新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》の検索結果

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新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》

フランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエの彫刻《蟻》(1953年)を初公開します。リシエ(1902–59)は、第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人で、近年その再評価が急速に進んでいます。オーギュスト・ロダンの助手、エミール=アントワーヌ・ブールデルに学び、古典的彫塑の手法を守った点で近代彫刻の正当な継承者と言える一方、人体と自然界・動植物のイメージを有機的に結合させた独自の作風を確立して注目を浴びますが、キャリア全盛期に病に倒れました。リシエと同時期にブールデルに学んだ戦前の日本人彫刻家、リシエに大きな影響を受けた戦後の日本人彫刻家、第二次大戦後の荒廃と芸術との関係など「時代」からつながっていく拡がり、あるいは人間と動植物との混成(ハイブリッド)、天を仰ぐ女性、彫刻の肌と骨格など「造形」からつながっていく拡がり。多方向にその網を張りめぐらす、リシエの彫刻の豊かな表現をお楽しみください。 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》1953年 撮影:大谷一郎 開催概要 東京国立近代美術館2Fギャラリー4 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 ※「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 ※「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。  東京国立近代美術館

美術館の春まつり

皇居・千鳥ヶ淵の桜とともに、美術館の春を楽しもう! 皇居や千鳥ヶ淵、北の丸公園など桜の名所エリアに立地している東京国立近代美術館。散策で巡るのに絶好のロケーションであることから、当館では桜の開花に合わせて春にちなんだ催しを開催します。題して「美術館の春まつり」。当館の代表作の一つである重要文化財・川合玉堂《行く春》を年に一度、春の時期にだけ公開するほか、前庭にお花見を楽しみながらひと休みできるお休み処をご用意し、ドリンク・フードのテイクアウト販売もおこないます。皇居・千鳥ヶ淵はじめ周辺に咲く桜とともに、美術館でも春を楽しんでみませんか。 みどころ 春らんまんの展覧会  所蔵作品展「MOMAT コレクション」1月23 日(火)~4 月7 日(日) 4-2 F 所蔵品ギャラリー 19世紀末から今日にいたる日本近代美術の流れがご覧いただける所蔵作品展「MOMAT コレクション」では、13,000 点を超える所蔵作品の中から選りすぐりの約200 点を、12の展示室ごとにテーマをもうけてさまざまな切り口でご紹介します。水面に散る長瀞の桜を描いた重要文化財、川合玉堂《行く春》を、年に一度、春の時期にだけ公開します。また、雨に濡れる吉野の桜が抒情を誘う菊池芳文《小雨ふる吉野》のほか、児玉靖枝、日高理恵子ら現代作家による春にちなんだ作品を展示します。染色家・芹沢銈介の作品を一室にずらりと集めた特集展示も見どころです。鮮やかな型染カレンダーからは、春夏秋冬の四季の移ろいを堪能できることでしょう。※期間中展示替えがあります。春にちなんだ作品の一部は、2月27日(火)からの展示になります。 川合玉堂《行く春》1916年、重要文化財 パウル・クレー《花ひらく木をめぐる抽象》1925年 児玉靖枝《ambient light ーsakura》2002年 芹沢銈介《1968年のカレンダー(3月)》1967年 国立工芸館 菊池芳文《小雨ふる吉野》1914年 【展示期間:2 月27 日(火)~4 月7 日(日)】 企画展「中平卓馬 火―氾濫」2月6日(火)~4月7日(日)、1F 企画展ギャラリー 日本の戦後写真史において大きな足跡を残した写真家・中平卓馬(1938–2015)。本展は、初期から晩年まで約400点の作品・資料から、中平の写真をめぐる思考と実践の軌跡をたどる、待望の大回顧展です。 コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」1月23 日(火)~4 月7 日(日)、2F ギャラリー4 第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人で、近年その再評価が急速に進んでいるフランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエ(1902–59)。リシエの彫刻《蟻》(1953 年)を初公開します。 ジェルメーヌ・リシエ《蟻》1953年 撮影:大谷一郎 参加型イベント 「MOMATガイドスタッフによる所蔵品ガイド」「美術館の春まつり」期間中・開館日の毎日11:00-(各回50分程度) MOMAT ガイドスタッフが選んだ展示作品3点程度を、対話を交えて鑑賞します。対話を楽しみながら鑑賞することで、作品の新たな一面に出会えるかもしれません。「美術館の春まつり」期間中、毎日実施します。※申込不要、参加無料(要観覧料)。3 階エレベーター前ホールに集合。 「春まつりナイトトーク」 3月15日(金)、22日(金)、29日(金)、4月5日(金)19:00-(各回30分程度) 教育普及担当スタッフによるギャラリートーク。MOMATコレクション展示室(所蔵品ギャラリー)より、各回それぞれテーマを決めてお話しします。各回のテーマ、担当者などの詳細は後日イベントページにてお知らせします。※申込不要、参加無料(要観覧料)。 「Let's Talk Art!- Spring Festival in MOMAT」3月15日(金)、19日(火)、21日(木)、22日(金)、23日(土)、26日(火)、28日(木)、4月5日(金) 11:00-/12:00-(各回20分程度) 「美術館の春まつり」から川合玉堂《行く春》、加山又造《春秋波濤》のどちらかを、英語で鑑賞します。どちらを鑑賞するかは当日のお楽しみ!※申込不要、参加無料(要観覧料)。4 階エレベーター前ホールに集合。※英語で実施します。 お花見しながらひと休み 桜が見える前庭に、床几台によるお休み処をご用意します。また、三國清三シェフがプロデュースするレストラン「ラー・エ・ミクニ」によるキッチンカーを出店。特製お花見弁当やドリンク各種などのテイクアウト販売を予定、お休み処や2階テラスでお楽しみいただけます。散策や鑑賞のひと休みに、桜を眺めながらのひとときをお過ごしください。 前庭の様子(2022年撮影) 撮影:三嶋一路 特製お花見弁当※画像はイメージです。実際の内容は異なる場合がございます。 「美術館の春まつり」ポップアップショップ 1 階エントランスに「美術館の春まつり」ポップアップショップを出店。桜や花の作品をあしらったチケットファイルやマグネット、一筆箋など、春らしいオリジナルグッズを販売します。 開催概要 美術館の春まつり 東京国立近代美術館 2024年3月15日(金)~4月7日(日) 10:00-17:00(金曜・土曜は20:00まで) いずれも、入館は閉館の30分前まで 月曜日(ただし3月25日は開館) 東京国立近代美術館、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁 委託:令和5年度日本博2.0事業(委託型)

所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.1.23–4.7)

2024年1月23日-4月7日の所蔵作品展のみどころ 芹沢銈介《1972年のカレンダー(1月)》1971年 国立工芸館蔵、金子量重コレクション MOMATコレクションにようこそ! 当館コレクション展の特徴をご紹介します。まずはその規模。1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展です。そして、それぞれ小さなテーマが立てられた全12室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示です。 今期の見どころの紹介です。9室「高梨豊『町』」、11室「あるがままのもの」は、企画展「中平卓馬 火―氾濫」(2月6日~)に関連した展示です。また10室では、国立工芸館が所蔵する染色家・芹沢銈介の代表作を存分にご覧いただけます。さらに1室「ハイライト」では鑑賞プログラムの実践の蓄積、12室「作者が語る」では、アーティスト・トークのアーカイヴを活用した企画も試みています。 企画展との連動、美術館活動の蓄積の成果など、いずれも当館コレクションの厚みのなせる業と自負しています。どうぞお楽しみください。 