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ヴィデオを待ちながら:映像,60年代から今日へ
展覧会について この展覧会は、アメリカ、ヨーロッパ、日本のアーティストによる、60年代から今日までのフィルムとヴィデオ作品51点を集め、ご紹介するものです。 今日、どの現代美術展をのぞいても、映像作品を見かけないことはありません。しかし、この隆盛のよって来るところを知り、それらの作品を十全に理解するためには、実はそのスタート地点にあたる60-70年代の映像作品の理解を欠かすことはできないのです。この展覧会は、これらの作品をまとめて見る機会を、国内でほぼ初めて提供するものです。 さらにこの展覧会では、60-70年代の知る人ぞ知る名作と、60-70年代の可能性を今日に引き継ぐ現代の作品とが、ともに会場に並びます。ハイテクではなくローテクであること、大掛かりなスペクタクルではなくひそやかかつ過激であること、安易な結末を望むのではなく、いつまでも結末に行き着かない長い「プロセス」を重視すること、など、両者のあいだにいくつもの共通点が浮かび上がってくるでしょう。それはとりもなおさず、現在の作家たちが、60-70年代の映像作品のうちに、いまだ汲みつくされないたくさんの可能性を見ているということなのです。 現代美術が好きでもっと根っこから理解したい人。また、美術に限らずあの時代の文化を知り、その息吹に触れたい人。今日わたしたちを取り巻く膨大な映像の波におぼれないよう映像の文法をしっかり知りたい人、などなど。必見の展覧会です。たっぷり時間をとってお出かけください! 「YouTube」にて展覧会紹介映像を公開中! 展覧会の紹介映像を、動画共有サービス「YouTube」にて公開しています。展覧会場の様子なども視聴いただけます。これからご来館いただく予定の方も、すでにご来館いただいた方も、ぜひ一度ご覧ください。 ここが見どころ アメリカ、ヨーロッパ、日本の映像作品51点を一挙公開 今日の映像隆盛のスタート地点、60-70年代の作品を大規模に検証する、国内初の展覧会 アンディ・ウォーホルの伝説的作品《アウター・アンド・インナー・スペース》(1965年)、ブルース・ナウマンの歴史的インスタレーション《ヴィデオの回廊(ライブと録画)》(1970年)は、日本初公開! 加えて60-70年代の流れを汲む現代の作品をあわせて紹介 展覧会構成 1.鏡と反映 1960年代末、プロでなくても映像を撮ることのできる機器が登場します。これを機に、それまで絵画や彫刻を手がけていたアーティストたちが、いっせいに、フィルムや、新しいテクノロジーであるヴィデオを用いて作品を作り始めます。当時は、自分の姿が映像としてすぐさまモニターに映し出される、ということ自体が新鮮な経験でした。アーティストたちは、モニターに映る自分を見つめ、その自分がモニターの中から逆に自分を見つめ返すという、鏡にも似た映像機器の特性を活かして、作品を制作しました。 モニターの中心を約20分間指差し、そこに神経を集中し続ける。 2.芸術の非物質化 1970年代、絵画や彫刻は行き詰まりに来ていました。かわりに、絵画作品や彫刻作品といった具体的なモノを作らず、モノをともなわないアイデアや、アートとは何かを問う行為自体を作品とみなす、「コンセプチュアル・アート(概念芸術)」が登場します。手で触ることのできない光や電子でできた映像作品は、この流れの中で重要な位置を占めました。 「I am making art(芸術制作中)」とつぶやきながら、約20分間微妙にポーズを変え続けるだけ。ほとんどなにもしないことこそが「芸術の制作」なのだ。 3.身体/物体/媒体 3.オブジェと身体 アートからモノの存在を消し去ったコンセプチュアル・アート。しかしほぼ同時に、アーティストや観客の身体をモノとして扱う作品が登場します。ここでは身体は、断片化され、実験され、観察される対象として扱われます。 自作のスコアに基づき、60分間複雑なルールに従って歩く。感情を表すことなく動き続ける身体は、カメラが横に90度回転させられていることもあって、一瞬人間ではなく、不思議な機械のように見える。 4.フレームの拡張 絵画や彫刻と異なり、映像作品は、時間の流れの中で画面が変化し、動きが展開していきます。映像がしばしば時間芸術と呼ばれるゆえんです。アーティストたちは、スローモーションを用いたり、ものごとが繰り返すだけで先へと進まないシチュエーションを設定したり、ひとつの画面の中に別々のスピードで進む画面を複数合成したりして、作品のうちに日常のそれとは異なる時間の流れを作り出します。 いまや映像の第一人者であるヴィオラの、初期の代表作。池の外と、その反射像が映るはずの水面で、それぞれ異なる出来事が進行する。 ベルギーに生まれ、メキシコで活動するアリスは、世界の現代美術展でひっぱりだこの人気作家だ。この作品では、バックに楽団のリハーサルの音が流れる。音楽がスムーズに進めばフォルクスワーゲンは前に進み、つっかえて止まればバックして戻ってくる。行きつ戻りつするばかりで進まないメキシコの近代化を、アリスは、坂の頂上を越えられず、決して結末にたどり着けない車、という映像で表現している。 5.サイト サイトとは「場」のこと。70年代、やはり絵画、彫刻の行き詰まりを打破する方法として、美術館やギャラリーを飛び出し、広大な自然を用いて造形を行う、「アース・ワーク」または「ランド・アート」と呼ばれる一群の作品が登場しました。これらの作品の多くはへんぴな土地にあり、見る機会が限られるため、そのエッセンスをいかに写真や映像といった手段によって示すかが問われました。