展覧会

会期終了 所蔵作品展

所蔵作品展 MOMATコレクション

会期

会場

東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー

2021年3月23日-5月16日の所蔵作品展のみどころ

 MOMATコレクションにようこそ! 今年も、千鳥ヶ淵の桜が美しい季節を迎えます。これにあわせて、3階10室では重要文化財の川合玉堂《行く春》をはじめ、桜を描いた名作が、みなさんをお迎えします。
 今年の春はまた、東日本大震災から10年の節目でもあります。当館では、震災から間もない2011年5月から、コレクション展のなかで「東北を思う」という特集を組み、その後も何度か継続してきました。今回は「東北を思う」の展示を振り返り(作品に付された水色のキャプションは2011年当時の解説です)、また震災をめぐる新しい収蔵品もご紹介します。
 さらに、1階で開催の「あやしい絵」展に関連して、4階2室で「物語る絵」、3室で「絵画と生命」、5室で「「猟奇」と「尖端」の時代」を、2階ギャラリー4では写真における幻想的な傾向を集めた「幻視するレンズ」を、それぞれ特集します。
 今期も盛りだくさんのMOMATコレクション。どうぞごゆっくりお楽しみください。

今会期に展示される重要文化財指定作品

今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。

  • 原田直次郎 《騎龍観音》(1890年) 寄託作品(護國寺蔵) |4階1室ハイライト
  • 萬鉄五郎《裸体美人》(1912年)|4階3室
  • 岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》(1915年)|4階1室ハイライト
  • 中村彝《エロシェンコ氏の像》(1920年)|4階3室
  • 和田三造《南風》(1907年)|4階1室ハイライト
  • 川合玉堂《行く春》(1916年)|3階10室

6点の重要文化財(1点は寄託作品)についての解説は、名品選をご覧ください。

展覧会構成

4F

1室 ハイライト
2-5室 1900s-1940s 明治の終わりから昭和のはじめまで

「眺めのよい部屋」

美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。

「情報コーナー」

※MOMATの刊行物や所蔵作品検索システムは、現在ご利用いただけません。

1室
ハイライト

アンリ・ルソー
《第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神》1905-06年

 3,000m²に200点以上が並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。その冒頭を飾るのはコレクションの精華をご覧いただく「ハイライト」です。
 まずは桜の季節にあわせ、菊池芳文《小雨ふる吉野》がみなさんをお迎えします。この他にも、花を描いた名作が3階10室に特集されていますので、あわせてお楽しみください。
 また、10年前の震災を機に特集した「東北を想う」を振り返り、被災地にゆかりのある作家として、横山大観、菱田春草、高村光太郎、佐藤朝山、萬鉄五郎の作品をご紹介します。
 この他にも、重要文化財の原田直次郎《騎龍観音》や和田三造《南風》をはじめ、セザンヌ《大きな花束》、アンリ・ルソー《第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神》など当館を代表するおなじみの作品を展示します。

2室
物語る絵画

中沢弘光《かきつばた》1918年

 1階で開催の「あやしい絵」展で展示されている作品の多くには、文学との深い関わりを認めることができます。この部屋でも、文学作品からインスピレーションを受けたり、物語の一場面を表そうとしたりした作品をご紹介します。中心となる画家は中沢弘光と中村不折。黒田清輝ゆずりの穏やかな外光表現を得意とした中沢は、物語の一場面を表す上で光の効果に工夫をこらしています。一方で、フランスでローランスに厳格なアカデミックな教育を受けた中村不折は、正確な人体デッサンを重視しながら物語の一場面を描こうとしましたが、一方で文人趣味も兼ね備えた彼は、《桂樹の井(龍宮の婚約)》においてはあえて人物を素朴に描くことで古代神話の世界を表そうとしています。この海幸・山幸の物語を、前田青邨も絵巻の形式で描いていますので、ぜひ比べてみてください。絵巻では時間の経過が表されていますが、波や魚の群れ、竜宮の女性たちの連なりから生み出されるリズムは、見る者の視線を先へと促す推進力を生み出しています。