今会期に展示される重要文化財指定作品 今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。 川合玉堂《行く春》1916年|1室 原田直次郎《騎龍観音》1890年、護国寺蔵、寄託作品|1室 和田三造《南風》1907年|1室 萬鉄五郎《裸体美人》1912年|2室 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年|3室 川合玉堂《行く春》1916年(左隻) 原田直次郎《騎龍観音》寄託作品、1890年 和田三造《南風》1907年 萬鉄五郎《裸体美人》1912年 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年 展覧会について 4階 1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで 「眺めのよい部屋」美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。 「情報コーナー」開館70周年を記念してMOMATの歴史を振り返る年表と関連資料の展示コーナーへとリニューアルしました。年表には美術館の発展に関わる出来事のほか、コレクションの所蔵品数や入場者数の推移を表したグラフも盛り込んでいます。併せて、所蔵作品検索システムのご利用も再開します。 1室 ハイライト 川合玉堂《行く春》1916年、重要文化財(左隻) 3,000㎡に200点近くが並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。「ハイライト」では近現代美術を代表する作品を揃え、当館のコレクションの魅力をぎゅっと凝縮してご紹介しています。日本画のコーナーでは、春を待つこの季節にふさわしい名品を、ケースの外には日本近代洋画の人気作や日本の前衛美術に大きな影響をもたらした西洋の作家たちの作品を並べました。ここには、桜の花びらが渓流に舞い散る情景を描いた川合玉堂の《行く春》など、重要文化財3点も含まれます。今回はいつもの作品解説のほかに、鑑賞のきっかけとなるような問いかけを示しました。これらの問いかけは、子どもから大人まで多くの方々が参加してきた当館の鑑賞プログラムでの実践をもとに選んでいます。MOMATコレクションと初めて出会う方も、すでに顔なじみの方も、さまざまな視点から作品をじっくり眺めて、肩の力を抜いて鑑賞をお楽しみください。 2室 「新か?旧か?」(前期展示:2024年1月23日~2月25日) 萬鉄五郎《裸体美人》1912年、重要文化財 何であれ、ものごとの最初を特定するのは難しい。MOMATの真ん中のMはモダン、つまり近代です。近代美術の始まりとは、いつなのでしょうか? ここに並ぶ作品の約半分は、1907(明治40)年に始まった官設の「文部省美術展覧会(文展)」に出品されたものです。この文展開設を日本の近代美術の始まりとする考え方があります(異論もあります)。そして近代とは「常に前衛であれ」ということをモットーとする時代です。つまり直近の過去は否定し、乗り越えるべき旧いものになります。設立当初は歓迎された文展ですが、まもなくすると硬直したアカデミズムの牙城として、新しい世代の批判対象になります。残り半分の作品は、そんな文展の在り方とは異なる道を進もうとした作家によるものです。これらの作品が制作されてから100年ほど経った現在の私たちには、やはり新しいものが旧いものより素晴らしく映るのでしょうか?それとも、新しいものにはない素晴らしさを、旧いものに見出すのでしょうか? 2室 春まつり(後期展示:2024年2月27日~4月7日) 菊池芳文《小雨ふる吉野》1914年(左隻)展示期間:2024年2月27日-4月7日 いつもならこの部屋では、日本近代美術の流れを紹介する最初の部屋として、おもに1900年代から1910年代の作品を紹介しています。しかし今期は制作年代の縛りをなくして、毎年恒例の「春まつり」をこの部屋でおこなうこととなりました。ここに並んでいる花木を描いた6点と、第1室で紹介している川合玉堂《行く春》、加山又造《春秋波濤》の2点をあわせた全8点で、この春もお花見をお楽しみください。大画面に描かれた菊池芳文《小雨ふる吉野》や日高理恵子《樹を見上げてⅦ》を、清家清の移動式畳に腰かけてご覧になると、地面に腰をおろして花を愛でる、日本式のお花見気分を味わっていただけることでしょう。辻永《椿と仔山羊》と、斎藤豊作《すもも》《白い花の樹》は、日本の洋画家が花木を描いた(当館コレクションのなかでは)珍しい作品です。