ここでは70年代のアース・ワークの映像作品から、アース・ワークに敬意と、そしてちょっぴりの揶揄を示す現代作家の作品までをご紹介します。 ユタ州グレイト・ソルト・レイクに築かれた巨大な螺旋型の突堤は、スミッソンの代表作であり、またアース・ワークの記念碑的作品だ。今回出品される映像は、この突堤の不可欠な半身とも言うべきもので、決して単なる記録映像ではない。ここでは螺旋・太陽・フィルムのリールに共通する円形や、突堤を築くパワーショベルとかつてこの地に繁栄した恐竜の姿など、いくつものイメージが層をなして重ねられている。 作家紹介 おもな出品作家(31人(組)、51点) アンディ・ウォーホル(アメリカ:1928-1987) 村岡三郎+河口龍夫+植松奎二(日本:1928- 、1940- 、1947- ) ジョン・バルデッサリ(アメリカ:1931- ) ジョアン・ジョナス(アメリカ:1936- ) デニス・オッペンハイム(アメリカ:1938- ) ロバート・スミッソン(アメリカ:1938-1973) リチャード・セラ(アメリカ:1939- ) ヴィト・アコンチ(アメリカ:1940- ) ヴァリー・エクスポート(オーストリア:1940- ) ブルース・ナウマン(アメリカ:1941- ) 野村 仁(日本:1945- ) ビル・ヴィオラ(アメリカ:1951- ) ペーター・フィシュリ&ダヴィッド・ヴァイス(スイス:1952- 、1946- ) フランシス・アリス(ベルギー:1959- ) タシタ・ディーン(イングランド:1965- ) ポール・ファイファー(アメリカ:1966- ) ダグラス・ゴードン(スコットランド:1966- ) 小林耕平(日本:1974- ) ジル・ミラー(アメリカ:1975- ) 泉 太郎(日本:1976- ) カタログ情報 カタログ好評発売中 出品作全点に詳細な解説 日本語で読め、入門書に最適 ロザリンド・クラウス「ヴィデオ:ナルシシズムの美学」ほか、最重要文献3本を初邦訳 森大志郎デザイン 300ページのボリュームで1400円(税込) イベント情報 緊急開催!泉太郎、小林耕平によるトーク・イベント 出品作家の泉太郎さん、小林耕平さんのトーク・イベントが決定しました。自作について、また会場に並ぶ歴史的名作について、等々、気鋭の二作家のお話が一度に聞けるまたとないチャンス!お誘い合わせの上、ぜひお出かけください。 2009年5月23日(土) 11:00-12:30 1階エントランス・ホール 泉太郎1976年奈良生まれ。2002年多摩美術大学大学院修了。主な展覧会に「夏への扉:マイクロポップの時代」(07年、水戸芸術館現代美術ギャラリー)、個展「山ができずに穴できた」(09年、ナディッフ)など。また5月23日から「ウィンター・ガーデン 日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」(原美術館)にも参加。本展には新作《裏の手 手の裏》を出品。 小林耕平1974年東京生まれ。99年愛知県立芸術大学卒業。主な展覧会に「ベリー・ベリー・ヒューマン」(2005年、豊田市美術館)、「第3回 府中ビエンナーレ 美と価値 ポストバブル世代の7人」(05年、府中市美術館)、「ボルタンスキープレゼンツ La chaîne 日仏現代美術交流展」(07年、BankArt1929)、「六本木クロッシング2007 日本美術の新しい展望」(07年、森美術館)など。本展には《2-6-1》(07年)および新作《2-7-1》の2点を出品。 *聴講無料・申込不要 連続講演会 *今回の講演会では、試行的に事前予約制で手話通訳を導入いたします。手話通訳をご希望の方は、各講演会の2週間前までにpr@momat.go.jpまで、お申込ください。 林 道郎(上智大学教授)「方法としての『彫刻』―ポストミニマリズムと映像をめぐって」 2009年4月18日(土) 14:00-15:30 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 門林岳史(関西大学文学部助教)「マクルーハンとヴィデオ・アートの接点を考える―その理論的・歴史的条件」 2009年4月25日(土) 14:00-15:30 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 小沼純一(早稲田大学文学学術院教授)「60-70年代の音楽と美術」 2009年5月9日(土) 14:00-15:30 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 西嶋憲生(多摩美術大学教授)「60-70年代の構造映画と美術」 2009年5月16日(土) 14:00-15:30 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 木村 覚(日本女子大学専任講師)「ダンスとレディ・メイド―1960-70年代のダンスと美術」 2009年5月23日(土) 14:00-15:30 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 担当学芸員によるギャラリートーク 2009年4月3日(金)18:00-19:002009年5月30日(土)14:00-15:00 企画展ギャラリー(1F) 三輪健仁+蔵屋美香(本展企画者) ※いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要 トーク・セッション 「『それを見ていたほかの犬』―― 記録と表現について」 会期終了間近に、最後のイベント開催が決まりました。