3室
美術と生命

中村彝《エロシェンコ氏の像》1920年

 彫刻家で詩人の高村光太郎は、1913(大正2)年の文展に対する評のなかでこう記しています。「私は作品の生命の有無をみて、直に其の作者の生(ラヸイ)の有無を見る事が出来る。又作家の生(ラヸイ)の有無を見て直に、其の作品の価値の有無を想像する事ができる」。 高村の言う「生命」とは、描かれた(作られた)対象が生き生きとして見えることではありません。それは、芸術家の内面にある目に見えない何かが表現されているということだったのです。
 大正の芸術運動はこの「生命」の表出を軸に展開しました。タッチがこれに直結するといわんばかりの萬鉄五郎や、絵を完成させることすらなおざりに強い感情を表現した関根正二などがいます。岸田劉生は「細密描写」で写実の美が表れるとしたら、それは画家の内面にある「内なる美」が自然の有形の現象と一致したときだと語りました。
 「生命」が芸術の中心に位置していた時代、芸術家たちの現実の生命はさまざまな疾病ととなりあわせでした。この部屋に並ぶ作品の作者たちは皆、意外に思われるほど早くに亡くなっています。

4室
地震のあとで

小泉癸巳男《「昭和大東京百図絵」より
87.羽田国際飛行場》1937年

 1923(大正12)年9月1日に起こった関東大震災は東京に壊滅的な被害を与えました。この未曾有の災厄に直面して、表現者たちはどのような行動に出たのでしょうか。十亀広太郎は都内各所を訪ねながら、火災で焼けた樹木や、倒壊した建物、被災者の暮らしぶりを丹念に描きとめました。写真による記録が様々な誌面の震災特集号に掲載される一方、画家はフィクションを介して写真とは異なる臨場感を表現しようと努めました。震災からの復興の過程では「新東京」と題した作品やシリーズが登場し、急速に近代都市へと変貌を遂げつつあった東京の「再生」が印象づけられます。「新東京」で描かれた対象には、百貨店、劇場、鉄道、ラジオ放送局など、人と物と情報が行き交う都市のメディアとしての機能に着目したものが少なくありません。そう考えると、雑誌や絵葉書から収集した出自の異なるイメージをモンタージュする古賀春江《海》(5室に展示中)の絵画空間も、新しく生まれ変わった都市の活力を映し出していると言えそうです。

5室
「猟奇」と「尖端」の時代

古賀春江《海》1929年

 1階で開催の「あやしい絵」展の中心となるのは大正時代のデカダンスな傾向ですが、それに続く昭和初期にも、関東大震災から復興して近代化の進む東京を中心に「エロ・グロ・ナンセンス」とよばれる独特な都市文化が花開きました。カフェ文化、モダンガール、モダンボーイ、次々と紹介される海外の珍しい風俗……。1931年に刊行された『現代猟奇尖端図鑑』(新潮社)は、そうした傾向を幅広く紹介した一冊ですが、その中で美術における「尖端」としてモンタージュの技法が紹介されています。写真の一部を切り抜き、大胆に組み合わせて斬新なイメージを生み出す技法です。
 古賀春江は、このモンタージュの手法を油絵に応用していました。古賀の制作プロセスを探っていくと、当時のさまざまな印刷物を引用しながら画面を構成していたことがわかります。ここでは古賀の《海》(1929年)を中心にその関連資料を展示するとともに、同時代の都市生活を表現した作品や幻想的傾向の作品もご紹介します。

3F

6-8室 1940年代-1960年代 昭和のはじめから中ごろまで
9室 写真・映像
10室 日本画
建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》

6室
もはや戦後ではない

間所紗織《女(B)》1955年

 1956(昭和31)年の経済白書に記述された「もはや戦後ではない」という言葉は、この年の流行語となりました。これは終戦から11年を経て、日本経済が1930年代半ばの水準にまでようやく回復したことを表しています。終戦から約10年で、過去でなく未来を向くこのような言葉が流行したことは、4室「地震のあとで」でご紹介した関東大震災(1923年)とその復興の構図と似たところがあります。関東大震災では、7年後の1930年頃に「帝都復興展覧会」や「帝都復興祭」など、「復興の達成」(もはや震災後ではない?)をアピールするイベントがあいつぎました。約10年という区切りは、出来事(天災にしても人災にしても)に人々が眼を向け、さまざまに想起するタイミングであると同時に、以降、忘却や風化が急速に進み始める転換点なのかもしれません。
 この部屋では、戦時中に描かれた作戦記録画(戦争記録画)と、戦後十年となる1955年頃に制作された作品をあわせて紹介し、10年という時間について考えてみます。