洋画家に花木を描いた作品が少ないのは、静物としての花瓶の花と違って、花木が洋画家の敬遠した装飾となじみやすいせいでしょうか。3点とも「春まつり」には初登場です。 3室 麗子、生誕110年 岸田劉生《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年 岸田麗子は、1914年に画家・岸田劉生と妻・蓁(しげる)の長女として生まれました。劉生による肖像画「麗子像」によって、日本近代美術史上にその名を刻む人物です。麗子が7歳の時に描かれた《麗子微笑》(東京国立博物館蔵)は、重要文化財にも指定されています。麗子はモデルとしてポーズをとるだけでなく、劉生に教わりながら自らも絵を描くようになります。娘であり、モデルであり、そして教え子でもある麗子は、劉生にとって特別な存在でした。劉生は麗子が15歳の時に早逝しますが、その後も麗子は亡き父の教えを心に留めながら、絵画の制作を続けました。この部屋では、当館が所蔵する「麗子像」を一挙に公開するとともに、劉生の長男・鶴之助氏から遺贈を受けた岸田劉生の資料群をご紹介します。写真や日記、はがきなどのプライベートな断片からは、麗子が成長する姿や、劉生と麗子の親密な関係性が浮かび上がってきます。 4室 近代の役者絵 平櫛田中《鏡獅子試作頭》1938年撮影:大谷一郎 1920年代前半、劉生は歌舞伎鑑賞のために鵠沼(現:神奈川県藤沢市)から汽車に乗って東京の劇場へと足しげく通いました。その傾倒ぶりは、当時の日記や手帖スケッチ、アルバムからもよく伝わってきます。4室では、そんな劉生と同じ近代を生きた役者たちを描いた新版画の作家、山村豊成(耕花)と名取春仙の作品をご紹介します。西洋絵画や演劇写真の影響を受けて、浮世絵由来の役者絵においても写実的な表現が志向されていくなか、誇張を残して役者の心理を巧みに表した豊成と、役者の容貌を素直に美しく描き出した春仙との個性の違いをお楽しみください。この部屋唯一の彫刻である平櫛田中の《鏡獅子試作頭》は、隣の作品と同じく六代目尾上菊五郎をモデルに制作されました。試作を経て1958年に完成した《鏡獅子》(当館蔵)は長らく国立劇場に常設展示されていましたが、劇場の建て替えに伴い再開場まで岡山県の井原市立平櫛田中美術館に長期貸与され、2月にお披露目を迎えることとなりました。 5室 アンティミテ 有馬さとえ(三斗枝)《赤い扇》1925年 アンティミテとは、フランス語で「親密さ、安らぎ、私生活、内奥」といった意味の言葉です。19世紀末のパリで、身近な人々や子どもや動物の親密な情景を描いた一群の画家たちがアンティミストと呼ばれました。しかし考えてみると、アンティミテの主題は、なにもこの時代だけに限定されるものではありません。17世紀オランダの風俗画から、現代アートに至るまで、そこかしこにみられます。ここでは、大正の終わり頃から昭和の中頃にかけて描かれた、アンティミテの系譜に連なる絵画や彫刻を集めてみました。女性の画家たちによる女性のポートレート、物書きや眠りなど何かに没入している人物、童話的な小さなものたちの世界、小動物の像、子どもや動物をいつくしむ姿など。そして、一見アンティミテとは無縁な広大な風景のなかに、ぽつねんと佇む人物や動物を見つけたとき、突如としてその風景はより身近なものに感じられないでしょうか。 3階 6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで9室 写真・映像10室 日本画建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》) 6室 1941–1945|戦争/美術 松本竣介《Y市の橋》1943年 1937(昭和12)年に日中戦争が始まり、翌38年に国家総動員法が施行されると、国民は戦争への協力を迫られていきます。美術家もまた例外でなく、多くの画家が戦地に派遣されて戦争記録画を制作します。また自由で前衛的な表現への弾圧も行われ、展覧会の禁止や美術団体の解散といった事態に至ります。この部屋に並ぶ作品は、戦況が厳しさを増していく1941(昭和16)年(真珠湾攻撃)から45年(第二次世界大戦終結)の間に制作されたものです。戦争と美術の直接的な関係を分かりやすく伝えているように見えるのは戦争記録画です。また、それまでのスタイルを揺るぎなく継続させ、戦争の影響がほぼないかに見える作品、戦争への違和を間接的に示しているように見える作品もあります。この時代の表現を戦争か美術か、あるいは戦争協力か戦争反対かという二者択一の図式で整理するのはおそらく適当ではありません。