本展フロアプランの企画制作に関わった3名が、出品作や関連印刷物(カタログ、フロアプランなど)に見出される「記録 / 表現」という問題をめぐって、トーク・セッションを行います。ぜひご参加ください。 2009年6月6日(土) 12:00-13:00 企画展ギャラリー(1F) 上崎千|慶應義塾大学アート・センター(アーカイヴ担当)森大志郎|グラフィックデザイナー三輪健仁|本展企画者 本展がフィルムあるいはヴィデオ作品における「記録 / 表現」の界面、すなわち「 / 」の上で起こる“出来事”を扱う一方で、この「 / 」をさらに「記録 / 表現」し直す、本展の関連印刷物 ― printed matter の課題とはなにか。 *参加無料(要観覧券)、申込不要*観覧券をご用意の上、1Fエントランス・ホールにお集まりください。 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー (1F) 2009年3月31日(火)~6月7日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)(入館は閉館30分前まで) 月曜日(5月4日は開館)、5月7日(木) 一般 850(600)円/大学生 450(250)円*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 *高校生以下・18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 *入館当日に限り、「木に潜むもの」展、所蔵作品展「近代日本の美術」もご観覧いただけます。
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沖縄・プリズム1872-2008
展覧会について 近代以降、様々な出自の表現者を創作へと駆り立ててきた沖縄沖縄と交差したそれぞれの想像力の軌跡を通して表現の源泉としての、この地の可能性を探ります 異質な要素がそこで出会い、沸き立ち、衝突し、創造の契機となる交差点としての場所。沖縄には、このような人と人、人と土地を結びつける不思議な磁場があります。だが、その磁場を生み出しているのは、豊かな自然や文化、そして沖縄の人々の魅力だけではないはずです。近代以降の沖縄が経験した受苦の歴史が織り成す深い陰影もまた、人々の感受性を震わせ、沖縄の過去と現在に対峙することを、さらには日本と沖縄の関係を見つめ直すことを求めてくるのではないでしょうか。こうした沖縄の光と影の強烈なコントラストは、数多くの画家、写真家、映像作家などの表現者を創作へと駆り立ててきました。「沖縄・プリズム 1872-2008」展は、これまでの「沖縄」展の多くが琉球王朝期の工芸を回顧するものであったのとは異なり、近代という時代のうねりの中で、この地から誕生した、そして現在生成しつつある造形芸術を検証する初めての試みです。表現する主体として、沖縄出身の作家と本土から沖縄に向かった作家を織り交ぜながら、「外からの視点」と「内側の視点」の違いを意識しつつ、個々の作家の想像力の軌跡を辿ります。絵画、版画、写真、映画、工芸等、様々なジャンルの作家34名それぞれの「沖縄」が乱反射する展示を通して、沖縄という場所の意味と潜在力を問い、この地から発信される未来の創造活動へと繋げていくことを目指します。 ここが見どころ 沖縄と東京の美術館二館による連動企画 沖縄と本土の対話 この展覧会は、昨秋オープンした沖縄県立美術館の開館記念展「沖縄文化の軌跡 1872-2007」(2007年11月-2008年2月)に連動するものと位置づけられています。同じ時代を扱いながらも、沖縄と本土それぞれの視点で構成された二つの展覧会の内容は、当然のごとく異なります。いわば展覧会を通した両者の対話の試みといえるでしょう。 沖縄の「現在」に向き合う 沖縄を主題にした展覧会は数多く開催されてきましたが、そのほとんどが琉球王朝期の美術工芸を扱ったものでした。なぜ沖縄の「過去」ではなく「現在」に注目しないのでしょうか。この展覧会では、沖縄が経験した近・現代の苛酷な現実と、それを映し出す表現との関係を検証します。 沖縄イメージの変遷とその更新 主として本土のマス・メディアや観光的な視線によって作り上げられた「青い海」「癒しの島」などステレオタイプな沖縄のイメージ。この展覧会で扱われる絵画や映像は、こうしたイメージの生産に関与しているのか、それとも抵抗を試みているのか。その可能性と限界を見きわめながら、既存の沖縄像を突き崩し、新たな視角から沖縄の複雑な現実に切り込むことを目指します。 展覧会構成 第1章 異国趣味(エキゾティシズム)と郷愁(ノスタルジア) 1872-1945 琉球藩設置(1872年)、廃藩置県(1879年)によって、日本の版図に編入された沖縄は、言葉や風俗、文化を含めた本土への同化を余儀なくされる一方で、異質な文化を有する他者として認識されていました。しかし、1920年代から30年代になると、本土と沖縄の知識人(芸術家)の交流が盛んになり、その文化の特殊性が称揚されたばかりか、既に失われた日本古来の姿を沖縄に見る言説も登場し、沖縄への関心が一気に高まります。 第1章では、この時代に沖縄がどのように表現されたのかを絵画、写真等を通じて検証することで、日本との不均衡な関係の中で沖縄に付加された意味、すなわち空間的な距離に依拠するエキゾティシズムと、時間的な隔たりが生み出すノスタルジアが綯い交ぜになっていく過程が明らかになるでしょう。国土を視野に収めようとする為政者の眼差しを反映した山本芳翠の風景画、ゴーギャンの影響が見られる菊池契月の《南波照間》、そして異文化としての「沖縄」の記号を散りばめた藤田嗣治《孫》などを取り上げます。 