7室 1950–60年代― 版表現の探究と挑戦

 第二次世界大戦後、活発化する美術交流の中で開かれた国際美術展で棟方志功、駒井哲郎ら版画家の受賞が重なったことから、版画は一気に美術界の注目を浴びることになりました。こうした版画高揚の機運も手伝って、1957年には第1回東京国際版画ビエンナーレ展が開かれます(1979年まで全11回開催)。興味深いのは、出品者たちが欧米で高評価を受けた伝統木版画に固執しないばかりか、明治末以降、画家が一貫して制作に携わることで自己表現を獲得しようとした創作版画運動の殻も破って、現代絵画としての版画の確立を目指したことです。版画家以外の美術家や無名に近い若手も加わったほか、木版以外の版種にも目を向け、新鮮で多様な表現の開拓へと向かいました。
 今期はこうした流れの一端を、独立自主と自由な精神のもとでの制作を重んじた、瑛九を中心としたデモクラート美術家協会出身の画家たちと、木版画の抽象表現に取り組んだ日下賢二と吹田文明の作品に見ていきたいと思います。

8室 1970–80年代の版表現― 拡張する版概念のなかで

 1960年代末頃から印刷技術の革新や現代美術の動向と連動して、リトグラフやシルクスクリーンが増加し、写真製版も採用されるなど、版表現は著しく多様化することになりました。版の概念が拡散し混迷したこの時代、「版画とはいったい何か」という問いが提起されるようになりました。一方、大学に版画専門コースができたり、版画工房も増えたりして、画材や制作器具、プレス機の整った環境のもとで、技法を修得し、制作できるようになっていきます。版画家たちはそれぞれ、技術的な専門性に立脚し、版画の手法それぞれの特性や制作プロセスを吟味して、清新な造形表現を目指しました。
 ここでは版の特性に着目しながら、斬新な切り口で作品を制作した榎倉康二や高松次郎と、当時盛んだった写真イメージを活用した版画を中心に取り上げます。同時代の社会や美術と関わりながら展開した版表現の一端をご覧ください。

9室「北へ―北井一夫、 森山大道、須田一政」

 1970年代、日本の写真界には地方への旅をモティーフとする一群の忘れがたい作品が現われました。なかでも東北地方は多くのすぐれた作品の舞台となりました。今回は北井一夫「村へ」、森山大道「遠野物語」、須田一政の「風姿花伝」という、当時のそうした動向を代表する作品を紹介します。
 それまで都市を舞台に時代の大きなうねりと向かいあってきた写真家たちの関心が、70年代に入り、特別なできごとや場所ではなく、淡々と続く日常や、そこに積み重ねられる記憶といったものへと向かいはじめます。写真家たちが見つめた、変わりゆくものと変わらないもの。そこには、時代の流れのなかで消えていったものだけではなく、今日の私たちにとっても、地続きのものとして感じられるような何かが現われています。
 この特集は東日本大震災をうけて当館所蔵品展で開催された「東北を思う」という連続企画の一部として、2011年7月から9月に展示した小企画を、一部作品を入れ替えて再構成したものです。震災から10年、そしてコロナ禍にある今、これらの「日常」をめぐる写真家の仕事に、あらためて注目したいと思います。

