に倒れました。リシエと同時期にブールデルに学んだ戦前の日本人彫刻家、リシエに大きな影響を受けた戦後の日本人彫刻家、第二次大戦後の荒廃と芸術との関係など「時代」からつながっていく拡がり、あるいは人間と動植物との混成(ハイブリッド)、天を仰ぐ女性、彫刻の肌と骨格など「造形」からつながっていく拡がり。多方向にその網を張りめぐらす、リシエの彫刻の豊かな表現をお楽しみください。 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》1953年 撮影:大谷一郎 開催概要 東京国立近代美術館2Fギャラリー4 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 ※「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 ※「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。  東京国立近代美術館

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

見て、比べて、話したくなる。 パリ、東京、大阪-それぞれ独自の文化を育んできた3都市の美術館のコレクションが集結。セーヌ川のほとりに建つパリ市立近代美術館、皇居にほど近い東京国立近代美術館、大阪市中心部に位置する大阪中之島美術館はいずれも、大都市の美術館として、豊かなモダンアートのコレクションを築いてきました。本展覧会は、そんな3館のコレクションから共通点のある作品でトリオを組み、構成するという、これまでにないユニークな展示を試みます。時代や流派、洋の東西を越えて、主題やモチーフ、色や形、素材、作品が生まれた背景など、自由な発想で組まれたトリオの共通点はさまざま。総勢110名の作家による、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点あまりの作品で34のトリオを組み、それをテーマやコンセプトに応じて7つの章に分けて紹介することで、20世紀初頭から現代までのモダンアートの新たな見方を提案し、その魅力を浮かびあがらせます。 萬鉄五郎《裸体美人》は7月23日(火)~8月8日(木)の期間、作品保護のため展示を一時休止し、8月9日(金)より展示を再開いたします。なお、休止期間中は萬鉄五郎《裸婦(ほお杖の人)》を展示いたします。 主な展示作品 各トリオのテーマと#(ハッシュタグ)は、3つの作品を見て、比べて、誰かと話したくなるヒントになっています。 モデルたちのパワー #お決まりのポーズ #私たちくつろいでます アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年 パリ市立近代美術館photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris 萬鉄五郎《裸体美人》1912年 重要文化財 東京国立近代美術館※展示期間:5月21日(火)~7月22日(月)・8月9日(金)~8月25日(日) アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年 大阪中之島美術館 大胆にくつろいだポーズで、思い思いに寝そべるモデルたち。西洋絵画の歴史の中で脈々と続いてきた横たわる女性像は、理想美を体現し、男性に見られる対象として、しばしば無防備な姿で描かれてきました。しかし、挑発するようにこちらを見つめるモディリアーニの裸婦、寝ころんでこちらを見おろす萬の裸体美人、そして見られることをまるで意識していないようなマティスのオダリスクには、見る者の視線を跳ね返し、彼女たちそれぞれの美を誇るようなパワーがみなぎっています。 空想の庭 #メルヘンガーデンズ #植物好き ラウル・デュフィ《家と庭》1915年 パリ市立近代美術館photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris 辻永《椿と仔山羊》1916年 東京国立近代美術館 アンドレ・ボーシャン《果物棚》1950年 大阪中之島美術館 いずれも植物が画面全体を覆っていますが、実は3人の画家たちはみな植物に深いゆかりがあります。植物園の近くに住み、動植物をモチーフにしたテキスタイルデザインを数多く手がけたデュフィ、草花を愛した父の影響でかつて植物学者を志したことのあった辻永、そして独学で画家になる前に園芸業を営んでいたボーシャン。彼らはそれぞれが好んだ草花や果物、動物をリズミカルに画面に配置しながら、自由にイマジネーションを羽ばたかせ、絵の中にしか存在しない空想の庭とでも呼ぶべき世界を作り出しています。草花で埋め尽くされた装飾的な画面は、どこか幻想的な雰囲気に包まれ、花や果物の香りが匂い立つようです。 現実と非現実のあわい #名作へのオマージュ #ヒトなのかヒトでないのか ヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2の出会い》 1946年 パリ市立近代美術館photo: Paris Musées / Musée d’Art Moderne de Paris 有元利夫《室内楽》 1980年 東京国立近代美術館 ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》 1957年 大阪中之島美術館 このトリオは、いずれも過去の絵画を参照し、画家が自らの分身のような存在を描き込むことで、現実と非現実のあわいを出現させているという点で共通しています。ブローネルは、かつてアンリ・ルソーが住んだペレル通り2番地2に引っ越したことから、ルソーの《蛇使いの女》(1907年、オルセー美術館)に、自らが生み出した、巨大な頭部と2つの身体、6本の腕を持つ「コングロメロス」を登場させています。マグリットはしばしば描いた山高帽の男の背に、ボッティチェリの《春》(1482年頃、ウフィツィ美術館)の花の女神フローラを重ねました。ピエロ・デッラ・フランチェスカら初期ルネサンスのフレスコ画に魅せられた有元の絵画は、他の多くの作品にもみられる古典的な女性が中央に鎮座し、非現実的でありながら懐かしさを漂わせています。 出品作家 カレル・アペル天野龍一有元利夫ジャン・アルプ(ハンス・アルプ)アルマン(アルマン・フェルナンデス)池田遙邨イケムラレイコ石内都出光真子サビーヌ・ヴァイスシュザンヌ・ヴァラドングザヴィエ・ヴェイヤン岡本更園岡本太郎小倉遊亀恩地孝四郎パブロ・ガルガーリョアレクサンダー・カルダーアンリ・カルティエ=ブレッソン河合新蔵川上涼花川崎亀太郎菅野聖子菊畑茂久馬岸田劉生北代省三北野恒富北脇昇草間彌生イヴ・クライン倉俣史朗パウル・クレー小泉癸巳男小出楢重古賀春江佐伯祐三佐藤雅晴 佐保山堯海汐見美枝子マルク・シャガールシャイム・スーティン菅井汲杉浦非水ヘンリー・ダーガー高梨豊辰野登恵子田中敦子サルバドール・ダリ辻永津田洋甫ジュリアン・ディスクリジョルジョ・デ・キリコレイモン・デュシャン=ヴィヨンラウル・デュフィフランソワ・デュフレーヌフェリックス・デル・マルル東郷青児東松照明百々俊二冨井大裕富山治夫ソニア・ドローネーロベール・ドローネーロベール・ドワノー中西夏之奈良美智奈良原一高ジャン=ミシェル・バスキア長谷川利行畠山直哉早川良雄原勝四郎パブロ・ピカソジャン・フォートリエ 藤島武二藤田嗣治ブラッサイコンスタンティン・ブランクーシマリア・ブランシャールヴィクトル・ブローネルアンドレ・ボーシャンウンベルト・ボッチョーニピエール・ボナールセルジュ・ポリアコフ前田藤四郎ルネ・マグリット松本竣介アンリ・マティス丸木俊(赤松俊子)アルベール・マルケ三岸好太郎アンリ・ミショー村山知義ジャン=リュック・ムレーヌジャン・メッツァンジェファウスト・メロッティアメデオ・モディリアーニ百瀬文森村泰昌安井曽太郎柳原義達モーリス・ユトリロ吉原治良萬鉄五郎ジェルメーヌ・リシエエル・リシツキーマルク・リブーフェルナン・レジェマリー・ローランサンマーク・ロスコ 美術館について パリ市立近代美術館 シャンゼリゼ通りとエッフェル塔の間に位置するパリ市立近代美術館の宮殿は、1930年代の壮麗な建築の一例。15,000点以上の作品を所蔵するパリの重要な文化施設であり、フランス最大級の近現代美術館のひとつ。 photo: Fabrice Gaboriau 東京国立近代美術館 東京の中心・皇居のお濠を前に建つ日本で最初の国立美術館。最大の特徴は、横山大観、上村松園、岸田劉生らの重要文化財を含む13,000点を超える国内最大級のコレクション。19世紀末から現代までの幅広いジャンルにわたる日本美術の名作を、海外の作品もまじえて多数所蔵。 大阪中之島美術館 2022年、大阪市中心部に開館。19世紀後半から今日に至る日本と海外の代表的な美術とデザイン作品を核としながら、地元大阪で繰り広げられた豊かな芸術活動にも目を向け、絵画、版画、写真、彫刻、立体、映像など多岐の領域にわたる6,000点超を所蔵。 カタログ 「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」展覧会図録 刊行日:2024年5月21日価格:3,000円(税込)仕様:B5変形、ソフトカバー頁数:216ページ発行:日本経済新聞社 目次 TRIO展について 「思いがけない対話」シャルロット・バラ=マビーユ(パリ市立近代美術館学芸員) 「アカデミスムと「伝統的な日本」との狭間で20世紀前半にパリに渡った日本人芸術家たちの葛藤と挑戦」横山由季子(東京国立近代美術館研究員) 「パリ、東京、大阪、それぞれの都市風景」高柳有紀子(大阪中之島美術館主任学芸員) カタログ Ⅰ 3つの都市:パリ、東京、大阪Ⅱ 近代化する都市Ⅲ 夢と無意識Ⅳ 生まれ変わる人物表現Ⅴ 人間の新しい形Ⅵ 響きあう色とフォルムⅦ 越境するアート 資料編 「パリ・東京・大阪 3館の紹介」にしうら染 年表出品作品リスト 展示風景 展示風景 撮影:木奥惠三 開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2024年5月21日(火)~8月25日(日) 月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火) 10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館の30分前まで 一般  2,200円(2,000円)大学生 1,200円(1,000円)高校生 700円(500円) ( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金(販売期間:3月25日~5月20日)。いずれも消費税込。 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》|インターナショナル編」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館の窓口では前売券の販売はございません。5月21日以降の開館日に限り当日券を販売いたします。 当日券の窓口購入は混雑が予想されるため、事前のチケット購入がおすすめです。 前売券やオンラインチケット・各種プレイガイドでのご購入方法は本展公式サイトをご確認ください。 東京国立近代美術館、大阪中之島美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京 パリ市立近代美術館、パリミュゼ SOMPOホールディングス、ダイキン工業、三井住友銀行、三井不動産、ライブアートブックス 日本航空 大阪中之島美術館 2024年9月14日(土)~12月8日(日)

