の検索結果

の検索結果

戯れ

No image

調べ方ガイド(パスファインダー)

ここでは、あるテーマについて調べる際に役立つ情報を紹介しています。 現代の眼(アートライブラリ) 連載企画「研究員の本棚」「カタログトーク」「資料紹介」をご覧いただけます。 美術文献ガイド 7th ed. 2023.2.17 この美術文献ガイド(通称:美的工具書)は、東京国立近代美術館アートライブラリが所蔵する資料を紹介しながら、美術文献へのアクセスを解説するものです。アートライブラリのスタッフが自己研修の一環としてまとめました。 書名・雑誌名等の下線部分をクリックすると東京国立近代美術館OPACの書誌所蔵詳細画面へリンクします。書誌事項末尾の[ ]は、アートライブラリの資料請求記号です。なお、外部機関が作成したサイトについては、原則としてURLを()内に表記しています。 改訂履歴 6th ed. 2019.10.11, 5th ed. 2019.04.27, 4th ed. 2018.04.12, 3rd ed. 2015.03.28, 2nd ed. 2010.07.01, 1st ed. 2003.05.20. 外部リンクに関する免責 当ページでは、多数の外部サイトのURLを明示しております。ご利用者様がリンク先で被った損害について、一切の責任を負いません。ご自身の責任においてご利用ください。 アーカイブズ アーカイブズとは、東京国立近代美術館アートライブラリに寄贈された、作家や画廊、研究者の旧蔵書を中心とする資料群で、それぞれのまとまりを維持したまま保存しているものを指します。図書館では、特殊コレクションとも呼ばれます。 レファレンス共同データベース 「データ一覧」より、過去のレファレンス事例をご覧いただけます。 リストやリンク集

所蔵作品展 MOMATコレクション(2025.2.11–6.15)