どの作品にも戦争と美術とが含まれており、鑑賞において、その二つの要素を同時に見なければいけないという困難がここにはあります。 7室 存在と不在―見えるものと見えざるもののはざまに 岸田劉生《壺の上に林檎が載って在る》1916年 暗闇から光を発するように浮かび上がる果物や野菜を描いた浜口陽三の版画には、身近さと神秘性とが同居しているような性格があります。また制作年はさかのぼりますが、岸田劉生の《壺の上に林檎が載って在る》は、把手の取れた壺の上に林檎を置く非日常的な構図により、林檎という存在に見る者の視線を惹きつけ、対象の描写にとどまらない、林檎という存在の重みや不可思議さへいざなうような特異な魅力を放っています。両者を並べてみると、互いが互いを照らしあうような時代を超えた関係性を感じとれるのではないでしょうか。この部屋では、金山康喜《アイロンのある静物》、マックス・エルンスト《つかの間の静寂》、山口薫《荒れた小さい菱形の沼》のような人の気配の希薄な絵画や長谷川潔、清宮質文、野田哲也の版画など、1950-60年代を中心に、現実と非現実のあわいにあって、見えるものと見えないものを行き来しながら、視覚だけでなく、心や思考に働きかける作品を展示します。 8室 流通するわれら 中西夏之《コンパクト・オブジェ》1962年撮影:大谷一郎 「流通革命」─経営学者の林周二による1962年のベストセラーのタイトルは、この時代を端的に表しています。大型量販店の登場、さらには週刊誌ブーム、テレビの普及、「マスメディア」や「マスコミ」という語の浸透。とりわけ1960年代の10年間で、大量生産・大量消費は家庭生活を一変させました。この「革命」は美術とも無縁ではありません。この時期、美術とは思われていなかったような大衆的な図像や量産品が美術作品の中に続々と現れます。それは必ずしも社会をそのまま反映した結果ではなく、猛スピードで変化する社会をどのように批判的に捉えるかというトライアルでした。生活を支える流通基盤は、裏返せば人々を縛ることにもなるからです。批判的な視線は、たとえば印刷物や郵便システムを介して、流通媒体そのものを乗っ取るような作例に見て取れるでしょう。美術家たちは俗なるものにまみれながら、増殖し、氾濫するイメージを迎え撃ったのです。 9室 高梨豊「町」 高梨豊《「町」より 本郷 文京区本郷四ノ三五ノ四 うさぎや》1975 (printed 2008)年 〈町〉の各作品の表題にある「本郷」や「佃」といった地名が示すのは、「界隈」と呼ばれる範囲。作者である高梨豊は、「『界隈』は町内よりひとまわり広い地域をさし示していて、土地の輪郭を知る上で重要な手引きとなった」と記しています。土地の固有性を体感するために、高梨は大型カメラの機材を担いで、あえて地下鉄やバスなど公共交通機関を使ってそれぞれの「界隈」の撮影に赴きました。この連作は、三脚に据えた4×5インチ判の大型カメラによる、緻密な事物の記録の試みでもあります。カラーフィルムを選択したのは、現実の色彩を白から黒へのトーンに還元する、モノクロームの抽象性を回避するため。記録性というカメラの基本的な機能を前面に押し出したこの仕事は、1960年代末、高梨も参加した写真同人誌『プロヴォーク』を主導した中平卓馬が、1973年、かつての「アレ・ブレ・ボケ」と評された先鋭的な写真を自己否定し、「植物図鑑」をキーワードに「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指すと宣言したことに対する、高梨の応答でもあったように見えます。 10室 芹沢銈介と、新しい日々 芹沢銈介《木綿地型絵染文字文のれん 天》1965年 芹沢銈介(1895-1984)は伝統的な型染の技法を用いながら、ものの本質を明快に表した模様で独自の表現を切り開き、国内外で高い評価を受ける染色家です。終戦後まもなく制作をはじめた和紙による型染カレンダーは、戦後の人々の暮らしを晴れやかに彩り、芹沢の意匠が一般にも広く知られるようになりました。柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)らの作家もこれに触発されて染色を始めたほか、芹沢自身も量産のため「芹沢染紙研究所」を開設し、一緒に仕事をする若い仲間との出会いに気持ちを新たにしています。国立工芸館は、金子量重氏のご寄贈(2016年)による400点超の作品・資料[金子量重コレクション]など、充実した芹沢のコレクションを有しています。今回は和紙作品をはじめ、重要無形文化財「型絵染」保持者の認定を受けた後の着物やのれんなどの名品を中心に、芹沢とともに活動した染色団体「賄木会」の作家の作品も交え、東京国立近代美術館所蔵作品展「MOMATコレクション」の特集展示として、ご紹介します。