MOMATサマーフェス 2024

みて、きいて、くつろいで。昼も夜も一日楽しい夏のMOMAT! 7 月から8 月にかけて、大人も子どもも、昼も夜も美術館で一日中楽しめる夏のイベント「MOMAT サマーフェス」を開催します。期間限定で金曜・土曜の夜に実施する「サマーナイトトーク」や3人のガイドスタッフが各階で行う「サマーフェス リレートーク」など、夏の時期限定のイベントを多数ご用意しました。美術館の前庭にはキッチンカーによるドリンクやフードを販売、ビールやスパークリングワインなどアルコールドリンクもお楽しみいただけます。金曜・土曜は20時まで開館し、お得な夜の割引料金で所蔵作品展「MOMATコレクション」をご観覧いただけます。みて、きいて、くつろいで。この夏はMOMAT で、いろいろな美術館の過ごし方をお楽しみください。 ©『ガハクとブラシ』fancomi/小学館 みどころ 気持ちのよい屋外で「おいしい」ひとときを。夏のキッチンカーが登場! レストラン「ラー・エ・ミクニ」によるキッチンカーが前庭に登場。ビールやスパークリングワインなどアルコールドリンクもご用意し、ドリンク、フードをテイクアウト販売します。また、企画展「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」とクラフトヴィーガンジェラート「TUTTO」がスペシャルコラボレーション。7月末まで「TRIO CAFÉ」として、コラボ限定フレーバーのジェラートを販売します。鑑賞のひとやすみに、芝生の緑が気持ちよい前庭や皇居が見渡せるテラスでお楽しみください。 【7月31日更新】ジェラートは、好評につき8月25日(日)まで販売延長いたします。 ※ 営業時間:火曜~木曜・日曜・祝日11:00-15:00 金曜・土曜11:00-15:00・17:30-20:00(ラストオーダー19:00・ドリンクのみ19:30)※「TRIO CAFÉ」は8月25日(日)まで営業(数量限定販売、無くなり次第終了) 「TRIO CAFÉ」の様子 撮影:木奥惠三 夏ならではの美術館の過ごし方を。休憩スペースのご用意  2 階テラスにドリンクやフードをお楽しみいただけるような休憩スペースを設置するほか、美術館前庭の芝生でお使いいただけるピクニックシートの貸出しなど、美術館の外でお過ごしいただける空間をご用意します。鑑賞のひとやすみや夕涼みにご利用ください。 2 階テラスに、MOMAT サマーフェス期間限定の休憩スペースを特別に設置しました。周辺の緑を眺めながらお過ごしいただけます。 撮影:藤川琢史 撮影:藤川琢史 デザイン 藤井由理藤井建築研究室 間下奈津子間下建築設計室 製作 株式会社 芸宣 夏のトークイベント サマーナイトトーク7月12日(金)、13日(土)、19日(金)、20日(土) 各日19:00-19:30 当館の教育普及担当スタッフによる、対話を交えたギャラリートーク。各回の担当者・集合場所などの詳細は、下記のイベントページにてお知らせします。  ※ 参加無料(要観覧券)、申込不要 山城知佳子 アーティスト・トーク7月21日(日)17:30-19:00 (17:00開場)  所蔵作品について作家自身が語る「アーティスト・トーク」。今回、映像作家の山城知佳子さんをお迎えし、作品について語っていただきます。公開形式での開催は13年ぶりです。 出演:山城知佳子(映像作家)、佐原しおり(当館研究員) ※ 参加無料、事前申込制(抽選・定員50名)  山城知佳子《肉屋の女》2016年 サマーフェス リレートーク@MOMATコレクション8月1日(木)~ 9日(金) 各日13:00-14:00 ガイドスタッフ3人(トリオ)によるリレー式のトークです。「MOMATコレクション」展にて、所蔵作品を4階から2階の各フロアより1点ずつご紹介します。気軽に1点からでも、続けて3点しっかりとでも、お時間に合わせてお楽しみください。 ※ 参加無料(要観覧券)、申込不要。各階エレベーター前ホール集合。 ※ 8月9日(金)は英語で実施します。   サマーフェス リレートーク イメージ MOMAT ガイドスタッフによる所蔵品ガイド開館日の毎日11:00-11:50 ガイドスタッフが選んだ所蔵作品数点を、対話を交えて鑑賞します。 ガイドスタッフ・作品は毎回変わります。作品や参加者の方々との対話をお楽しみください。 ※ 参加無料(要観覧券)、申込不要 スペシャルイベント お堀端上映会7月26日(金)、27日(土)、8月2日(金)、3日(土)、9日(金)、10日(土)、16日(金)各日18:50頃-19:50追加上映:8月23日(金)18:50頃-19:50【8月20日更新】 夏の夜だけの特別な屋外上映会。MOMATコレクションから厳選した3つの映像作品を美術館の外壁で上映します。 上映作品 ヴィト・アコンチ《センターズ》1971年 22分28秒 ゴードン・マッタ=クラーク《日の終わり》1975年 23分10秒 田中功起《一つのプロジェクト、七つの箱と行為、美術館にて》2012年 13分33秒 ※ 参加無料、申込不要 ※雨天中止 上映作品よりヴィト・アコンチ《センターズ》1971年 上映作品よりゴードン・マッタ=クラーク《日の終わり》1975年 上映作品より田中功起《一つのプロジェクト、七つの箱と行為、美術館にて》2012年 金曜・土曜は夜間開館  毎週金曜・土曜は夜20時まで開館します。夕方17時からは、お得な夜の割引料金で所蔵作品展「MOMATコレクション」をご観覧いただけます。お仕事帰りに、お休みの日に、日中にくらべゆったりと過ごせるナイトミュージアムをお楽しみください。  開催概要 MOMATサマーフェス 2024 東京国立近代美術館 2024年7月12日(金)~8月25日(日) 月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火) 10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00) いずれも入館は閉館の30分前まで キッチンカーの営業時間は曜日により異なります。火曜~木曜・日曜・祝日 11:00-15:00金曜・土曜 11:00-15:00、17:30-20:00(ラストオーダー19:00・ドリンクのみ19:30) 企画展「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」(1F 企画展ギャラリー)所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F 所蔵品ギャラリー)コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》インターナショナル編」(2F ギャラリー4)