2025年2月11日~6月15日の所蔵作品展の見どころ 清宮質文《深夜の蝋燭》1974年 MOMATコレクションにようこそ!  当館コレクション展の特徴をご紹介します。 まずはその規模。1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展です。そして、それぞれ小さなテーマが立てられた全13室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示です。 今期の見どころ紹介です。4階5室の「シュルレアリスム100年」では、20世紀芸術における最大の動向を、国内外の作品でたどります。3階10室では、前期は春の花を描いた作品を集めた「春まつり」、後期は細密描写によって見えるものの先に迫った日本画家の作品を展示します。2階ギャラリー4の「フェミニズムと映像表現」では、ジェンダーによって生じる不均衡を描き出す女性のアーティストの映像作品をご紹介します。 今期も盛りだくさんのMOMATコレクション、どうぞお楽しみください。  今会期に展示される重要文化財指定作品 今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。 1室 原田直次郎《騎龍観音》1890年、寄託作品、護国寺蔵 10室 川合玉堂《行く春》1916年(展示期間:2025年2月11日~4月13日) 10室 村上華岳《日高河清姫図》1919年(展示期間:2025年4月15日~6月15日) 原田直次郎《騎龍観音》1890年、寄託作品、護国寺蔵 川合玉堂《行く春》1916年(左隻) 村上華岳《日高河清姫図》1919年 展覧会について 4階 1~5室 1880s–1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで 「眺めのよい部屋」 美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。 「情報コーナー」 導入部にある情報コーナーには、MOMATの歴史を振り返る年表と関連資料を展示しています。関連資料も随時展示替えしていますのでお見逃しなく。作品貸出中の他館の展覧会のお知らせや、所蔵作品検索システムも提供しています。 1室 ハイライト ナターリア・ゴンチャローヴァ《スペイン女》1916–20年 3000㎡に200点以上が並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。「ハイライト」では近現代美術を代表する作品を揃え、当館のコレクションの魅力をぎゅっと凝縮してご紹介しています。日本画のコーナーでは、前期(2月11日~4月13日)は、小林古径や土田麦僊、鈴木主子らによる、春の訪れを感じさせる作品が並びます。後期(4月15日~6月15日)は、新緑の季節にぴったりの川端龍子の作品がみなさまをお迎えします。ところで今回並ぶ日本画は、着物の模様やパターン化された植物など、装飾的なものが多いのですが、油彩画も、具象的なモチーフが装飾的に描かれた作品や、装飾的なエレメントが抽象へと展開した作品を集めてみました。隣に並んだ作品どうしのつながりや違いにも注目しながら、ハイライトをご堪能ください。 2室 風景の発見 織田一磨《憂鬱の谷》1909年 当館は昨年度、織田一磨の水彩画6点をご寄贈いただきました。そのお披露目にあわせ、2室では主に明治後期の風景画を紹介します。従来の日本では、風景画といえば山水画や名所絵など、観念的・様式的なイメージに従った表現が主流でした。しかし明治期に入ると、西洋画法や紀行文の普及とともに実景をありのままに捉える近代的な自然観が定着し、画家は自らの足で名もなき風景を「発見」していくようになります。そうしたなかで、大下藤次郎による水彩画の入門書『水彩画之栞』(1901年)がベストセラーになるなど、この時代には水彩画が大衆も巻き込んだ一大ブームを迎えました。また日本画においても、実景に取材した現実味のある風景が描かれはじめました。都市を描いた版画で知られる織田も、先達の影響を受けて初期には水彩画を手掛けています。東京各所の自然風景を中心に取り上げつつも、《高田の馬場附近》などの作品からはその後の版画にも繋がる都市風景への関心が垣間見えます。 3室 抒情と頽廃 有馬さとえ(三斗枝)《赤い扇》1925年 大正のはじめに京都から東京に移った画家の秦テルヲは、日記の中で、親しい友であった戸張孤雁について次のように綴っています。「自分が初めて東上して作品を発表した時に観に来た時にフト談笑し合って ソレ以来、ローマンチックな彼男(戸張)とデカダンな自分(秦)とが不思議にも親しみ合った」。ここに記されたロマン(抒情)とデカダン(頽廃)は、彼らが生きた大正という時代そのものを覆っていたムードでした。そんな彼らがともに愛したのが浅草という町です。当時の浅草には、浅草十二階と呼ばれた展望塔「凌雲閣」の下に、芝居小屋や曲芸小屋、劇場、映画館が立ち並び、東京随一の繁華街として賑わっていました。画家たちは、この町の周縁に生きる人々に共感を寄せ、その姿を描き出しています。やがて、関東大震災により凌雲閣は倒壊し、新たな娯楽街となった銀座や新宿へと人は流れてゆきました。ここでは、東京の盛り場の移ろいを示すとともに、大正期の抒情と頽廃を伝える作品を展示します。 4室 モダニズムのかたち―1920~30年代の立体作品 陽咸二《或る休職将軍の顔》1929年 第一次世界大戦終結から第二次世界大戦勃発まで、日本では大正後期から昭和初期にあたる1920~30年代は、旧来からあった美の枠組みにとらわれない様々な表現が追求された時代です。彫刻分野では、感情や生命感を表出するような表現やロダンの影響から離れ、大胆なデフォルメ(対象を変形して表現すること)や形体の単純化を伴う作品が現れました。また、この時代は、大阪、東京などに適用された都市計画法が1920年に施行され、1923年の関東大震災後の復興も手伝って、急速に都市化が進み、生活面にも西洋化が浸透し、文化の大衆化も進みます。都市のモダンな文化と連動して、建築、工芸、デザインなどとも接点を持つ、多様な造形も生まれました。「彫刻の社会化」をスローガンに掲げて、実用を視野に入れた応用彫刻への取り組みに力を注いだ「構造社」で活動した、陽咸二や荻島安二の作品に、その一端を見ることができます。 5室 シュルレアリスム100年 北脇昇《独活》1937年 2024年はフランスの詩人アンドレ・ブルトン(1896–1966)が『シュルレアリスム宣言』を発表してからちょうど100年を迎える節目の年にあたります。