山本芳翠、冨田溪仙、菊池契月、鳥海青児、藤田嗣治、前田藤四郎、木村伊兵衛、柳宗悦 第2章 「同化」と「異化」のはざま 1945-1975 沖縄戦によって壊滅的な被害を受けた沖縄は、1952年の対日平和条約と日米安保条約の発効によって米軍政下に置かれ、まもなく「極東の要石」としての軍事基地化を強いられます。こうした米統治に対する辛抱強い抵抗の積み重ねは、やがて60年代になると「復帰運動」の大きなうねりを生み出し、72年5月15日の施政権返還に結実します。しかし、日本への「復帰」は、期待されていた基地問題を解決するものではなく、75年の沖縄国際海洋博覧会開催に象徴されるような本土資本の流入をもたらし、新たな「日本化」の波を引き寄せることになりました。第2章では、安谷屋正義をはじめとする戦後の沖縄の作家が、自己の立脚点から、沖縄の困難な現実に対峙していったことが明らかになります。また、「復帰運動」の盛り上がりとともに本土ジャーナリズムの注目が集まった60年代後半以降は、メディアに流布する沖縄イメージに抗うかのように、沖縄出身の作家と本土出身の作家が、緊張感あふれる相互交渉の末に優れた映像表現を生み出した時期でした。外部の目として挑発者の役割を果たした岡本太郎、東松照明、そして沖縄の比嘉康雄、平良孝七、高嶺剛など。これらの映像群に共通する視点は、日本復帰という再度の「同化」が叫ばれた時代において、沖縄を「異質性」のもとに捉え直し、その思想的可能性を深化させていったことにあるでしょう。 安次嶺金正、安谷屋正義、安次富長昭、儀間比呂志、岡本太郎、東松照明、平良孝七、森口豁、高嶺剛 第3章 「沖縄」の喚起力 第1章、第2章が、その時代において登場した沖縄の表現を、歴史的、社会的な文脈の中で理解しようとしたのに対して、第3章では「沖縄」という場所の意味と可能性を、時間・空間的な枠組みを取り払って、より開放的な視点から探っていきます。絵画、映像、工芸といったジャンルを超えて、「象徴としての身体」「超越的なものへの通路」「暴力の記憶とその分有」「移民」などの主題のもとに緩やかに作品は関係づけられます。作家の選択に関しても、その出自のみならず、沖縄在住か否か、あるいは復帰運動を経験した世代か復帰後世代かなど、多様な視点を織り交ぜることにしました。それぞれの作家の想像力が切り出した複数の「沖縄」に向き合うことで、この場所から広がる豊かな創造の水脈が見えてくるはずです。 國吉清尚、石川真生、平敷兼七、知花均、宮城明、粟国久直、圓井義典、阪田清子、伊志嶺隆、波多野哲朗、掛川源一郎、比嘉康雄、比嘉豊光、上原美智子、与那覇大智、山城知佳子、照屋勇賢 イベント情報 ギャラリー・トーク 1. 新作を発表した若手3人(阪田清子、照屋勇賢、山城知佳子)のリレートーク 2008年10月31日(金) 18:30-19:30 企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要 2. 比嘉豊光氏が自作を、そして比嘉康雄氏との思い出を語ります。 2008年11月1日(土) 14:00-15:00 企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要 3. 担当学芸員による解説 鈴木勝雄(当館主任研究員) 2008年11月21日(金)18:30-19:302008年12月5日(金)18:30-19:302008年11月29日(土)14:00-15:00 企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要 上映・上演 琉球放送ドキュメンタリー傑作選(提供:琉球放送) 2008年11月16日(日)2008年12月6日(土) 10:30~「復帰10年BC通り」(1983年)13:00~「それぞれの15年」(1987年)14:00~「還らざる島 伊江島・20年の検証」(1992年)15:30~「サンゴは救えるか」(1988年) 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 映画上映 2008年11月15日(土)2008年11月30日(日) 10:30~ 波多野哲朗監督「サルサとチャンプルー Cuba/Okinawa」(2007年)14:00~ 高嶺剛監督「ウンタマギルー」(1989年) 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 演劇集団「創造」による「人類館」上演 1978年に岸田戯曲賞を受賞した戦後沖縄を代表する戯曲「人類館」。沖縄の演劇集団「創造」による30年ぶりの東京上演が、一夜一幕限りで実現します。 東京国立近代美術館、早稲田大学 早稲田大学琉球・沖縄研究所 2008年12月16日(火)18:30開演 早稲田大学大隈講堂大講堂 *先着800名、入場無料、申込不要*入場に際しては整理券をプリントアウトしてご持参ください 沖縄関連のイベント この展覧会と同時期に、沖縄映画を特集したイベントが都内で開催されます。こちらもお見逃しなく。 ドキュメンタリー・ドリーム・ショー ― 山形in東京2008特別企画「オキナワ、イメージの縁(エッジ) 映画篇」 ポレポレ東中野 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2008年10月31日(金)~12月21日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)(入館は閉館30分前まで) 月曜日(11月3日と24日は開館し、11月4日と25日休館) 一般 850(600)円/大学生 450(250)円*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。高校生および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。 入館当日に限り、「小松誠」展と所蔵作品展「近代日本の美術」もご観覧いただけます。 11月3日(月・文化の日) 沖縄県立博物館・美術館 ザ・テラスホテルズ株式会社、オリオンビール株式会社 日本航空