所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.4.16–8.25)

2024年4月16日-8月25日の所蔵作品展のみどころ 山口勝弘《ヴィトリーヌ No.47(完全分析方法による風景画)》1955 年 MOMATコレクションにようこそ! 当館コレクション展の特徴をご紹介します。まずはその規模。1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展です。そして、それぞれ小さなテーマが立てられた全12室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示です。今期のみどころ紹介です。5室「パリのサロン」、9室「『20 Photographs by Eugène Atget』」、10室「東西ペア/三都の日本画」は、企画展「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」(5月21日~)に関連した展示です。また3階7、8室「プレイバック「日米抽象美術展」(1955)」は、当館黎明期の重要展覧会を再現VRなどを駆使して振り返る企画第二弾です。そのほか前会期好評だった1室「ハイライト」の鑑賞プログラムの試み、12室「作者が語る」は作品を入れ替えて継続します。 今期も盛りだくさんのMOMATコレクション、どうぞお楽しみください。 今会期に展示される重要文化財指定作品 今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。 原田直次郎《騎龍観音》1890年、護国寺蔵、寄託作品|1室 和田三造《南風》1907年|1室 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年|2室 中村彝《エロシェンコ氏の像》1920年|3室(展示期間:2024年6月16日まで) 原田直次郎《騎龍観音》1890年、護国寺蔵、寄託作品 和田三造《南風》1907年 岸田劉生 《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年 中村彝《エロシェンコ氏の像》1920年 展覧会について 4階 1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで 「眺めのよい部屋」美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。 「情報コーナー」開館70周年を記念してMOMATの歴史を振り返る年表と関連資料の展示コーナーへとリニューアルしました。年表には美術館の発展に関わる出来事のほか、コレクションの所蔵品数や入場者数の推移を表したグラフも盛り込んでいます。併せて、所蔵作品検索システムもご利用いただけます。 1室 ハイライト パウル・クレー《花ひらく木をめぐる抽象》1925年 展示風景(クレー作品への問いかけシート)撮影:大谷一郎 3000㎡に200点近くが並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。「ハイライト」では近現代美術を代表する作品を揃え、当館のコレクションの魅力をぎゅっと凝縮してご紹介しています。日本画のコーナーでは、前期(4月16日―6月16日)は加山又造の《千羽鶴》を、後期(6月18日―8月25日)は鏑木清方の《墨田河舟遊》を展示します。ガラスケースの中では、新収蔵品《渡船・雨宿芝山象嵌屏風》をはじめとする国立工芸館の名品も合わせてご覧いただけます。ケースの外には、重要文化財の原田直次郎《騎龍観音》、和田三造《南風》のほか、日本近代洋画の人気作品や日本の前衛美術に大きな影響をもたらした西洋の作家たちの作品を並べました。今回はいつもの作品解説のほかに、鑑賞のきっかけとなるような問いかけを示しました。これらの問いかけは、子どもから大人まで多くの方々が参加してきた当館の鑑賞プログラムでの実践をもとに選んでいます。MOMATコレクションと初めて出会う方も、すでに顔なじみの方も、さまざまな視点から作品をじっくり眺めて、肩の力を抜いて鑑賞をお楽しみください。 2室 1910年代―個への目覚めと多様性 関根正二《三星(さんせい)》1919年 ヨーロッパで学んだ美術家たちが相次いで帰国し、美術・文芸雑誌が次々と創刊されて、ヨーロッパの新しい美術や考えが盛んに紹介された明治時代の末、1910年頃。しかしこの時代は、海外からの刺激に共感しながらも、同時に自分自身のものの見方や考えに基づいた自己表現を追究した時代でもありました。 既成概念にとらわれず、芸術家が自己表現を追い求める自由をよしとした、高村光太郎の「人が『緑色の太陽』を画いても僕はこれを非なりと言わないつもりである」(1910年)は、そうした大正時代の個性主義の幕開けを象徴する言葉として知られています。日本画においても、伝統や様々な過去の作品のとらえ直しや研究の中から、画家個人の資質を活かした題材や表現の探究がみられます。こうして1910年代は、個への意識にうながされた多様な表現が生み出されることになりました。 3室 大戦とバブル 藤田嗣治《パリ風景》1918年 「戦争があるなんて、作り話ぢやないのかしらん」―小川未明の小説『戦争』(1918年)には、日本が戦争に参加し多くの死者が出ていることを信じたくない作者の心境と、海外で起きていることに無関心な市民の様子が描かれています。第一次世界大戦に直接関わる日本の美術作品もほとんどありません。むしろ日本は当時、軍需品の輸出によって好景気を迎え、「成金」と呼ばれる企業家が続々と登場していました。この部屋に並ぶ作品はおよそ10年のうちに作られた作品群ですが、歴史の諸相をよく伝えるでしょう。藤田嗣治が描く重く寂しいパリの風景と、同時期に外国貿易で栄えた門司港を描いた柳瀬正夢の絵はじつに対照的。大戦中に起こったロシア革命から逃れてきたニンツアは、同じ頃に新宿中村屋に身を寄せていました。村山知義、古賀春江、岡本唐貴らの作例に見るように、海外から影響を受けて日本で前衛傾向が高まるのもこの時代です。 4室 長谷川利行 東京放浪 長谷川利行《カフェ・パウリスタ》1928年 無頼、天衣無縫、放浪と飲酒のデカダンス。生き様も画風も同じく嵐のようであった長谷川利行が関西から上京してきたのは30歳を迎える1921年のこと。独学で始めた油絵は白を基調に鮮やかな色彩が走る激しい作風が特徴で、大きな画面もたった数時間で仕上げてしまう速筆が評判でした。彼のアトリエとなったのは関東大震災(1923年)後の東京の盛り場や下町です。《カフェ・パウリスタ》と《ノアノアの女》に描かれているのは当時流行の最先端であったカフェ。《タンク街道》《鉄工場の裏》《お化け煙突》はいずれも、労働者が集まっていた隅田川沿いの江東地域の風景です。ときに「肖像画の押し売り」をしながら街をうろつきまわっていた長谷川の絵は、スピードに満ちた迫力がある一方で、ナイーブで詩的な印象を覚えさせます。およそ100年前の東京を思い浮かべつつ、無造作になすりつけられたような筆が生み出す不思議な広がりをお楽しみください。 5室 パリのサロン 石井柏亭《サン・ミシェル橋》1923年 今日では美術館をはじめ作品を展示する場は多岐にわたりますが、およそ100年前の芸術家たちにとって、サロン(公募展)は重要な発表の舞台でした。フランスでは、1880年に国家主催のサロンが民営化されて以降、次々と新たなサロンが枝分かれし、20世紀に入ると、フォーヴィスムやキュビスムが生まれる土壌となります。とりわけ、サロン・デ・ザンデパンダン(1884年設立)、サロン・ドートンヌ(1903年設立)、サロン・デ・チュイルリー(1923年設立)には多くの芸術家が参加しました。こうしたサロンに出品したのはフランス人だけではありません。第一次世界大戦終結後の1920年代、世界中から芸術家たちがパリに集いました。好景気とシベリア鉄道の開通を背景に、日本からも大勢が訪れ、パリに暮らす日本人画家は一時300人を超えたと言います。彼らはこぞってパリのサロンに作品を送りました。ここでは、サロンの常連だった西洋の画家の作品とともに、サロンに挑んだ日本人画家たちの滞欧作を中心に展示します。 3階 6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで9室 写真・映像10室 日本画建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》) 6室 興亜のまぼろし 和田三造《興亜曼荼羅》1940年 第二次世界大戦下の日本は、欧米列強の支配からアジアを解放するというビジョン―和田三造の《興亜曼荼羅》に示されるような、いわゆる「大東亜共栄圏」構想を掲げ、インドネシアやフィリピン、ビルマ(現在のミャンマー)など南方に進出しました。