日本では「超現実主義」と翻訳されることもあるシュルレアリスムは、理性を排し、非合理的なものや無意識の領域の可能性を探求した20世紀最大の芸術運動です。第一次世界大戦の最中に生まれたダダを経て、パリを拠点として国際的に広まったシュルレアリスムは、長年にわたって様々な芸術に影響を与えました。日本では、批評家・詩人の瀧口修造(1903–1979)や洋画家の福沢一郎(1898–1992)らを通して、初期の頃からシュルレアリスムの動向が伝えられました。また、第二次世界大戦下、ナチス・ドイツによる迫害を受けたシュルレアリストの一部メンバーはアメリカに亡命し、同地で活動を続け、戦後アメリカの美術に影響を与えたと言われています。ここでは、シュルレアリスムの代表的な作家として知られるマックス・エルンスト(1891–1976)や、イヴ・タンギー(1900–1955)の作品を起点に、日本やアメリカへと広まったシュルレアリスムの展開を作品や資料を通してご紹介します。 3階 6~8室 1940s–1960s 昭和のはじめから中ごろまで9室  写真・映像10室 日本画建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》) 6室 「相手」がいる 宮本三郎《山下、パーシバル両司令官会見図》1942年(無期限貸与) 戦争。そこには常に相手がいます。戦時下において、人は敵対する国の人々をどのように捉えているのでしょうか。第二次世界大戦中、日本の画家たちは戦意高揚に貢献する絵画を制作し、展覧会に出品しました。当館が保管する戦争記録画において、敵の姿は不在であることが多く、主として戦地で戦う日本軍兵士の勇姿が描かれています。このようなイメージは、傷つき、苦しむ敵の身体を不可視化する効果を持っています。一方で、戦争記録画の中では珍しい表現ですが、アメリカやイギリス、オランダなど、連合国の軍人を描いた作例もあります。画家たちは、戦中の日本が敵対していた「欧米列強」の敗北の場面を描くことで、日本軍の優勢を示そうとしました。この部屋に展示されている作品の構図や人物描写、塗り分けには、主題に合わせて両者を描き分けようとする画家の作為が見え隠れしています。日本軍の残虐行為や迫害、捕虜に対する非人道的な扱いは、のちに極東軍事国際裁判(東京裁判)やBC級戦犯裁判などで、戦争犯罪として裁かれました。今日的な視点から見ると不適切な表現も含まれますが、戦時下の日本人画家による連合国軍の描き方を示す作品として展示しています。 7室 清宮質文 清宮質文《九月の海辺》1970年 戦後日本を代表する木版画家・清宮質文(せいみや・なおぶみ)は、1950年代より木版画の制作に取り組みました。戦後の復興を経て、高度経済成長期の日本では新しい技法などを用いた実験的な版表現が主流になっていきますが、清宮はそのような美術動向と距離を置き、透明感あふれる繊細な木版を追求しました。清宮にとって、版画は複製を前提とした芸術ではありませんでした。色調や摺りの加減を1点ずつ緻密に調整して制作された作品からは、精魂をこめて版を重ねる清宮の息遣いすら伝わってくるようです。その詩情豊かで内省的なイメージは、多くの人々を魅了し続けています。この部屋では、昨年度新たに収蔵した清宮の1970年代の代表作のほかに、同世代の版画家として深い親交を結んだ駒井哲郎、清宮を高く評価した岡鹿之助、長年交流のあった脇田和、野見山暁治の作品を紹介します。清宮が大きな影響を受けたパウル・クレー、ベン・ニコルソン、恩地孝四郎の名品と合わせてお楽しみください。 8室 反復がもたらすもの 李禹煥《点より》1977年 7室からこちらに移動する前に、「建物を思う部屋」のソル・ルウィット《ウォール・ドローイング#769》(1994年)はご覧いただけたでしょうか? ミニマル・ミュージックを思わせるような、図形の反復とずれによって生み出されるリズムが特徴的な作品です。本作から繋げる形で、8室では反復の構造を持つ1960~70年代の作品を紹介します。この時期、イメージを表現するという従来の絵画の枠組みを問い直すように、同一パターンの反復で画面全体を構成する作品が登場しました。システマティックな反復が無機質な印象をもたらす一方で、そこに生じるわずかなずれや差異に目を凝らしてみると、反復的な行為を重ねる作家の身体性が浮かび上がってきます。版画では、もとは商業的な技術であったシルクスクリーンを利用して同一のイメージを反復させる表現が生まれました。私たちが対象を認識するプロセスそのものを掘り下げるこれらの作品は、情報化社会においてイメージが氾濫する状況とも密接に呼応しています。 9室(前期:2025年2月11日~4月13日)須田一政「風姿花伝」 須田一政《「風姿花伝」より 神奈川・三浦三崎 》1975年(展示期間:2025年2月11日~4月13日) 「風姿花伝」は、『カメラ毎日』誌に1975年12月号から77年12月号まで、8回にわたって不定期連載された連作です。78年には写真集にまとめられました。連載中の76年に日本写真協会賞新人賞を受賞するなど、須田一政の評価を確立した作品として知られます。作品全体を通じて眼を引く伝統的な祭礼の光景は、関東周辺から北陸、東北まで、日本各地で撮影されています。つまりこれらは旅の写真でもあるのです。旅も祭礼も、非日常的な時間であり空間です。だとすれば「風姿花伝」の作品世界とは、非日常的な時空と言えるのでしょうか。ところが、写真家自身は初期から一貫して、「日常」を撮っていると言うのです。「わたしにとって緊張感のある光景は、なんの変哲もない日々の中に転がっている」(写真集『人間の記憶』)のであり、むしろ旅先であっても、近所であっても、同じように反応してしまう何かを探し続け、シャッターを切っているのだと。表題の「風姿花伝」は、15世紀の初頭、世阿弥が記した能の理論書から採られています。 9室(後期:2025年4月15日~6月15日)渡辺兼人「既視の街」 渡辺兼人《「既視の街」より[9]》1980年(展示期間:2025年4月15日~6月15日) 「既視の街」は1980年、金井美恵子の小説と渡辺兼人の写真によって構成された同題の書籍において発表されました。翌年、渡辺は本作による個展を開催し、木村伊兵衛写真賞を受賞します。主に東京とその近郊で撮影された本作において、渡辺は、それまでの作品での演出を含む表現から離れ、静かで淡々とした即物的な描写に徹しています。にもかかわらず、そこに現れた都市光景はどこか謎めいて見えます。木村伊兵衛賞の審査員の一人、小説家の安部公房は「どの光景も奇妙に過充電されていて、近づけた眼球に放電の火花が刺さってくる感じだ。