10室 春まつり

 毎年恒例となった「美術館の春まつり」の作品を今年はすこし多くして、この10室に花を描いた作品を集めてみました。剣持勇のラタン・スツールや清家清の移動式畳に腰かけて、ゆっくりと春をお楽しみいただこうという趣向です。
 春まつりの定番となっている川合玉堂の《行く春》(重要文化財)もこの部屋で公開しています。この作品には長瀞の春の光景が描かれていますが、水辺の桜が散りいそぐ風情は、ここから歩いて行ける千鳥ヶ淵とも通じ合います。また、跡見玉枝の《桜花図巻》に描かれるのはさまざまな種類の桜たち。全25図に40種類を超える希少な桜が描かれています。このなかには、しだれ桜、うこん桜、おおしま桜といった、当館から旧工芸館へと続く紀伊国坂に沿って、次から次へと開花時期を迎える桜たちも含まれています。春の一日、絵のなかの桜と、館の外の桜の競演をお楽しみください。

公式ウェブサイト

2F

11–12室 1970s-2010s 昭和の終わりから今日まで

 *ギャラリー4(13室)

コレクションによる小企画幻視するレンズ」(2021/3/23-2021/5/16)

11室 東北を思う― 記憶・再生・芸術

「2011年3月の震災を受け、当館ではこの1年の間、所蔵作品展において「特集 東北を思う」シリーズを継続して行ってきました。ひとまずの区切りとなる2012年1–5月の今期では、「東北を思う― 記憶・再生・芸術」と題する特集を、ここ2階において行います」。これは2012年、当館コレクション展内で行われた小企画に際して、会場に掲出された文章からの引用です。東日本大震災直後に始められたシリーズ企画のふたつめにあたるものでした。
 今回この部屋では、「東北を思う―記憶・再生・芸術」の展示を部分再現するかたちでご紹介します(当時書かれた解説もそのまま掲出します)。2011年を通して行われた最初の「東北を思う」は、瞬発的に何かしなければ、という衝動に駆られたような性格を持つ企画でした。対して、この「東北を思う―記憶・再生・芸術」のテーマ立てや作品の選択は、同じシリーズながら、1年という時の流れを感じさせます。1年後、10年後、時間の経過を想像しながら、それぞれの作品をご鑑賞ください。

12室「地震のあとでー東北を思うⅢ」のあとで

「2011年3月11日から3年が経ちました。当館は、コレクション展内において、2011年5月に「特集 東北を思う」を、2012年1月に「特集 東北を思う―記憶・再生・芸術」を開催してきました。3回目となる今回は、地震と津波と福島第一原子力発電所事故の後に、アーティストたちがどのように動き、どのように被災地に寄り添ってきたか。また浮かびあがってきた様々な問題にどのように向き合ってきたのかに注目しました。」
 これは2014年、当館コレクション展内で行われた小企画に際して、会場に掲出された文章からの引用です。前二回の「東北を思う」と異なっていたのは、東日本大震災を直接扱う作品をはじめて紹介した点にあります。
 今回この部屋のおよそ半分のスペースで、この「地震のあとで―東北を思うⅢ」の展示を部分再現のかたちで紹介します。そしてもう半分のスペースでは、震災に直接関係する作品に限らず、当館が近年収蔵した、2014年以降に制作された作品をご紹介します。

ソル・ルウィット壁画公開

開催概要

会場

東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F-2F)会期:2021年3月23日(火)-5月16日(日)*終了いたしました

開館時間

10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)
*臨時夜間開館日:5月12日(水)-16日(日)は20:00まで開館いたします
*入館は閉館30分前まで休室日:月曜日[ただし2021年3月29日、2021年5月3日は開館]、5月6日(木)
*臨時休館期間:4月25日(日)~

チケット

会場では当日券を販売しています。
会場の混雑状況によって、当日券ご購入の列にお並びいただいたり、入場をお待ちいただく場合がありますので、オンラインでの事前のご予約・ご購入をお薦めいたします。

新型コロナウイルス感染症予防対策のため、 ご来館日時を予約する日時指定制を導入いたしました。
こちらから来館日時をご予約いただけます。

※上記よりチケットも同時にご購入いただけます。
※観覧無料対象の方(65歳以上、高校生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名、招待券をお持ちの方等)についても、上記より来館日時をご予約いただけます。
※お電話でのご予約はお受けしておりません。

観覧料

一般 500円 (400円)
大学生 250円 (200円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。5時から割引(金曜・土曜):一般 300円 
大学生150円
※高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。
「友の会MOMATサポーターズ」「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。

「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ)

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