その背景には、石油や鉄鋼などの資源や航空基地の獲得といった戦争遂行上の目的がありました。占領地域では日本語教育などの皇民化政策がとられ、現地の人々は日本の戦時体制に組み込まれていきます。画家たちは「彩管報国」(絵筆で国に報いること)の理念のもと、戦争画を描きました。軍から委嘱された画家もいれば、自ら志願して現地に赴いた画家もいます。各地の戦闘場面や風俗を描いた絵画は、観衆の領土拡大への意欲を後押しし、戦意高揚に貢献しました。描かれた人々の表情には、画家たちのどのような眼差しが込められているのでしょうか。 7室 プレイバック「日米抽象美術展」(1955)① 「日米抽象美術展」(1955)展示風景 7・8室では、国立近代美術館(東京・京橋)で開催された「日米抽象美術展」(1955年4月29日―6月12日)を振り返ります。同展はアメリカ抽象美術家協会(AAA)が「第18回アメリカ抽象美術展」(1954年3月7日―28日、ニューヨーク、リヴァーサイド美術館)を開催するに際して、同協会から長谷川三郎(1906–1957)に日本の抽象作品の出品要請がなされたことをきっかけとしています。この展示のために長谷川は日本アブストラクト・アート・クラブを設立し、この要請に応えています。「日米抽象美術展」はそのお返しとしてAAAの抽象作品を招いて行われたのでした。この時期の日本では、さまざまな国際展が開かれてもいました。国立近代美術館の1階から3階にかけて行われた展示の会場構成を手掛けたのは、当時東京大学工学部の助教授であった建築家の丹下健三でした。1階では日本の彫刻作品、2階にはアメリカ側の作品、3階には日本側の作品が展示されました。7室では、残された資料や記録のほかに、それらを元に制作した展覧会再現VRを通して当時の様子をご覧いただけます。 8室 プレイバック「日米抽象美術展」(1955)② 篠田紅紅《風》1972年 8室では、所蔵品の中から「日米抽象美術展」の出品作家による作品を展示しています。同展で実際に展示された作品は、山口勝弘《ヴィトリーヌ No.47(完全分析方法による風景画)》(1955年)と、ハンス・リヒター《色のオーケストレーション》(1923年)の2点になります。「日米抽象美術展」は、日本とアメリカの抽象美術を並べて展示するのではなく、3階と2階のフロアにそれぞれ分けて展示することで、両国の抽象美術の今を対比的に検証する構成となっていました。また、日本側の一角には井上有一(1916–1985)や上田桑鳩(1899–1968)、篠田桃紅(1913–2021)、森田子龍(1912–1998)らによる前衛書(墨象)が展示されており、書と絵画が並ぶ初めての機会でもありました。1950年代は、世界的にも日本の書への関心が高まっていただけでなく、抽象美術と前衛書が最も接近していた時期でもありました。当時の新聞や雑誌に掲載された展覧会評には、両国いずれの作品が優れているかなどの議論が交わされています。資料も併せてご覧ください。 9室 『 20 Photographs by Eugène Atget』 ウジェーヌ・アジェ《『20 Photographs by Eugène Atget』より 紳士服店》1925年 (printed 1956) ベル・エポックに華やぎ、近代化と都市改造が進むパリとその郊外で、失われるかもしれない風景や街路、労働者、商店、室内装飾、庭園等を写真で記録し続けたのがウジェーヌ・アジェでした。今回展示しているのは、アジェのガラス乾板ネガから、写真家ベレニス・アボットによってプリントされた20点組ポートフォリオ作品です。1920年代にパリでマン・レイの助手を務め、自身のスタジオも持っていたアボットは、アジェの作品から強い影響を受けた写真家のひとりです。アボットは晩年のアジェの作業場を度々訪れては写真や撮影について対話し、交流を深めました。アジェは主題と調和する、当時すでに時代遅れだった撮影機材とプリント技法で写真制作をしていましたが、アボットはその諧調を損なわず、ネガに含まれた情報を最大限引き出せるよう、暗室で試行錯誤を重ねました。画像の保存性と耐久性を高めるため銀塩印画紙に金調色したプリントには、撮影から100年、プリントから60年以上経った今なお、アジェが後世に残したかったイメージと共に、アボットが大切にした写真の本質を見て取ることが出来ます。 10室 東西ペア/三都の日本画 フランシス・ベーコン《スフィンクス−ミュリエル・ベルチャーの肖像》1979年 手前のコーナーでは、洋の東西を越えて共通点を持つ国内・海外の作品をペアでご紹介します。当館が初めて海外作家の絵画を購入したのは、開館から四半世紀後となる1977年のことでした(アルベール・グレーズ《二人の裸婦の構成》)。MOMATコレクションは19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることを柱としていますが、その流れの中に海外作品も織り込むことで、日本の近現代美術の地域性や、地域を超えた普遍性を捉えなおす機会が生まれます。それぞれのペアのつながりをぜひ探してみてください。奥のケースでは、1階で開催されるTRIO展(5月21日~)にあわせて、三都の日本画を紹介しています。三都と言っても、ここでは東京、京都、大阪の三都。出身地や居住地などでこの三つの都市と関わりの深かった日本画家の作品を選び、キャプションにそれぞれ区別できるシールを貼って示しています。描かれた主題や風俗、表現などに地域性が見いだせるか否かを考えながらご覧いただければと思います。 2階 11室 黙(らない)、認(めない) 山城知佳子《肉屋の女》2016年 山城知佳子《肉屋の女》には、沖縄の米軍基地内の「黙認耕作地」にある闇市が登場します。「黙認耕作地」とは、沖縄での地上戦後に米軍が強制接収した土地のうち、元の所有者による耕作が「黙認」された区域を指しています。無かったこと、知らなかったことにされている事実や記憶と、私たちはどのように向き合うことができるでしょうか。このコーナーでは、日本とアメリカという国家に抑圧される沖縄を起点に、暴力やジェンダーなどのテーマを扱う山城知佳子、自身が歴史や社会の中で構成されてきた「女」であることを引き受けながら、個々の生きる営みを眼差す石内都、戦後に日本国籍を失った在日韓国人として、日韓のはざまでアイデンティティを問い続ける郭徳俊の作品を紹介します。  彼らは「黙認」された人間や空間を具体化し、無闇に晒すのではなく、イメージの抑制や抽象化、異なる要素の並置といった表現手法を通じて、より開かれたかたちで、その複雑なありようを共有しようと試みています。 12室 作者が語る アーティスト・トーク第18回 辰野登恵子 作者だけが作品の意味や意義を知っているわけでは必ずしもなく、作品はいつも、私たちの解釈に開かれています。とはいうものの、やはり作者の言葉には強い説得力があります。当館では2005年から断続的にアーティスト・トークを開催し、その記録に取り組んできました。制作にまつわる考えを作者本人から聞くことができるのは、現代の美術ならではの大きな恩恵です。このほど、アートライブラリで公開していた過去のトークに英語字幕を付けて、ウェブサイトで公開いたしました(第一弾として21本を公開し、順次追加予定)。これにちなんで、菊畑茂久馬、辰野登恵子、堂本右美、中村宏の4作家のトーク映像とともに、作品を紹介します。小部屋で上映している加藤翼の映像作品には、作者インタビューのご案内を付しました。 作者が語る貴重な資料と合わせて、作品をあらためてじっくりご覧ください。また、ウェブサイトを通じて、ご家庭でもアーティストの言葉をお楽しみいただければ幸いです。 開催概要 東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4F-2F) 2024年4月16日(火)~8月25日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00) 入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月15日、8月12日は開館)、4月30日、5月7日、7月16日、8月13日 一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》インターナショナル編」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。 5月18日(土)(国際博物館の日) 東京国立近代美術館