どうぞお楽しみください。 11室 あるがままのもの 李禹煥《線より》1977年 1970年代の美術家たちは、物質どうしが起こす現象を見せたり、ただその場に物体を置いたり、あるいは触れただけとか、指し示すだけといったような、ぶっきらぼうでそっけない行為にこぞって取り組みます。いわゆる「美術作品」を新たに生み出すという創作行為そのものへの疑念や、物語や観念に依らずにあるがままのもの(事物)をつかまえたいという望みに発するそうした動向は、「もの派」とも呼ばれました。1階で個展を開催する中平卓馬による、「植物図鑑」としての写真を目指すという宣言も、この潮流のうちにありました(榎倉康二、河原温、高松次郎、吉田克朗ら、この部屋のほとんどの作家は中平と同じ国際美術展に出品していました)。今や国際的に知られる「もの派」という名称につい引きずられてしまいますが、美術作品のようではない作品を表そうとするとき、つぶす、割る、刺す、といった行為を通じて、絵画の形式とたわむれるように見える例が頻出することも、興味深いところです。 12室 作者が語る 野見山暁治《ある証言》1992年 作品や制作についての考えを作者本人から聞くことができることは、作者が健在である現代の美術ならではの大きな恩恵です。当館では2005年から断続的にアーティスト・トークを開催し、その記録に取り組んできました。今年度、これまでアートライブラリで公開していた過去のトークに英語字幕を付けて、ウェブサイトで公開することにいたしました(第一弾の21本を3月初頭に公開予定)。これにちなんで、青木野枝、黒川弘毅、児玉靖枝、野見山暁治、宮本隆司の5名のトーク映像とともに、作品を紹介します。このうち野見山暁治氏については、2003年に当館で個展を開催したゆかりも踏まえ、昨年102歳で世を去った氏の追悼も兼ねています。制作した本人の言葉の持つ説得力は強く、その言葉によって作品理解や体験が更新されることもしばしばです。貴重な映像と合わせて、ひとつひとつの作品をあらためてじっくりご覧ください。また、ウェブサイトを通じて、ご家庭でもアーティスト・トークをお楽しみいただければ幸いです。 アーティスト・トーク 書き起こしテキスト アーティスト・トークの日本語書き起こしテキストは下記よりダウンロードしてください。 動画制作協力:国立アートリサーチセンター 開催概要 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F-2F) 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 5時から割引(金曜・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館

中平卓馬 火―氾濫

日本の写真を変えた、伝説的写真家 約20年ぶりの大回顧展 日本の戦後写真における転換期となった1960 年代末から70 年代半ばにかけて、実作と理論の両面において大きな足跡を記した写真家である中平卓馬(1938-2015)。その存在は森山大道や篠山紀信ら同時代の写真家を大いに刺激し、またホンマタカシら後続の世代にも多大な影響を与えてきました。1960 年代末『PROVOKE』誌などに発表した「アレ・ブレ・ボケ」の強烈なイメージや、1973 年の評論集『なぜ、植物図鑑か』での自己批判と方向転換の宣言、そして1977 年の昏倒・記憶喪失とそこからの再起など、中平のキャリアは劇的なエピソードによって彩られています。しかしそれらは中平の存在感を際立たせる一方で、中平像を固定し、その仕事の詳細を見えにくくするものでもありました。 本展では、あらためて中平の仕事をていねいにたどり、その展開を再検証するとともに、特に、1975 年頃から試みられ、1977 年に病で中断を余儀なくされることとなった模索の時期の仕事に焦点を当て、再起後の仕事の位置づけについてもあらためて検討します。 2015 年に中平が死去して以降も、その仕事への関心は国内外で高まり続けてきました。本展は、初期から晩年まで約400 点の作品・資料から、今日もなお看過できない問いを投げかける、中平の写真をめぐる思考と実践の軌跡をたどる待望の展覧会です。  見どころ これまで未公開の作品を多数展示   近年その存在が確認された《街路あるいはテロルの痕跡》の1977 年のヴィンテージ・プリントを初展示。昏倒によって中平のキャリアが中断する前の、最後のまとまった作品発表となった雑誌掲載作13 点です。