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エモーショナル・ドローイング:現代美術への視点 6
展覧会について 東京国立近代美術館は、国際交流基金と京都国立近代美術館との共催により、「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」展を開催します。この展覧会は、アジア、中東出身の作家16組の作品により、今日のアートにおけるドローイング的表現の現状や可能性を検証しようとするものです。 そこには、30代前半の若手から、すでにアジアの、あるいは今日のアート界を代表するようになっているアーティストまでが含まれています。 出品作品が用いている技法はさまざまです。紙の上に線を中心にした形象を描く狭義のドローイングはもちろんのこと、水彩、アニメーション、インスタレーションなどが展示されます。 内容も多岐にわたっています。顔をモティーフにしたもの、幼少期の記憶に基づいたもの、日記的な表現、深層心理を引き出そうとしているもの、子どもの落書きに触発されたもの、イメージが生み出す連想を楽しむもの、花や鳥を描いたもの、日々生まれてくる着想を描きとめたものなどなど。 もちろん、そこには共通点があります。それは、彼らの作品が、ドローイング特有の脆弱(ぜいじゃく)さ、未完成であることを許すおおらかさ、あるいはどんな表現ジャンルにおいてもつくられるという意味での根源的な在り方に寄り添うことで、自らの感情や情動を引き出そうとしているところです。 彼らが目指しているもの、それは、よりよく完成・完結している点で評価されるアートではなく、感情・情動を引き出し、それをなまなましく定着させる点において評価されるアートです。そのような、理性よりも感性をより重視する作品が、今日、とりわけアジア、中東の世界においていかなる位置を占め、またどんな意義を持っているか、それを検証するべく、あるいはご紹介するべく、この展覧会は生まれました。 なお本展は、東京国立近代美術館が1984年より開催しているシリーズ「現代美術への視点」の第6回目にあたります。 作家紹介 Leiko Ikemura レイコイケムラ 1951年三重県生まれ。セビリア美術大学卒業。ベルリンとケルンに在住。現在ベルリン美術大学教授。豊田市美術館、リヒテンシュタイン美術館、レックリングハウゼン美術館、ウルム美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館など個展多数。今年は、8月末から、シャフハウゼンのMuseum zu Allerheiligenで個展を開催する。本展では、「波 風 存在」(2004)、「樹の愛」(2007)、「顔」(2008)の三つのシリーズを出品する(各12点、16点、30点を展示)。彼女が持つ想像力の多様性をじっくりと味わえる空間となるだろう。 Amal Kenawy アマル・ケナウィ 1974年 エジプト・カイロ生まれ、カイロ在住。カイロの芸術アカデミーでファッションデザインを、シネマ・インスティトゥートで映画を、ヘルワン大学で絵画を学ぶ。2006年には第1回カナリア建築・アート・ランドスケープ・ビエンナーレ(スペイン)と第1回シンガポール・ビエンナーレ、2007年にはアラブ首長国連邦のシャルハ・ビエンナーレ8と第2回モスクワ・ビエンナーレといったように、近年立て続けに国際展に参加している。シャルハ・ビエンナーレでは最高賞を受賞した。森美術館に巡回した「アフリカ・リミックス」では共同名義で出品していたのも記憶に新しい。今回、単独名義では日本初となる。本展では、アニメーションを用いた新作の映像作品《Empty Skies - Wake Up》(約7分)を発表する。 Avish Khebrehzadeh アヴィシュ・ケブレザデ 1969年テヘラン(イラン)生まれ、ワシントンDC在住。アサッド大学(テヘラン)で数学を、ローマ美術アカデミーで絵画を、コーコラン美術学校で写真を、コロンビア特別区大学で哲学を学ぶ。イスタンブール・ビエンナーレ、ヴェネツィア・ビエンナーレ、フリーズなどグループ展、国際展への出品多数。2008年、ローマ現代美術館(MACRO)などでの個展が注目を集めた。出品作の《中庭》は、ドローイング+アニメーションの多層構造を持つヴィデオ・インスタレーション。イランを代表するコレクション、ホナート美術館(Honart Museum)の所蔵である。日本初紹介。 Kim Jungwook キム・ジュンウク 1970年ソウル生まれ。ソウル在住。1994年徳成女子大学美術学部絵画専攻東洋画科卒業。2006年ソウルのギャラリー・スケイプ(Gallery Skape)で個展。2007年ソウル市立美術館の「韓国の絵画 1953-2007」展に選ばれるなど、韓国注目のアーティストのひとりである。今回は、韓紙に墨で顔を描いた2000年から2008年までの作品を、6点出品(うち3点は新作)。日本初紹介となる。 Jose Legaspi ホセ・レガスピ 1959年マニラ生まれ。マニラ在住。サント・トマス大学で動物学を、また同大学院で生物化学を学んだ後、フィリピン大学美術学部で学ぶ。