リシエが師ブールデルから学んだもの

図1 会場風景(左から2番目が柳原義達《犬の唄》|撮影:大谷一郎 ジェルメーヌ・リシエの《蟻》が新たに収蔵された。そのお披露目として企画された本展示には館蔵品の中から、「多方向にその網を張りめぐらす」1リシエに時代やテーマにおいて関連する作品29点が陳列された。正直なところ、この展示に雑多で脈絡を欠いている印象を受けた。またリシエが師と仰ぐアントワーヌ・ブールデルのテラコッタレリーフ4点は没後の複製で、国立西洋美術館の所蔵作品を展示できれば…と思わずにいられなかった。  それでも、彼女と同時期にブールデルに学んだ金子九平次と清水多嘉示、そしてリシエをよく理解してその影響を受けた柳原義達の作品が展示されたことの意味は大きい。金子の1925年滞仏作《C嬢の像》がブロンズ、清水の1926年滞仏作《アルプス遠望》は油彩だが、これらはリシエがブールデルのもとで学んでいた頃のものと言える。  図2 会場風景(右から2番目が金子九平次《C嬢の像》)|撮影:大谷一郎 南フランスのサロン・ド・プロバンスに近いグラン出身のリシエは、1926年にモンペリエのエコール・デ・ボザールを卒業するとパリに来て、ブールデルが亡くなる29年まで彼の個人アトリエの生徒となって助手を務めた。そこでは彼女の夫となるオットー・ボーニンガー、アルベルト・ジャコメッティ、エマヌエル・オリコスト、マルコ・セルボノヴィッチ等が仕事をしていた2。また彼女はブールデルが教えるアカデミー・ドゥ・ラ・グランド・ショミエールでも学んでおり、ここで撮られた幾つかの写真にリシエが居る。1920年代のグランド・ショミエールには金子や清水のほかに佐藤朝山、保田龍門、武井直也がいて、またジャコメッティもリシエの級友の一人だが、彼らの作品が展示に含まれていなかったのは残念である。[編集部註]  グランド・ショミエールは入学試験がなく誰でも入れる「自由学校」で、出席点呼もなく、生徒たちはチケットを購入してデッサンと彫刻の授業を受けた。生徒は東欧、バルカン諸国、南北アメリカ、極東からの外国人が多数を占め、その半数以上が女性であった。ブールデルは毎週1日、木曜日か金曜日にここで教え、「「自分自身の歌を歌う」ことを[生徒たちに]学ばせた独自の教育」—生徒たちが「魂を生み出すよう産婆役を勤ママめます」—を実践した3。ブールデルは生徒に自身の様式を模倣することを求めず、それぞれの資質を尊重し、生徒の作品にほとんど手を入れることはなかったと伝えられる。ブールデルによる実習の様子、その教育をここで学んだ多くの彫刻家たちが書き残している。生徒たちの中から選ばれた者たちは、午前にグランド・ショミエールで勉強した後、午後にブールデルのアトリエで師の仕事を手伝うことができた。ブールデルのもとからは第二次大戦後に活躍する多くの重要な彫刻家そして画家が輩出した。 1927年にグランド・ショミエールで撮影されたブールデルを囲む生徒たちの写真[図3]が清水多嘉示アーカイブに残されている。手前右端が清水、リシエはその左後方の二人の女性の間から視線をカメラに向けずに顔をのぞかせる額にバンドを巻いた女性ではないかと思われる4。 図3 ブールデルを囲む生徒たち|提供:清水多嘉示アーカイブ(所蔵:八ヶ岳美術館 原村歴史民俗資料館)  ブールデルのアトリエでリシエはアダム・ミツキェヴィチの記念碑、師の最後の作品となるモンソー・レ・ミーヌの戦争記念碑に協力した。「ブールデルの仕事をどう思うか」という問いに、リシエは「ブールデルは偉大な人物で立派な教師であるが、制作については何の影響も受けていない。彼から学んだことは真実をみるということだけだ」と語っている5。彫刻における「真実」について、清水はブールデルの言葉として「自然の構成コンストラクシヨン(建築的要素)に注意を拂はなければならない。/構成は實在で肉付は常に變るものだ」「表面のコツピイをしてはいけない」と記している6。リシエは「私は何を製作する場合でも幾何学的構成を何度も試みます」「真の抽象は事物の内部にある」と述べている7。 展示には清水の《裸婦》(1967年)が出品されていたが、リシエの《蟻》(1953年)[図4]と私が対照させたいのは《みどりのリズム》(1951年)[図5]である。二人が師から得た共通するもの—《弓をひくヘラクレス》(1909年)[図6]にあるような—を誰もが感じるだろう。 図4 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》1953年東京国立近代美術館蔵|撮影:大谷一郎  図5 清水多嘉示《みどりのリズム》1951年、武蔵野美術大学美術館蔵|撮影:李政勲 図6 エミール=アントワーヌ・ブールデル《弓をひくヘラクレス》1909年国立西洋美術館蔵|撮影:(c) 上野則宏 1955年に清水はリシエを次のように評している。「彼女はフランス彫刻界の特異な存在である。何れかといふと具象形體に属する作品だが、非常に嚴しいアンテリュールつまり内部構造の追求を、彼女の作品は提示してゐる」「プロセスに於けるアンテリュール追求の度合だけがその作品の價値となつてゐる様に見える」8。 その実例として、私はリシエの《オラージュ》(1947–48年)を示そう[図7]。この作品が本展に出品された柳原義達の《犬の唄》に与えた影響は述べるまでもあるまい。 註 「『新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》』 展覧会について」、東京国立近代美術館ウェブサイト https://www.momat.go.jp/exhibitions/r5-3-g4[2024年2月14日閲覧]  『Germaine Richier』(仏語版Centre Pompidou, 英語版Thames & Hudson, 2023, p.263)の年譜には、リシエがブールデルのアトリエに入ることを斡旋したのはウジェーヌ・ルディエ(アレクシス・ルディエ鋳造所の当主)であり、ブールデルは自分のアトリエに生徒をもはや受け入れていなかったと記されている。 グランド・ショミエールでのブールデルによる授業についてはアメリ・シミエ Amélie Simier(当時:パリ、ブールデル美術館館長、現在:パリ、ロダン美術館館長)「「教育の全ての型を破壊しなければなりません」 ブールデルの学校で。—ブールデルは生徒たちにどのような教育を行ったのか?」を参照。『国際カンファレンス記録集 東アジアにおけるブールデル・インパクト』(武蔵野美術大学彫刻学科研究室、2021年)に収録。 『Germaine Richier』p.263にもブールデル美術館が所蔵する同じ写真が掲載されており、リシエが含まれているとの解説がある。同書では撮影時期が1928年とされているが、清水多嘉示アーカイブに残る写真の裏には清水の直筆で「1927年」と記されている。 引用は主旨。矢内原伊作「ジェルメーヌ・リシエの世界」『みづゑ』632、1958年3月号、p.20 清水多嘉示「ブルデルの思ひ出 Emile Antoine Bourdell 1861–1929」『新美術』14、1942年9月号、p.7 矢内原伊作、前掲書p.19 清水多嘉示「素朴な彫刻家たち」『芸術新潮』第6巻、1955年5月号、p.169 編集部註 前会期から作品を大幅に入れ替えた「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》 インターナショナル編」(4月16日–8月25日)では佐藤玄々(朝山)、保田竜門、武井直也らの作品も展示されている。 『現代の眼』639号