2021 年に東京国立近代美術館が本作を収蔵して以来、今回が初めての展示となります。また1976 年にマルセイユで発表されて以来、展示されることのなかった《デカラージュ》など、未公開の作品を多数展示します。  カラー写真の重要作を一挙に展示  1974 年に東京国立近代美術館で開催した「15 人の写真家」展の出品作《氾濫》をちょうど半世紀ぶりに同じ会場で再展示します。カラー写真48 点組で構成される幅約6 メートルの大作で、中平のキャリア転換期における重要作です。 また、中平存命中最後の重要な個展「キリカエ」(2011 年)に展示されたカラーの大判プリント64 点を展示します。  雑誌から読み解く中平の試み 『アサヒグラフ』や『朝日ジャーナル』など、キャリア前半の1960 年代から1970 年代前半にかけて発表された作品の掲載誌を多数展示。当時、雑誌は社会にイメージを流通させる手段として重要な役割を担っていました。写真がどのように流通するかについて常に意識的だった中平が、同時代の社会に対して、写真を用いて何を試みようとしていたのか、その実態を紹介します。  展覧会構成・主な展示作品  本展は初期から晩年にいたる中平卓馬の仕事を、5つの章でたどります。とくに2~4章では、1977 年に不慮の昏倒と記憶喪失により中断した中平の仕事が、どこへ向かおうとしていたのか、そこにいたる70 年代の展開を詳しくひもときます。  第1章 来たるべき言葉のために  中平卓馬《夜》1969年頃 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《夜》1969年頃 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  第2章 風景・都市・サーキュレーション 中平卓馬《「サーキュレーション―日付、場所、行為」より》1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《「サーキュレーション―日付、場所、行為」より》1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《「サーキュレーション―日付、場所、行為」より》1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  第3章 植物図鑑・氾濫 中平卓馬《氾濫》1974年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《「氾濫」より》1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira 中平卓馬《「氾濫」より》1969年頃東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  第4章 島々・街路  中平卓馬《「街路あるいはテロルの痕跡」よりマルセイユ、フランス》1976 年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《「街路あるいはテロルの痕跡」よりマルセイユ、フランス》1976年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira 第5章 写真原点 中平卓馬《無題 #437》2005年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《無題 #444》2010年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《無題 #445》2010年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬《無題 #470》2010年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira  中平卓馬プロフィール 1938年東京生まれ。1963年東京外国語大学スペイン科卒業、月刊誌『現代の眼』編集部に勤務。誌面の企画を通じて写真に関心を持ち、1965年に同誌を離れ写真家、批評家として活動を始める。 1966年には森山大道と共同事務所を開設、1968年に多木浩二、高梨豊、岡田隆彦を同人として季刊誌『PROVOKE』を創刊(森山は2号より参加、3号で終刊)。「アレ・ブレ・ボケ」と評された、既成の写真美学を否定する過激な写真表現が注目され、精力的に展開された執筆活動とともに、実作と理論の両面において当時の写真界に特異な存在感を示した。