日常を見る生理はさりげなく日常的に維持したまま、反日常が滲み出す亀裂や穴を確実にとらえている」と評しています。そもそもタイトルも謎めいています。「既視」とは作者自身が「既に視た」ということなのか、それともどこにレンズを向けようとも、そこは誰かが「既に視た」光景だということなのか。この連作において、渡辺は19世紀末から20世紀初頭のパリの街を撮り続けたウジェーヌ・アジェの仕事を意識していたと語っています。 10室(前期:2025年2月11日~4月13日)アルプのアトリエ/春まつり ジャン(ハンス)・アルプ《新芽あるいは果実》1961–64年頃(原型:1961年)撮影:Rüdiger Lubricht, Worpswede ©Stiftung Jean Arp und Sophie Taeuber-Arp e.V. 川合玉堂《行く春》1916年(左隻)、重要文化財(展示期間:2025年2月11日~4月13日) 手前のコーナーでは、ジャン(ハンス)・アルプ(1886–1966)の彫刻制作過程でつくられた石膏複製をご紹介します。フランスのストラスブールに生まれ、20世紀初頭からパリやスイスで活動したアルプは、抽象と具象を往還する有機的なフォルムの彫刻で知られます。ここでは、アルプにとって新たな造形を発見するための重要な素材であった石膏を通して、彫刻のフォルムがどのように移り変わっていったのかをご紹介します。奥の部屋では、恒例の「美術館の春まつり」に時期を合わせ、花を描いた作品を集めました。剣持勇のラタン・スツールや清家清の移動式畳に腰かけて、ゆっくりと春をお楽しみいただく趣向です。定番となっている川合玉堂の《行く春》(重要文化財)に描かれた、水辺の桜が散りいそぐ風情は、ここから歩いて行ける千鳥ヶ淵とも通じ合うところです。また、美術館前の道沿いに咲くさまざまな桜は、跡見玉枝が《桜花図巻》に描いた40種を超える桜のなかに見つかるかもしれません。 10室(後期:2025年4月15日~6月15日)アルプのアトリエ/見えるもの、その先に ジャン(ハンス)・アルプ《鳥の骨格》1968–74年頃(原型:1947/1965年)撮影:Rüdiger Lubricht, Worpswede ©Stiftung Jean Arp und Sophie Taeuber-Arp e.V. 速水御舟《渓泉二図》1921年(左幅)(展示期間:2025年4月15日~6月15日) 手前のコーナーでは、ジャン(ハンス)・アルプ(1886–1966)の彫刻制作過程でつくられた石膏複製を紹介します。フランスのストラスブールに生まれ、20世紀初頭からパリやスイスで活動したアルプは、抽象と具象を往還する有機的なフォルムの彫刻で知られます。ここでは、アルプにとって新たな造形を発見するための重要な素材であった石膏を通して、彫刻のフォルムがどのように移り変わっていったのかを紹介します。奥のガラスケースのコーナーでは、コレクションのなかから、速水御舟、村上華岳、徳岡神泉の三人の日本画家の作品を中心に紹介しています。三人の共通点は、大正時代の一時期に細密に描く写実表現に取り組んだことです。かれらは、現実そのもののなかに人智を超えた存在の核心をとらえようとし、細密描写を離れたのちは、別の手立てでそれを象徴しようとしました。かれらの思惑は、現実のなかに神秘をとらえようとする1910年代の思潮とも一致するようにも思えます。 2階 11~12室 1970s–2020s 昭和の終わりから今日まで 11室 (アン)バランス 遠藤利克《欲動―近代・身体》1997年 当館では2022年度に、遠藤利克《欲動―近代・身体》の修復を行いました。その報告を兼ねて、水を使用するというこの作品の特徴にちなんだ所蔵品を紹介します。美術館内で水や食べ物がご法度なのは、万一カビや虫が発生すれば作品の保存に支障をきたすためです。持続的な安定のために、美術館は不安定な要素を取り除くのです。その一方で、たゆたう自然や、水のように変化する流体は、いつの時代も美術家たちのインスピレーション源となってきました。そして、静止しながらも不安定な動きを作品内に導くというチャレンジに取り組むアーティストは少なくありません。この部屋に集めたのは、そうした企図の顕著な作品です。台座からずり落ちるような動きを鉄に演じさせるアンソニー・カロ、絵具のにじみを活かすイケムラレイコや丸山直文、そして水そのものを素材とする遠藤利克。不安定なものの追求は、原則として安定したものしか扱えない美術館の制度を、ときに試すことにもなります。 12室 美術家たちのダークツーリズム 太郎千恵蔵《少年》1998年 1990年代以降の作品を集めてみました。特に90年代の美術作品を眺めてみると、戦争を中心として社会的な暗部を描き出した作品が多々あることに気づきます。この時期、社会を揺るがす重大な事象が立て続けに起こりました。ベルリンの壁崩壊(89年)、湾岸戦争の勃発とソ連崩壊(91年)、そしてインターネットの本格的普及。日本国内では昭和から平成への改元(89年)、バブルの崩壊や、阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件(95年)などが思い浮かびます。ダークなテーマに対する美術家たちの共通した関心は、世間を覆う一種の終末観を敏感に察知した現れであったといえるでしょう。ただしそれは必ずしも悲観的な視点ではなく、当時流行した「ポストモダン」の語が示す通り、直線的な進歩を念頭にした近代的歴史観を克服するチャンスであるという期待もはらんでいました。玩具やアニメーションを大胆に反映した表現で、国際舞台に躍り出る日本人作家たちが続々と登場し始めたのもこの頃です。 開催概要 東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4~2階) 2025年2月11日(火・祝)~6月15日(日) 月曜日(ただし2月24日、3月31日、5月5日は開館)、2月25日、5月7日 10:00–17:00(金・土曜は10:00–20:00) 入館は閉館30分前まで 一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込み。 5時から割引(金・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名まで。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、フェミニズムと映像表現(ギャラリー4)もご覧いただけます。 5月18日(国際博物館の日) 東京国立近代美術館