中平卓馬 火―氾濫

日本の写真を変えた、伝説的写真家 約20年ぶりの大回顧展 日本の戦後写真における転換期となった1960 年代末から70 年代半ばにかけて、実作と理論の両面において大きな足跡を記した写真家である中平卓馬(1938-2015)。その存在は森山大道や篠山紀信ら同時代の写真家を大いに刺激し、またホンマタカシら後続の世代にも多大な影響を与えてきました。1960 年代末『PROVOKE』誌などに発表した「アレ・ブレ・ボケ」の強烈なイメージや、1973 年の評論集『なぜ、植物図鑑か』での自己批判と方向転換の宣言、そして1977 年の昏倒・記憶喪失とそこからの再起など、中平のキャリアは劇的なエピソードによって彩られています。しかしそれらは中平の存在感を際立たせる一方で、中平像を固定し、その仕事の詳細を見えにくくするものでもありました。 本展では、あらためて中平の仕事をていねいにたどり、その展開を再検証するとともに、特に、1975 年頃から試みられ、1977 年に病で中断を余儀なくされることとなった模索の時期の仕事に焦点を当て、再起後の仕事の位置づけについてもあらためて検討します。 2015 年に中平が死去して以降も、その仕事への関心は国内外で高まり続けてきました。本展は、初期から晩年まで約400 点の作品・資料から、今日もなお看過できない問いを投げかける、中平の写真をめぐる思考と実践の軌跡をたどる待望の展覧会です。  見どころ これまで未公開の作品を多数展示   近年その存在が確認された《街路あるいはテロルの痕跡》の1977 年のヴィンテージ・プリントを初展示。昏倒によって中平のキャリアが中断する前の、最後のまとまった作品発表となった雑誌掲載作13 点です。2021 年に東京国立近代美術館が本作を収蔵して以来、今回が初めての展示となります。また1976 年にマルセイユで発表されて以来、展示されることのなかった《デカラージュ》など、未公開の作品を多数展示します。  カラー写真の重要作を一挙に展示  1974 年に東京国立近代美術館で開催した「15 人の写真家」展の出品作《氾濫》をちょうど半世紀ぶりに同じ会場で再展示します。カラー写真48 点組で構成される幅約6 メートルの大作で、中平のキャリア転換期における重要作です。 また、中平存命中最後の重要な個展「キリカエ」(2011 年)に展示されたカラーの大判プリント64 点を展示します。  雑誌から読み解く中平の試み 『アサヒグラフ』や『朝日ジャーナル』など、キャリア前半の1960 年代から1970 年代前半にかけて発表された作品の掲載誌を多数展示。当時、雑誌は社会にイメージを流通させる手段として重要な役割を担っていました。写真がどのように流通するかについて常に意識的だった中平が、同時代の社会に対して、写真を用いて何を試みようとしていたのか、その実態を紹介します。  展覧会構成・主な展示作品  本展は初期から晩年にいたる中平卓馬の仕事を、5つの章でたどります。とくに2~4章では、1977 年に不慮の昏倒と記憶喪失により中断した中平の仕事が、どこへ向かおうとしていたのか、そこにいたる70 年代の展開を詳しくひもときます。  第1章 来たるべき言葉のために  第2章 風景・都市・サーキュレーション 第3章 植物図鑑・氾濫 第4章 島々・街路  第5章 写真原点 中平卓馬プロフィール 1938年東京生まれ。1963年東京外国語大学スペイン科卒業、月刊誌『現代の眼』編集部に勤務。誌面の企画を通じて写真に関心を持ち、1965年に同誌を離れ写真家、批評家として活動を始める。 1966年には森山大道と共同事務所を開設、1968年に多木浩二、高梨豊、岡田隆彦を同人として季刊誌『PROVOKE』を創刊(森山は2号より参加、3号で終刊)。「アレ・ブレ・ボケ」と評された、既成の写真美学を否定する過激な写真表現が注目され、精力的に展開された執筆活動とともに、実作と理論の両面において当時の写真界に特異な存在感を示した。1973年に上梓した評論集『なぜ、植物図鑑か』では、一転してそれまでの姿勢を自ら批判、「植物図鑑」というキーワードをかかげて、「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指すことを宣言。翌年、東京国立近代美術館で開催された「15人の写真家」展には48点のカラー写真からなる大作《氾濫》を発表するなど、新たな方向性を模索する。そのさなか、1977 年に急性アルコール中毒で倒れ、記憶の一部を失い活動を中断。療養の後、写真家として再起し、『新たなる凝視』(1983)、『Adieu à X』(1989)などの写真集を刊行。2010年代始めまで活動を続けた。2015年逝去。 1973年、自己批判を機に、それまでのプリントやネガの大半を焼却したとされていたが、2000 年代初頭、残されていたネガが発見され、それをきっかけとして2003年には横浜美術館で大規模な個展「中平卓馬:原点復帰-横浜」が開催された。 展示風景 第1章 来たるべき言葉のために  第1章 来たるべき言葉のために  第2章 風景・都市・サーキュレーション 第2章 風景・都市・サーキュレーション 第2章 風景・都市・サーキュレーション 第3章 植物図鑑・氾濫 第3章 植物図鑑・氾濫 第3章 植物図鑑・氾濫 第4章 島々・街路  第4章 島々・街路  第4章 島々・街路  第4章 島々・街路  第5章 写真原点 「中平卓馬 火―氾濫」展示風景 撮影:木奥惠三 カタログ 「中平卓馬 火―氾濫」展覧会公式カタログ 刊行日:2024年3月30日(土)価格:3,500円(税込)仕様:A4変形、ソフトカバー頁数:496ページ発行:ライブアートブックス(大伸社グループ) 目次 増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)序論「根底的に、過激に、——中平卓馬の活動の軌跡をたどるために」 第1章 来るべき言葉のためにコラム1 東松照明と多木浩二コラム2 反復するイメージ 第2章 風景・都市・サーキュレーションコラム3 「風景論」と『映画批評』コラム4 中平卓馬と美術 第3章 植物図鑑・氾濫コラム5 中平卓馬と『朝日ジャーナル』コラム6 1973年、知覚異常の経験 第4章 島々・街路コラム7 中平卓馬による写真家論 第5章 写真原点コラム8 人物写真の変化について 第6章 展示会場風景 第7章 テキストマシュー・S・ウィトコフスキー(シカゴ美術館写真・メディア部門リチャード&エレン・サンダー・チェア兼キュレーターおよび同館戦略的アート・イニシアティブ担当ヴァイス・プレジデント )「中平のサーキュレーション」 八角聡仁(批評家)「写真あるいは時の陥没——中平卓馬《デカラージュ(Décalage)》をめぐって」 倉石信乃(明治大学教授、写真史)「中平卓馬『記録日記 一九七八年』について」 第8章 資料篇年譜著作文献一覧関連文献一覧展示作品一覧 開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2024年2月6日(火)~ 4月7日(日) 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館30分前まで 一般  1,500円(1,300円) 大学生 1,000円(800円)  ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。  高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。  キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。  本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。  観覧券は美術館窓口(当日券のみ)と公式チケットサイト(e-tix)で販売いたします。 東京国立近代美術館、朝日新聞社 公益社団法人日本写真家協会

所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.1.23–4.7)