第4回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2002)、シンガポール・ビエンナーレ(2006)など国際展、グループ展への参加多数。日本での紹介は、「アンダー・コンストラクション」展(2002、国際交流基金フォーラムほか)以来、久しぶりである。今回は、作家自ら選んだドローイング485点を、インスタレーション的に展示する。 Nalini Malani ナリニ・マラニ 1946年カラチ(現パキスタン)生まれ。ムンバイ在住。ニュー・ミュージアム(2002-03、ニューヨーク)、ピーボディ・エセックス博物館(2005-06、マサチューセッツ州セーラム)、アイルランド近代美術館(2007、ダブリン)で個展を開催するなど、名実ともに、インド、あるいはアジアを代表するアーティストである。今回は、《記憶:記録/消去》(1996年)と《染み》(2000年)とこれまでの代表的なアニメーション作品を発表する。なお《染み》は福岡アジア美術館でレジデンスを行った際の制作作品である。 Nara Yoshitomo 奈良美智 1959年弘前市生まれ。栃木県在住。愛知県立芸術大学大学院修了後、デュッセルドルフ芸術アカデミーにて学び、A.R.ペンクのクラスでマイスターシューラーを取得する。ここ数年の個展をあげても、吉井酒造煉瓦倉庫(2006)、金沢21世紀美術館(2006)、マラガ現代美術館(2007)、デンハーグ現代美術館(2007)、バルティック(2008、ニューカッスル)などと数多い。本展では、1987年以降2008年までのドローイング131点と、新作の小屋《My Drawing Room 2008, bedroom included》(grafとの共同制作)を発表する。 Julião & Manuel Ocampoジュリアオ&マニュエル・オカンポ マニュエルは1965年ケソン・シティ(フィリピン)生まれ。マニラ在住(国籍はアメリカ)。ジュリアオはその息子。ドクメンタ(1992)、リヨン(2000)、ヴェネツィア(2001)、ベルリン(2001)、セビリア(2004)などのビエンナーレ、国際展に数多く参加。アメリカにおけるアジア系アーティストとして、世田谷美術館など、日本でも紹介されている。今回は、これまでのバロック的とも称された作風をがらりと変えて、息子ジュリアオと現地制作したインスタレーションを発表する。 S. Teddy D. S. テディ D. 1970パダン(インドネシア)生まれ。ジョグジャカルタ在住。スラカルタとジョグジャカルタのインドネシア芸術大学で学ぶ。インドネシアを中心に、絵画、インスタレーションのほか、パフォーマンスを制作、発表。「AWAS!インドネシアの新しい現代美術」(2000)や「アンダー・コンストラクション」(2002)を通して日本でも紹介されている。今回はこれまで描きためてきたドローイングから43点を出品。 Sakagami Chiyuki 坂上チユキ 本展では、1970年代から新作までのドローイングを、12点出品。 Pinaree Sanpitak ピナリー・サンピタック 1961年バンコク生まれ。筑波大学芸術専門学群デザイン専攻視覚伝達コース卒業。女性の乳房や胴体をモティーフにした作品で知られる。第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(1999)など国際展への参加多数。「東南アジア来るべき美術のために」展(1997)や「第2回福岡アジア美術トリエンナーレ」(2002)など、日本での紹介も数多い。今回は、1990年から2008年まで描いたドローイング多数を、壁にかけるのではなくて、テーブルに載せる形で出品する。 Mithu Sen ミトゥ・セン 1971年ブルドワン(インド)生まれ。デリー在住。ヴィスヴァバーラティ大学大学院(シャーンティニケターン)で絵画を学んだ後、グラスゴー美術学校に留学。1998年AIFACS(国際美術家連盟アジア太平洋地域会議)絵画部門賞を受賞。インドを中心に作品を発表してきたが、2006年、2007年とニューヨークのボセ・パシアで個展を開催して好評を博す。今回は、国際交流基金のJENESYSプログラムにより徳島県の阿波紙ファクトリーに滞在し、そこで制作した大きな和紙をベースにした、新作のインスタレーション、《翻訳で失われるものはなにもない》を発表する。 Aditi Singh アディティ・シン 1976年グワハティ(インド)生まれ。ムンバイ在住。インターナショナル・スクール・オブ・アート(イタリア・モンテカルロ)、ペンシルバニア美術アカデミー修士課程(フィラデルフィア州ペンシルバニア)、ニューヨーク・スタジオ・スクールで学ぶ。今回は、花を描いた静謐なドローイング4点と、鳥の群れを描いた40点組のインスタレーション的なドローイングを出品する。 Shooshie Sulaiman シュシ・スライマン 1973年ムアール(マレーシア)生まれ。クアラルンプール在住。マラ工科大学を卒業後、現在同地でアーティスト・ランのオルタナティヴ・スペースを運営する。2007年のドクメンタに参加。今回は、そのドクメンタでも出品された日記的なドローイング(彼女はどこかへ出かけるとき、いつもそれをケースに入れて持ち歩く)を16点出品するほか、短期滞在型のパフォーマンスを行う。 Tsuji Naoyuki 辻直之 1972年静岡県生まれ。東京造形大学美術学科Ⅱ類 (彫塑コース)卒業。神奈川県横浜市在住。2004年には「カンヌ国際映画祭」監督週間に《闇を見つめる羽根》が招待上映された。また2007年には、愛知県芸術文化センター・オリジナル映像作品として制作された《影の子供》が、アナーバー映画祭で奨励賞を受賞。