No image

令和6年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Eさん このインターンに応募した動機として、元々自分の所属大学に設置されている作品資料の管理施設でのアルバイトの経験があり、そのような資料整理・作品保存といった学芸員の業務に関心があったこと、そして東京国立近代美術館の豊富な所蔵作品がどのように管理・運営されているのか実践的に学びたいと考えたことです。 業務では、最初に作品シートの記入や書類整理、倉庫内の清掃など、日常のルーティンワークを経験しました。こうした日々の業務を経験することで、細かな日々の作業が美術館の運営を支える重要な役割を果たしていることを実感しました。 また、コレクション展の展示替えにも関わらせていただきました。単に作品を入れ替えるだけでなく、作品の水平さを細かく確認したり、展示室のライティングを微細に調整するなど、展示には細やかな作業が求められることを実践的に学べました。展示はただ並べるだけではなく、作品を最適な状態で見せるための工夫が細部まで行われていることを実感しました。作品を直接触る機会はそこまでありませんでしたが、それでも一部の作品の梱包を実際に行わせていただきました。 この経験を通じて、美術館での仕事に対する理解が深まり、自分のキャリアビジョンもより明確になりました。この1年間、学芸員の業務という大変貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。 A 学芸・コレクション Nさん 前年度にインターンをしていた美術館は所蔵作品を持たない館であり、所蔵作品の保存や活用といった美術館業務を学びたいと考えたことからコレクション部門のインターンへ応募しました。活動を通して、美術館におけるコレクションの扱い方やそれに伴う作業の内実、美術館の活動継続のために求められる視点などを学ぶことができたと振り返ります。 所蔵作品展の準備や展示替えの際はもちろん、作品の貸出・返却時や収蔵庫の整理の際にも美術館が作品という「もの」を扱う場所であることを改めて感じさせられました。作品の大きさや重さ、素材や状態によって常に様々な対応が要求されており、今まで具体的にイメージできていなかった、作品を扱うことの特徴を知りました。 また、学芸員の方々からご自身の経験を踏まえた様々なお話を伺うことができたことも貴重な時間で、自分はどのような学芸員になりたいかということを考えさせられる経験でした。さらに、美術館で働く際には研究や論文だけではなく、作品の扱い方や自分の眼と身体感覚に基づいた心地よい展示の実現といった、現場での経験でしか身に付けることのできない力も求められると実感しました。このインターンシップへの参加が私の学芸員を志す意志を一層強いものにしたことは間違いありません。お忙しい中でこのような機会を提供してくださった研究員の方々に改めて感謝申し上げます。 B 学芸・コレクション Yさん 2024年度、学芸・コレクション、写真室のインターンとして活動させていただきました。インターン活動に志望した動機として、写真に絞ったインターンは全国的に見てもなかなか得ることが出来ない機会であることに加え、そのような中で、13,000点以上の様々なジャンルの作品を収蔵する国立美術館という場所で、写真というメディアがどのように保存、管理され、活用されているかについて学びたいと考えた経緯がありました。 写真室での活動では、プリントスタディの準備や当日の補助(見学)、貸出作品および返却作品の点検、展覧会出展作品の額装と展示を終えた作品の片付け、作品を管理する作品カードの記入等々、様々な業務に関わらせていただきました。プリントを直接扱う作業は緊張しましたが、間近で見るプリントの美しさや、担当研究員の方から、作品の来歴や特徴などを作業の合間に教えていただいたことは強く印象に残っています。また、写真室の活動だけでなく、美術課全体の会議やコレクション展の展示替えの作業にも参加させていただき、研究員の皆さまが、日々どのようなことを目指し活動され、また研究をされているのか、間近で見ることが出来たことは何事にも変え難い経験でした。インターンの活動という非常に短い時間の中ではありましたが、多くの情報と経験をいただいたと感じております。このような貴重な機会をいただきましたこと、東京国立近代美術館の皆さまに改めて感謝申し上げます。一年間、ありがとうございました。 B 学芸・企画展 Kさん 美術鑑賞、美術展示作りおよび研究成果の展示による公開方法について実践的に学びたいと思い、本インターンシップに参加しました。 今年度に開幕した3つの展覧会を中心に、様々な経験をさせて頂きました。企画・広報に関する会議や展示作業の現場見学に加え、資料スキャニング、年譜まとめ、図面作成等の作業を通して、バックヤードでの仕事に実際に関わることができました。企画展示部門以外にも、美術館教育部門のイベント補助および学芸・コレクション部門の収蔵品作業見学を通して、美術館の全般的な活動について多面的に学ぶことができました。 企画展示部門の課題では、自身の展示を立案し、企画書・作品リスト・図面を作成しました。難しい課題でありながら、自身の興味あるテーマを深掘りする機会となり、中間および最終発表で学芸員の方々から貴重な指摘やコメントを頂きました。そのフィードバックのおかげで、選択したテーマを新しい観点から見ることができ、展示企画に関して深く勉強できました。 この一年間、東近美の学芸員および職員の皆様には丁寧かつ優しくご指導頂きました。皆様との交流を通じ、教室では得られない多くのことを学びました。美術館・博物館に関する知識および観点を大きく成長させることができ、学芸員を目指す私にとって非常に貴重な経験でした。心よりお礼申し上げます。 C 美術館教育 Iさん 1年間を通して、前半は主にボランティアであるガイドスタッフによる一般向けの所蔵品ガイド(対話鑑賞)や小中高の生徒が対話鑑賞を体験する学校受け入れプログラム、こども向けのイベント「こどもまっと」の見学・補助といった東近美の教育普及活動を学びました。対話鑑賞の見学では、参加者の自由な意見を聞きながら鑑賞することで作品がそれまでと全く違う姿で見えてくる体験に恵まれました。「こどもまっと」で関わったこどもと美術館の建物を探検する「MOMATまるごと探検隊」では、こどもの行動力・観察力において想像以上の感性豊かさに驚かされました。 対話鑑賞の準備に必要な資料を整理する作業にも携わり、ガイドスタッフがこれまで扱った作家や作品に関する資料を蓄積した作家ファイルは今後のガイドに役立つ重要なツールであることを学びました。 定期的に行われるガイドスタッフの例会やフォローアップ研修にも参加し、教育普及室との円滑な連携やガイドのスキルアップが図られていることを知りました。 後半では、前半に学んだことを活かし、一般向けの対話鑑賞の実践に取り組みました。サポートを受けながら、作品観察、作家ファイルを利用した作品知識の習得、流れを想定したプランに沿った実践練習を積み重ねて準備しました。実践を通じて、自由な対話を目的とした鑑賞の裏では綿密な準備が必要であること、鑑賞者の深い対話を促すための問いの投げ方の難しさを実感しました。 教育普及活動って何?からスタートしたインターン活動でしたが、様々なプログラムを体験させていただき、社会と美術館をつなぐひとつの架け橋となっていることを学びました。教育普及室をはじめとする職員の皆様、貴重な経験ありがとうございました。