2024年1月23日-4月7日の所蔵作品展のみどころ 芹沢銈介《1972年のカレンダー(1月)》1971年 国立工芸館蔵、金子量重コレクション MOMATコレクションにようこそ! 当館コレクション展の特徴をご紹介します。まずはその規模。1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展です。そして、それぞれ小さなテーマが立てられた全12室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示です。 今期の見どころの紹介です。9室「高梨豊『町』」、11室「あるがままのもの」は、企画展「中平卓馬 火―氾濫」(2月6日~)に関連した展示です。また10室では、国立工芸館が所蔵する染色家・芹沢銈介の代表作を存分にご覧いただけます。さらに1室「ハイライト」では鑑賞プログラムの実践の蓄積、12室「作者が語る」では、アーティスト・トークのアーカイヴを活用した企画も試みています。 企画展との連動、美術館活動の蓄積の成果など、いずれも当館コレクションの厚みのなせる業と自負しています。どうぞお楽しみください。 今会期に展示される重要文化財指定作品 今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。 川合玉堂《行く春》1916年|1室 原田直次郎《騎龍観音》1890年、護国寺蔵、寄託作品|1室 和田三造《南風》1907年|1室 萬鉄五郎《裸体美人》1912年|2室 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年|3室 川合玉堂《行く春》1916年(左隻) 原田直次郎《騎龍観音》寄託作品、1890年 和田三造《南風》1907年 萬鉄五郎《裸体美人》1912年 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年 展覧会について 4階 1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで 「眺めのよい部屋」美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。 「情報コーナー」開館70周年を記念してMOMATの歴史を振り返る年表と関連資料の展示コーナーへとリニューアルしました。年表には美術館の発展に関わる出来事のほか、コレクションの所蔵品数や入場者数の推移を表したグラフも盛り込んでいます。併せて、所蔵作品検索システムのご利用も再開します。 1室 ハイライト 川合玉堂《行く春》1916年、重要文化財(左隻) 3,000㎡に200点近くが並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。「ハイライト」では近現代美術を代表する作品を揃え、当館のコレクションの魅力をぎゅっと凝縮してご紹介しています。日本画のコーナーでは、春を待つこの季節にふさわしい名品を、ケースの外には日本近代洋画の人気作や日本の前衛美術に大きな影響をもたらした西洋の作家たちの作品を並べました。ここには、桜の花びらが渓流に舞い散る情景を描いた川合玉堂の《行く春》など、重要文化財3点も含まれます。今回はいつもの作品解説のほかに、鑑賞のきっかけとなるような問いかけを示しました。これらの問いかけは、子どもから大人まで多くの方々が参加してきた当館の鑑賞プログラムでの実践をもとに選んでいます。MOMATコレクションと初めて出会う方も、すでに顔なじみの方も、さまざまな視点から作品をじっくり眺めて、肩の力を抜いて鑑賞をお楽しみください。 2室 「新か?旧か?」(前期展示:2024年1月23日~2月25日) 萬鉄五郎《裸体美人》1912年、重要文化財 何であれ、ものごとの最初を特定するのは難しい。MOMATの真ん中のMはモダン、つまり近代です。近代美術の始まりとは、いつなのでしょうか? ここに並ぶ作品の約半分は、1907(明治40)年に始まった官設の「文部省美術展覧会(文展)」に出品されたものです。この文展開設を日本の近代美術の始まりとする考え方があります(異論もあります)。そして近代とは「常に前衛であれ」ということをモットーとする時代です。つまり直近の過去は否定し、乗り越えるべき旧いものになります。設立当初は歓迎された文展ですが、まもなくすると硬直したアカデミズムの牙城として、新しい世代の批判対象になります。残り半分の作品は、そんな文展の在り方とは異なる道を進もうとした作家によるものです。これらの作品が制作されてから100年ほど経った現在の私たちには、やはり新しいものが旧いものより素晴らしく映るのでしょうか?それとも、新しいものにはない素晴らしさを、旧いものに見出すのでしょうか? 2室 春まつり(後期展示:2024年2月27日~4月7日) 菊池芳文《小雨ふる吉野》1914年(左隻)展示期間:2024年2月27日-4月7日 いつもならこの部屋では、日本近代美術の流れを紹介する最初の部屋として、おもに1900年代から1910年代の作品を紹介しています。しかし今期は制作年代の縛りをなくして、毎年恒例の「春まつり」をこの部屋でおこなうこととなりました。ここに並んでいる花木を描いた6点と、第1室で紹介している川合玉堂《行く春》、加山又造《春秋波濤》の2点をあわせた全8点で、この春もお花見をお楽しみください。大画面に描かれた菊池芳文《小雨ふる吉野》や日高理恵子《樹を見上げてⅦ》を、清家清の移動式畳に腰かけてご覧になると、地面に腰をおろして花を愛でる、日本式のお花見気分を味わっていただけることでしょう。辻永《椿と仔山羊》と、斎藤豊作《すもも》《白い花の樹》は、日本の洋画家が花木を描いた(当館コレクションのなかでは)珍しい作品です。洋画家に花木を描いた作品が少ないのは、静物としての花瓶の花と違って、花木が洋画家の敬遠した装飾となじみやすいせいでしょうか。3点とも「春まつり」には初登場です。 3室 麗子、生誕110年 岸田劉生《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年 岸田麗子は、1914年に画家・岸田劉生と妻・蓁(しげる)の長女として生まれました。劉生による肖像画「麗子像」によって、日本近代美術史上にその名を刻む人物です。麗子が7歳の時に描かれた《麗子微笑》(東京国立博物館蔵)は、重要文化財にも指定されています。麗子はモデルとしてポーズをとるだけでなく、劉生に教わりながら自らも絵を描くようになります。娘であり、モデルであり、そして教え子でもある麗子は、劉生にとって特別な存在でした。劉生は麗子が15歳の時に早逝しますが、その後も麗子は亡き父の教えを心に留めながら、絵画の制作を続けました。この部屋では、当館が所蔵する「麗子像」を一挙に公開するとともに、劉生の長男・鶴之助氏から遺贈を受けた岸田劉生の資料群をご紹介します。写真や日記、はがきなどのプライベートな断片からは、麗子が成長する姿や、劉生と麗子の親密な関係性が浮かび上がってきます。 4室 近代の役者絵 平櫛田中《鏡獅子試作頭》1938年撮影:大谷一郎 1920年代前半、劉生は歌舞伎鑑賞のために鵠沼(現:神奈川県藤沢市)から汽車に乗って東京の劇場へと足しげく通いました。その傾倒ぶりは、当時の日記や手帖スケッチ、アルバムからもよく伝わってきます。4室では、そんな劉生と同じ近代を生きた役者たちを描いた新版画の作家、山村豊成(耕花)と名取春仙の作品をご紹介します。西洋絵画や演劇写真の影響を受けて、浮世絵由来の役者絵においても写実的な表現が志向されていくなか、誇張を残して役者の心理を巧みに表した豊成と、役者の容貌を素直に美しく描き出した春仙との個性の違いをお楽しみください。この部屋唯一の彫刻である平櫛田中の《鏡獅子試作頭》は、隣の作品と同じく六代目尾上菊五郎をモデルに制作されました。試作を経て1958年に完成した《鏡獅子》(当館蔵)は長らく国立劇場に常設展示されていましたが、劇場の建て替えに伴い再開場まで岡山県の井原市立平櫛田中美術館に長期貸与され、2月にお披露目を迎えることとなりました。 5室 アンティミテ 有馬さとえ(三斗枝)《赤い扇》1925年 アンティミテとは、フランス語で「親密さ、安らぎ、私生活、内奥」といった意味の言葉です。19世紀末のパリで、身近な人々や子どもや動物の親密な情景を描いた一群の画家たちがアンティミストと呼ばれました。しかし考えてみると、アンティミテの主題は、なにもこの時代だけに限定されるものではありません。17世紀オランダの風俗画から、現代アートに至るまで、そこかしこにみられます。ここでは、大正の終わり頃から昭和の中頃にかけて描かれた、アンティミテの系譜に連なる絵画や彫刻を集めてみました。女性の画家たちによる女性のポートレート、物書きや眠りなど何かに没入している人物、童話的な小さなものたちの世界、小動物の像、子どもや動物をいつくしむ姿など。そして、一見アンティミテとは無縁な広大な風景のなかに、ぽつねんと佇む人物や動物を見つけたとき、突如としてその風景はより身近なものに感じられないでしょうか。 3階 6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで9室 写真・映像10室 日本画建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》) 6室 1941–1945|戦争/美術 松本竣介《Y市の橋》1943年 1937(昭和12)年に日中戦争が始まり、翌38年に国家総動員法が施行されると、国民は戦争への協力を迫られていきます。