2007年のパラソル・ユニット(ロンドン)でのグループ展、横浜美術館での上映会(「動く絵」の冒険)、2008年のアート・バーゼルにおけるコルヴィ=モーラ(Corvi-Mora)のブースでの紹介など、アートの領域における評価も急速に高まりつつある。今回は、木炭ドローイングによるアニメーションを二点発表。ひとつは《影の子供》(約18分)、もうひとつは新作《エンゼル》(約6分)で、後者は日本初公開となる。 Ugo Untoro ウゴ・ウントロ 1970年プルバリンガ(インドネシア)生まれ。ジョグジャカルタ在住。インドネシア芸術大学(ジョグジャカルタ)で学ぶ。インスタレーションや絵画を中心に発表する一方で、詩も描き、詩画集も出している。全身に刺青をしているが、自らのアトリエを若手アーティストに開放するなど、当地では兄貴分的な存在である。今回は、描きためていたドローイング34点を出品。 イベント情報 アーティスト・トーク マニュエル・オカンポ+ピナリー・サンピタック+ミトゥ・セン 2008年8月26日(火) 14:00-16:00 企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要 スクリーニング&トーク 辻直之 2008年9月13日(土) 14:00-16:00 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) シンポジウム 「ドローイング再考 テクネーとアートのはざまで」 2008年9月27日(土) 13:00-16:00 講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名) 東京国立近代美術館、国際交流基金 金井直(信州大学人文学部准教授)斎藤環(精神科医、爽風会佐々木病院精神科診療部長)ヤン・ジョンム(韓国芸術綜合学校美術院美術理論科准教授)中林和雄(当館企画課長)保坂健二朗(当館研究員、本展キュレーター)*モデレーター ギャラリー・トーク 保坂健二朗+中村麗子(当館研究員、本展キュレーター) 2008年9月5日(金)2008年9月19日(金)2008年10月3日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2008年8月26日(火)~10月13日(月) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)(入館は閉館30分前まで) 月曜日(9月15日と10月13日は開館、9月16日休館) 一般 850(600)円/大学生 450(250)円*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。高校生および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。 入館当日に限り、「壁と大地の際で」と所蔵作品展「近代日本の美術」もご観覧いただけます。 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国際交流基金 日本航空 京都国立近代美術館:2008年11月18日(火)~12月21日(日)
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カルロ・ザウリ展:イタリア現代陶芸の巨匠
展覧会について 現代陶芸の偉大な改革者の一人として国際的にも高く評価され、日本にも大きな影響を与えてきたイタリアの巨匠、カルロ・ザウリ(1926-2002)の没後初めての回顧展をファエンツァ市との国際交流展として開催します。 ファエンツァは、フランス語で陶器を意味するファイアンスの語源となった陶都として、また、マジョリカ焼の産地として古くから知られています。ザウリはその地で生まれ、生涯同地を拠点に制作を行いました。1950年代初頭から精力的に発表活動を展開したザウリは、世界で最も規模の大きいファエンツァ市主催の国際陶芸コンペで三度もグランプリを受賞したのをはじめ、国境を越えて活躍し、その存在を揺るぎないものとしていきました。 本展は、あまり知られていなかった1950年代の初期のマジョリカ作品から、“ザウリの白”と呼ばれる60~70年代の代表的な作品、さらには、80年代に制作した釉薬を用いない黒粘土による挑戦的な作品を中心に、タイルやデザインの仕事まで、ザウリの非凡な才能を知る多彩な作品を通して、1951年から約40年間の芸術活動の軌跡を辿ります。 展覧会構成 I: 1951-1956 初期の作品はザウリの出身地、ファエンツァの陶芸と深い関わりを持っています。ファエンツァ伝統のマジョリカ焼の技法を用いた壺、皿、鉢などは、さまざまな色彩を纏っていますが、そのフォルムからは彫刻的な形体の追求を見ることができます。 II: 1957-1961 1950年代後半、ザウリは、当時のイタリアではほとんど手掛けられていなかった新しい技法、ストーンウエア(高温焼成)を始めます。さらには「壺」の口を閉じた作品の制作も始まります。また、口を閉じなくとも、自己表現のひとつの形体として「壺」をとらえ、新たな可能性を模索していきます。 III: 1962-1967 この時期のザウリの作品は、ロクロを巧みに用いて生み出されました。そしてザウリは「壺の彫刻家」と呼ばれようになります。ザウリは釉薬の研究とともに、ストーンウエアでの制作も続け、やがてそれは、マジョリカ焼を凌ぐほどの技法として確立されていきます。さらには、1,200度の高温焼成による独自の釉薬、「ザウリの白」をつくり上げ、彫刻的な形体の発展と新たな釉薬との融合を目指すようになっていきます。 