第一ネオポップ時代——「美術家たちのダークツーリズム」によせて

ネオポップとは何か? ハル・フォスターは『第一ポップ時代』1においてリチャード・ハミルトンを例にあげながら、ポップは直感的に写真やテレビと絵画をひとつに折り重ねることによって現代の主題を前景化しつつ芸術の伝統を喚起させると言っている。抽象と表象のカテゴリーを合体させ、両方を壊乱させることによってイメージと主体にかかっていた力を逆照射する。ポップはポップなイメージで絵画に圧力をかけながらタブローという伝統を振り返る。それはボードレールの言う「一時的なものから永遠になるものを抽出」2することだ。 ドゥルーズは『シネマ』においてベルクソン的イメージを「出来事」という物にも認識にも回収されない場への提示として捉え、瞬時に消えてしまう「出来事」を、映画はその非継続性の連続性において「見えるもの」へと救いだし、「出来事」を可視化することで保存するという。当時私はドゥルーズの『シネマ』への返答としての(ゴダールの『映画史』のような)絵画を構想した3。 図1 太郎千恵藏《戦争(ピンクは血の色)》1996年、東京国立近代美術館蔵 30年たった現在からみると、ネオポップを「出来事」の「記録」として捉えなおしてみることができるだろう。ベルリンの壁の崩壊、湾岸戦争、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件などを経た90年代初頭、戦後復興によってやっと経済大国になったのも束の間バブル崩壊、といった冷戦の終わったあとの断片化された戦争の連鎖。ターナーの絵画の上にロボットとレンジャーをモンタージュした《戦争(ピンクは血の色)》[図1]は、マンガや特撮をターナーにモンタージュすることで虚構的現実を再構成し90年代という時代を前景化させた。 戦前の前衛運動マヴォには後に田河水泡になる高見澤路直や柳瀬正夢が、アクションには白土三平の父である岡本唐貴がいた。前衛美術家が戦前戦中を経て漫画と戦争画とプロレタリア美術に分かれ、それが戦後マンガの繁栄をもたらした。前衛美術と戦後マンガは連続性のなかにある。第一ポップ世代のリキテンスタインはインタビューで「ぼくの作品がキュビスムとリンクするのはマンガがキュビスムとリンクしているのと同じです」4と言っている。 1989年表参道の東高現代美術館でのジグマー・ポルケの大作が展示された展覧会5のオープニングのあと、歩いてすぐの私の実家を友人といっしょに小山登美夫が訪れた。私がムーミン型のグミを絵画に付けた作品を見せたところ、その場でその作品を買ってくれた。そのとき、小山がこの作品と偶然にも同じ発想で作品を作っている作家がいるから今度会わせると言って、後日会ったのが兵隊のフィギュアを樹脂に貼っていた(《ポリリズム》)同じ年の村上隆だった。それから3人で意気投合して芸術のこと映画のことマンガのことを毎日のように話し、新しい芸術の流れを作ろうと言った。以前は私と村上隆はアシスタントを共有する関係でもあり、彼のランドセルの作品のカラフルな色は、小山と3人で食事をしているときの「ジャスパー・ジョーンズの色彩にすべき」という私の発言が元になった。 図2 会場風景(左手前が村上隆《ポリリズム》1991年)|撮影:柳場大 91年にソーホーのギャラリーでデニス・オッペンハイムらと「見えない身体」展をおこない、92年からヨーロッパの5美術館でマイク・ケリー、ゴンザレス=トレス、ロバート・ゴーバーらと「ポストヒューマン」展に参加し、モーターというメディウムを使うポール・マッカーシーとマシュー・バーニーといっしょにモーターチームとして美術館をツアーした。93年にニューヨークのサンドラ・ゲーリングギャラリーでドレスの彫刻のインスタレーションによる個展を開催する。93年ケルンでの私の展覧会を訪ねて来た奈良美智を小山に紹介した。私は参加しなかったが94年のグッゲンハイム・ソーホーでの戦後日本美術の展覧会のあとで中原浩大と2人で飲んだのもいい思い出だ。 96年春に佐賀町の食糧ビルで小山登美夫ギャラリーのこけら落としとなる私の個展で、ターナーの《国会議事堂の火事》の上にウルトラヒーローをモンタージュした《経済の法則》を展示した。個展を見に来た中西夏之と意見を交わしたとき、中西は自分たちは「絵画は重力を感じさせてはいけないと言われてきた」と、私のペインタリーな垂らしについて語り、それに対し私は「キーファーも垂らしています」と答えた。その後ニューヨークのアトリエに杉戸洋が来たときにも垂らしへの違和感を指摘していた。私の絵画において、マンガや特撮の現代のポップなイメージと美術史的絵画を一体化するのにペインタリーであることは必要不可欠な要素だ。それによってストイキツァの『絵画の自意識』で書かれている美術史の流れの上に日本のネオポップの第一世代として「記録」を残せたのだ。 東京での個展のあと《戦争(ピンクは血の色)》をニューヨークで制作しサンドラ・ゲーリングギャラリーでの秋の個展に展示した。96年はみんなで「ヒニクなファンタジー」(宮城県美術館)などの展覧会を日本の美術館で複数おこない、食糧ビルのギャラリーで秋に村上隆は個展をし、奈良美智が翌年に個展を開催した。これが日本の「第一ネオポップ時代」であった。 註 1 ハル・フォスター、中野勉訳『第一ポップ時代』河出書房新社、2014年 2 シャルル・ボードレール、阿部良雄訳「現代生活の画家」『ボードレール批評2』ちくま学芸文庫、1999年、168頁 3 この論考は福尾匠『非美学—ジル・ドゥルーズの言葉と物』(河出書房新社、2024年)に多くを負っている。ぜひ原著に触れてほしい。25年前の拙文「イマージュの論理学」(『ユリイカ』2001年10月号)でもドゥルーズとベルクソンのイメージ論を語っている。 4 ハル・フォスター『第一ポップ時代』125頁 5 アムステルダム・ステデリック美術館コレクション展 『現代の眼』640号