1973年に上梓した評論集『なぜ、植物図鑑か』では、一転してそれまでの姿勢を自ら批判、「植物図鑑」というキーワードをかかげて、「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指すことを宣言。翌年、東京国立近代美術館で開催された「15人の写真家」展には48点のカラー写真からなる大作《氾濫》を発表するなど、新たな方向性を模索する。そのさなか、1977 年に急性アルコール中毒で倒れ、記憶の一部を失い活動を中断。療養の後、写真家として再起し、『新たなる凝視』(1983)、『Adieu à X』(1989)などの写真集を刊行。2010年代始めまで活動を続けた。2015年逝去。 1973年、自己批判を機に、それまでのプリントやネガの大半を焼却したとされていたが、2000 年代初頭、残されていたネガが発見され、それをきっかけとして2003年には横浜美術館で大規模な個展「中平卓馬:原点復帰-横浜」が開催された。 中平卓馬ポートレイト 1968年頃撮影:森山大道 東京国立近代美術館 ©Daido Moriyama Photo Foundation  中平卓馬ポートレイト 2003年撮影:ホンマタカシ©Takashi Homma 展示風景 「中平卓馬 火―氾濫」展示風景 撮影:木奥惠三 カタログ 展覧会公式カタログは2024年3月に刊行予定です。刊行日が決まり次第、本ページならびに当館SNSでお知らせいたします。 「中平卓馬 火―氾濫」展覧会公式カタログ 刊行予定日:2024年3月価格:3,500円(税込)仕様:A4変形、ソフトカバー頁数:448ページ発行:ライブアートブックス(大伸社グループ) ご予約について 東京国立近代美術館と発行元オンラインショップ「LAB BOOK SHOP」にてご予約いただけます。 東京国立近代美術館でのご予約 本展ご観覧当日のご予約に限り送料無料(刊行後にご購入いただく場合は送料がかかります) おひとり様2冊まで ご予約後のキャンセルはできません オンラインショップでのご予約 別途送料がかかります おひとり様2冊まで ご予約後のキャンセルはできません 詳細は発行元オンラインショップ「LAB BOOK SHOP」でご確認ください。 開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2024年2月6日(火)~ 4月7日(日) 月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日  10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館30分前まで 一般  1,500円(1,300円) 大学生 1,000円(800円)  ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。  高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。  キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。  本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。  観覧券は美術館窓口(当日券のみ)と公式チケットサイト(e-tix)で販売いたします。 東京国立近代美術館、朝日新聞社 公益社団法人日本写真家協会

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展示替え休館のお知らせ(期間:12月4日~1月22日)

東京国立近代美術館は展示替えのため2023年12月4日(月)~2024年1月22日(月)の期間に休館いたします。 ミュージアムショップ、アートライブラリも休業・休室となります。 レストラン「ラー・エ・ミクニ」営業日の詳細は「ラー・エ・ミクニ」公式サイトをご確認ください。 次回の展覧会 2024年1月23日(火)~4月7日(日) 所蔵作品ギャラリー 所蔵作品展「MOMATコレクション」 ギャラリー4 コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」 2024年2月6日(火)~4月7日(日) 企画展ギャラリー 「中平卓馬 火―氾濫」

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