美術家もまた例外でなく、多くの画家が戦地に派遣されて戦争記録画を制作します。また自由で前衛的な表現への弾圧も行われ、展覧会の禁止や美術団体の解散といった事態に至ります。この部屋に並ぶ作品は、戦況が厳しさを増していく1941(昭和16)年(真珠湾攻撃)から45年(第二次世界大戦終結)の間に制作されたものです。戦争と美術の直接的な関係を分かりやすく伝えているように見えるのは戦争記録画です。また、それまでのスタイルを揺るぎなく継続させ、戦争の影響がほぼないかに見える作品、戦争への違和を間接的に示しているように見える作品もあります。この時代の表現を戦争か美術か、あるいは戦争協力か戦争反対かという二者択一の図式で整理するのはおそらく適当ではありません。どの作品にも戦争と美術とが含まれており、鑑賞において、その二つの要素を同時に見なければいけないという困難がここにはあります。 7室 存在と不在―見えるものと見えざるもののはざまに 岸田劉生《壺の上に林檎が載って在る》1916年 暗闇から光を発するように浮かび上がる果物や野菜を描いた浜口陽三の版画には、身近さと神秘性とが同居しているような性格があります。また制作年はさかのぼりますが、岸田劉生の《壺の上に林檎が載って在る》は、把手の取れた壺の上に林檎を置く非日常的な構図により、林檎という存在に見る者の視線を惹きつけ、対象の描写にとどまらない、林檎という存在の重みや不可思議さへいざなうような特異な魅力を放っています。両者を並べてみると、互いが互いを照らしあうような時代を超えた関係性を感じとれるのではないでしょうか。この部屋では、金山康喜《アイロンのある静物》、マックス・エルンスト《つかの間の静寂》、山口薫《荒れた小さい菱形の沼》のような人の気配の希薄な絵画や長谷川潔、清宮質文、野田哲也の版画など、1950-60年代を中心に、現実と非現実のあわいにあって、見えるものと見えないものを行き来しながら、視覚だけでなく、心や思考に働きかける作品を展示します。 8室 流通するわれら 中西夏之《コンパクト・オブジェ》1962年撮影:大谷一郎 「流通革命」─経営学者の林周二による1962年のベストセラーのタイトルは、この時代を端的に表しています。大型量販店の登場、さらには週刊誌ブーム、テレビの普及、「マスメディア」や「マスコミ」という語の浸透。とりわけ1960年代の10年間で、大量生産・大量消費は家庭生活を一変させました。この「革命」は美術とも無縁ではありません。この時期、美術とは思われていなかったような大衆的な図像や量産品が美術作品の中に続々と現れます。それは必ずしも社会をそのまま反映した結果ではなく、猛スピードで変化する社会をどのように批判的に捉えるかというトライアルでした。生活を支える流通基盤は、裏返せば人々を縛ることにもなるからです。批判的な視線は、たとえば印刷物や郵便システムを介して、流通媒体そのものを乗っ取るような作例に見て取れるでしょう。美術家たちは俗なるものにまみれながら、増殖し、氾濫するイメージを迎え撃ったのです。 9室 高梨豊「町」 高梨豊《「町」より 本郷 文京区本郷四ノ三五ノ四 うさぎや》1975 (printed 2008)年 〈町〉の各作品の表題にある「本郷」や「佃」といった地名が示すのは、「界隈」と呼ばれる範囲。作者である高梨豊は、「『界隈』は町内よりひとまわり広い地域をさし示していて、土地の輪郭を知る上で重要な手引きとなった」と記しています。土地の固有性を体感するために、高梨は大型カメラの機材を担いで、あえて地下鉄やバスなど公共交通機関を使ってそれぞれの「界隈」の撮影に赴きました。この連作は、三脚に据えた4×5インチ判の大型カメラによる、緻密な事物の記録の試みでもあります。カラーフィルムを選択したのは、現実の色彩を白から黒へのトーンに還元する、モノクロームの抽象性を回避するため。記録性というカメラの基本的な機能を前面に押し出したこの仕事は、1960年代末、高梨も参加した写真同人誌『プロヴォーク』を主導した中平卓馬が、1973年、かつての「アレ・ブレ・ボケ」と評された先鋭的な写真を自己否定し、「植物図鑑」をキーワードに「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指すと宣言したことに対する、高梨の応答でもあったように見えます。 10室 芹沢銈介と、新しい日々 芹沢銈介《木綿地型絵染文字文のれん 天》1965年 芹沢銈介(1895-1984)は伝統的な型染の技法を用いながら、ものの本質を明快に表した模様で独自の表現を切り開き、国内外で高い評価を受ける染色家です。終戦後まもなく制作をはじめた和紙による型染カレンダーは、戦後の人々の暮らしを晴れやかに彩り、芹沢の意匠が一般にも広く知られるようになりました。柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)らの作家もこれに触発されて染色を始めたほか、芹沢自身も量産のため「芹沢染紙研究所」を開設し、一緒に仕事をする若い仲間との出会いに気持ちを新たにしています。国立工芸館は、金子量重氏のご寄贈(2016年)による400点超の作品・資料[金子量重コレクション]など、充実した芹沢のコレクションを有しています。今回は和紙作品をはじめ、重要無形文化財「型絵染」保持者の認定を受けた後の着物やのれんなどの名品を中心に、芹沢とともに活動した染色団体「賄木会」の作家の作品も交え、東京国立近代美術館所蔵作品展「MOMATコレクション」の特集展示として、ご紹介します。どうぞお楽しみください。 11室 あるがままのもの 李禹煥《線より》1977年 1970年代の美術家たちは、物質どうしが起こす現象を見せたり、ただその場に物体を置いたり、あるいは触れただけとか、指し示すだけといったような、ぶっきらぼうでそっけない行為にこぞって取り組みます。いわゆる「美術作品」を新たに生み出すという創作行為そのものへの疑念や、物語や観念に依らずにあるがままのもの(事物)をつかまえたいという望みに発するそうした動向は、「もの派」とも呼ばれました。1階で個展を開催する中平卓馬による、「植物図鑑」としての写真を目指すという宣言も、この潮流のうちにありました(榎倉康二、河原温、高松次郎、吉田克朗ら、この部屋のほとんどの作家は中平と同じ国際美術展に出品していました)。今や国際的に知られる「もの派」という名称につい引きずられてしまいますが、美術作品のようではない作品を表そうとするとき、つぶす、割る、刺す、といった行為を通じて、絵画の形式とたわむれるように見える例が頻出することも、興味深いところです。 12室 作者が語る 野見山暁治《ある証言》1992年 作品や制作についての考えを作者本人から聞くことができることは、作者が健在である現代の美術ならではの大きな恩恵です。当館では2005年から断続的にアーティスト・トークを開催し、その記録に取り組んできました。今年度、これまでアートライブラリで公開していた過去のトークに英語字幕を付けて、ウェブサイトで公開することにいたしました(第一弾の21本を3月初頭に公開予定)。これにちなんで、青木野枝、黒川弘毅、児玉靖枝、野見山暁治、宮本隆司の5名のトーク映像とともに、作品を紹介します。このうち野見山暁治氏については、2003年に当館で個展を開催したゆかりも踏まえ、昨年102歳で世を去った氏の追悼も兼ねています。制作した本人の言葉の持つ説得力は強く、その言葉によって作品理解や体験が更新されることもしばしばです。貴重な映像と合わせて、ひとつひとつの作品をあらためてじっくりご覧ください。また、ウェブサイトを通じて、ご家庭でもアーティスト・トークをお楽しみいただければ幸いです。 アーティスト・トーク 書き起こしテキスト アーティスト・トークの日本語書き起こしテキストは下記よりダウンロードしてください。 動画制作協力:国立アートリサーチセンター 開催概要 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F-2F) 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館

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展示替え休館のお知らせ(期間:12月4日~1月22日)

東京国立近代美術館は展示替えのため2023年12月4日(月)~2024年1月22日(月)の期間に休館いたします。 ミュージアムショップ、アートライブラリも休業・休室となります。 レストラン「ラー・エ・ミクニ」営業日の詳細は「ラー・エ・ミクニ」公式サイトをご確認ください。 次回の展覧会 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 所蔵作品ギャラリー 所蔵作品展「MOMATコレクション」 ギャラリー4 コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」 2024年2月6日(火)~4月7日(日) 企画展ギャラリー 「中平卓馬 火―氾濫」

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