かたちをみつめる 

1923年の関東大震災とその後の「帝都復興」を契機として急速に拡大した文化の大衆化は、当然ながら同時代の美術界にも多大な影響を及ぼした。当時の美術家たちの多くは建築や工芸の分野にも参入し、新しい時代に即したかたちを模索した。所蔵作品展MOMATコレクションの4室での展示「モダニズムのかたち—1920~30年代の立体作品」はこの時代に活躍した4作家14作品によって構成されている。会場に掲げられた解説では「感情や生命感を表出するような表現やロダンの影響から離れ、大胆なデフォルメ(対象を変形して表現すること)や形体の単純化を伴う作品」をもってこの時代の彫刻(立体)作品の傾向を示すとしている。  図1 会場風景(左奥から仲田定之助《首》《女の首》、陽咸二《或る休職将軍の顔》)|撮影:大谷一郎  各地の美術館では企画展、コレクション展を問わず、当該の美術作品と関連資料(書籍や新聞・雑誌メディアに掲載されたイメージやテキストなど)を並置する展示が目立ってきているが、まさにその最たる例が近年の東京国立近代美術館の所蔵作品展であろう。だが、今回はこの路線とは明らかに異なる。ゆとりをもったスペースで作品のみを陳列し、テーマを直截的に表現した簡素な空間づくりがなされている[図1]。 会場に入るとすぐ仲田定之助《首》《女の首》(ともに1924年)と陽咸二《或る休職将軍の顔》(1929年)[図2]が並ぶ。各パーツをデフォルメしたうえで、記号や数字の形象も織り交ぜながら再構成された仲田の頭像は、現在では我が国における抽象彫刻の先駆と位置づけられている。一方、陽作品は、老翁の彫り深い目や口元がとりわけ印象的である。長年にわたり刻まれた皺と相まって、あたかも人生の機微や悲喜交々を感じずにはいられない。しかしながら、全体の造形そのものは極端なデフォルメはなされず、キュビスム的な形態の再構成の形跡も認められない。陽の頭像についてはこれまで仲田作品の系譜に属するとみなされてきたが、個人的には、今回の比較展示をきっかけに本作に対する新たな位置づけの必要性を強く感じた。  図2 陽咸二《或る休職将軍の顔》1929年、東京国立近代美術館蔵 仲田以外は1926年に結成された彫刻を主とした公募美術団体「構造社」につどった作家たちである。かれらの多くは彫刻だけでなく、実用的な工芸品や趣味性の高い絵画も手がけた。この方面についてはとくに陽が目立っていたが、今回展示されている妖艶な女性像を象った灰皿やメダルを手がけた荻島安二のユニークな存在感も際立つ。しかしながら、活動期間が短く、彫刻制作に加えマネキン原型や店舗設計に至るまで幅広いジャンルで活躍しているため、その詳細はいまだ不明である。荻島作品の最多の所蔵館である当館には今後のさらなる調査研究を期待したい。  最後に陽咸二《扉(透かし彫り)》(1930年)についてふれたい。構造社は「建築と彫刻の調和」を観覧者に提示する目的で、「綜合試作」と題して大規模な仮設構造物を設営し、展示の目玉にした。本作は第4回展の綜合試作「記念碑 運動時代」[図3]のうちの1点であり、会場中央に設置されたモニュメント塔の下部に嵌め込むかたちで陳列された。   図3 構造社第4回展綜合試作「記念碑 運動時代」1930年  さて、スポーツをモチーフにした躍動感のある本作の魅力を十分引き出すには、透かし彫りが映えるように「直立」での展示が理想的であろう。しかし本作は経年した石膏作品であるため、今回は傾斜台での展示にとどまった。現在、彫刻といえば一般的にブロンズなどの鋳物がまず頭に浮かぶが、この時代は石膏型しか伝わらないことも多い。費用の問題から当時の展覧会では、石膏型を着色しブロンズに模したかたちで出品し、これをきっかけに注文につなげ鋳造に至るというケースが少なからずあった。この歴史的背景の重要性もさることながら、石膏型は鋳物に比べて作家の塑造の手さばきをより忠実に留めている点において間違いなく後世に伝えるべき貴重な一次資料であるといえる。  かつて筆者が所属館で担当した企画展「陽咸二展 混ざりあうカタチ」(2023年)では綜合試作のスケール感をそのまま伝えるべく、2メートルを超える高さの柱像などの大型の石膏作品も展示したが、じっさいの取り扱いにはかなり苦心した。収蔵庫での保管とはいえ、近い将来には相応の不可逆的な劣化も懸念される。本作に限らずこの時代の石膏作品の保存・活用については、近年発達がすすむ3Dスキャンを活用したデジタルアーカイブ整備などを視野に入れた対策が急務であると考える。 『現代の眼』640号

荻原守衛《坑夫》のオブジェクトVRコンテンツ公開

このたび当館では、日本文教出版株式会社と日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社との共同で、「オブジェクトVRコンテンツ」を制作いたしました。 荻原守衛《坑夫》(1907年)を水平方向に360度回転させて見ることができ、細部を拡大することも可能な3D画像ビューアーです。 ぐるぐる回したりぐっと近寄ったりしながら、美術館の外でも作品をじっくりお楽しみください。  *高精細データのため表示されるまで時間がかかる場合がございます。

高村光太郎《手》のオブジェクトVRコンテンツ公開

このたび当館では、日本文教出版株式会社と日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社との共同で、「オブジェクトVRコンテンツ」を制作いたしました。高村光太郎《手》(1918年頃)を水平方向に360度回転させて見ることができ、細部を拡大することも可能な3D画像ビューアーです。ぐるぐる回したりぐっと近寄ったりしながら、美術館の外でも作品をじっくりお楽しみください。 *高精細データのため表示されるまで時間がかかる場合がございます。

ヒルマ・アフ・クリント展|映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」上映会

映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」(2022年日本公開、配給トレノバ)を2日間限定で館内上映します。 4月26日(土)11:30~13:10(11:00受付開始) 4月27日(日)11:30~13:10(11:00受付開始) 東京国立近代美術館 地下1階講堂 各日150名 参加には「一般観覧チケット&映画上映会セット券(一般のみ)」(各日4,200円)の事前購入が必要です。チケットの購入は展覧会公式サイトをご確認ください。 当館チケット売り場での販売はありません。 各日共に11:00から1階エントランスホールにて受付開始します。 「映画上映会参加券」に印字されている整理番号順に5人ずつお呼び出し、券面確認のうえご入場いただきます。なお、「映画上映会参加券」には整理番号がご購入順に自動付与されています。 上映会会場内は自由席です。

シュルレアリスム宣言100年記念講演会(第二弾)

概要 2024年はアンドレ・ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表してからちょうど100周年にあたり、それを記念して所蔵作品展「MOMATコレクション」(2024年9月3日–12月22日)の5室では、「シュルレアリスム100年」をテーマにした展示を行っています。2024年3月17日に行った講演会の第二弾として、シュルレアリスム美術と展覧会をテーマに講演会を開催いたします。 2024年11月23日(土)13:00-16:00(開場は12:30) 東京国立近代美術館 地下1階講堂 130名 ※予約不要 ※聴講無料 13:00-13:10 長名大地 「趣旨説明」13:10-13:40 長尾天氏「シュルレアリスムの展覧会実践におけるイメージ・テクスト・機能──「イヴ・タンギーとアメリカのオブジェ」展(1927年)を例として」13:40-13:50 休憩13:50-14:20 進藤久乃氏「シュルレアリスムの展覧会と印刷空間──機関誌、ビラ、カタログ」14:20-14:50 石井祐子氏「シュルレアリスムが美術館に展示されるとき──マックス・エルンストとメレット・オッペンハイムを中心に」14:50-15:00 休憩15:00-16:00 ディスカッション・質疑応答 長尾天(ながお・たかし)成城大学ほか非常勤講師。専門はシュルレアリスム、20世紀美術史。主な著書として『イヴ・タンギー──アーチの増殖』(水声社、2014年)、『ジョルジョ・デ・キリコ──神の死、形而上絵画、シュルレアリスム』(水声社、2021年)、『もっと知りたいデ・キリコ』(東京美術、2024年)がある。 進藤久乃(しんどう・ひさの)國學院大學文学部准教授。編著に『戦後フランスの前衛たち──言葉とイメージの実践史』(水声社)、共著にChristine Lombez(dir.), Circulations littéraires : Transferts et traductions dans l’Europe en guerre 1939-1945 (Presses de l'Université François-Rabelais)などがある。近年は、占領下のシュルレアリスム「ペンを持つ手」や、そこから派生した第二次世界大戦後の前衛について研究を進めている。 石井祐子(いしい・ゆうこ)九州大学基幹教育院准教授。著書に『コラージュの彼岸──マックス・エルンストの制作と展示』(ブリュッケ、2014年)、The International Encyclopedia of Surrealism (Bloomsbury Visual Arts, 2019, 分担執筆)などがある。近年は、とくに両大戦間のシュルレアリスム美術の展開における展覧会の機能について考察している。 長名大地(おさな・たいち)東京国立近代美術館 主任研究員。 東京国立近代美術館 シュルレアリスム美術を考える会JSPS科研費研究課題「シュルレアリスム美術における展覧会の機能に関する総合的研究」(基盤研究(C)22K00182) 参加無料(観覧券不要)。 講演の撮影、録画、録音はお断りしております。 内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。 オンライン配信およびアーカイブ配信はございません。

Page Top