IV: 1968-1980 ザウリの作陶の歴史の中で一番重要な時期として位置づけられます。1968年ごろからザウリの作品には、海の波や砂丘、あるいは女性の身体を連想させるような柔らかな表現が見られるようになります。そして、素材や自然のざわめきを感じさせるこの造形的な特徴は、ザウリの作風を代表するものとなります。また、この時期のザウリは、「ザウリの白」の他にも金やプラチナを施した作品を制作しています。 V: 1981-1991 1980年代の初めにザウリは、造形的な特徴はそのままに、これまでとはまったく異なった黒い粘土を用いた作品を発表します。それは「ザウリの白」とは対照的に、艶のない土そのものの質感を見せています。しかし、その後には再び釉薬を用いた作品の制作に戻り、以前にも増して大きな作品の制作を行いました。本展では高さ5メートルを超える作品も展示します。 VI: グラフィック、タイル ザウリはタイルのデザイナーとしても高く評価されていました。本展では、作品のエッセンスを抽出したようなグラフィック作品や初期から晩年に至るタイル作品を展示紹介します。日本ではこれまで観る機会のなかった作品群です。 作家紹介 ザウリと日本の関係 日本とカルロ・ザウリの関係は古く、1964年に東京と京都の国立近代美術館、久留米の石橋美術館、愛知県美術館を巡回した「現代国際陶芸展」で初めて作品が紹介されました。 その後、1970年に京都国立近代美術館で開催された「現代の陶芸-ヨーロッパと日本」を機にザウリの作品は日本の関係者に広く知られるところとなりました。1973年には新聞社が主催した公募展「第1回中日国際陶芸展」で最優秀賞を受賞しています。翌年以降、大阪や東京、名古屋、京都など日本の主要な都市で個展が開催されて、いくつもの公立美術館がイタリアを代表する作家の作品としてザウリの作品を収蔵し、日本で最も知られるイタリア現代陶芸の作家となっています。 略歴 1926年 8月19日、ファエンツァに生まれる1949年 ファエンツァ国立陶芸美術大学卒業1953年 「ファエンツァ国際陶芸展」グランプリ('58、'62にも同グランプリを受賞)1954年 「ミラノ・トリエンナーレ」に参加1960年 タイル専門工場「ラ・ファエンツァ」の創設者の一人となる1964年 「現代国際陶芸展」(東京、久留米、京都、名古屋)1968年 モノグラフ出版1986年 「第1回国際陶磁器展美濃’86」審査員(多治見)1996年 ファエンツァ市民会による「功労大賞」を受ける2002年 1月14日、ファエンツァで死去 カルロ・ザウリ美術館創設 イベント情報 講演会 『カルロ・ザウリの芸術』マッテオ・ザウリ(カルロ・ザウリ美術館長) 2008年6月22日(日) 14:00-15:00 講堂(地下1階) *当日先着順150名 『カルロ・ザウリとその時代』平井智一(陶芸家、ファエンツァ市在住) 2008年7月6日(日) 14:00-15:00 講堂(地下1階) *当日先着順150名 ギャラリー・トーク 平井智一(陶芸家、ファエンツァ市在住) 2008年6月21日(土)*当初のお知らせから開催日が変更となりました。ご注意ください。 15:00-16:00 会場(入館に展覧会チケットが必要、申込は不要) 唐澤昌宏(当館主任研究員) 2008年6月21日(土)*当初のお知らせから開催日が変更となりました。ご注意ください。 15:00-16:00 会場(入館に展覧会チケットが必要、申込は不要) カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー(1階)一部の作品は、3階にも展示します 2008年6月17日(火)~8月3日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 6月23日(月)、30日(月)、7月7日(月)、14日(月)、22日(火)、28日(月) 一般1000円(800円/700円)大学生500円(400円/300円)高校生および18歳未満、障害者の方とその付添者1名は無料 それぞれ入館の際、学生証、年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 いずれも消費税込。( )内は前売料金/20名以上の団体料金。 入館当日に限り、「建築がうまれるとき ペーター・メルクリと青木淳」展・所蔵作品展と、工芸館で開催中の展覧会(7月7日~16日は展示替のため休館)もご覧いただけます。 観覧券は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスでも取り扱います(一部店舗を除く)。前売券は4月11日から6月16日まで! 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、ファエンツァ市、エミリア・ロマーニャ州、カルロ・ザウリ美術館、日本経済新聞社 イタリア文化省、イタリア外務省、イタリア議会下院、ラヴェンナ県、ラヴェンナ商工会議所、イタリア大使館、イタリア文化会館 フェラリーニ社、モカドーロ、GD アリタリア航空、オープン・ケア すでに、京都国立近代美術館(2007年10月2日~11月11日)岐阜県現代陶芸美術館(2008年4月19日~6月1日)で開催され、当館が3会場目。この後は山口県立萩美術館・浦上記念館(8月26日~10月26日)へ巡回します。
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生誕100年 東山魁夷展
展覧会について 東山魁夷の生誕100年を記念する展覧会を開催します。東山魁夷は、明治41(1908)年に生まれ、東京美術学校の研究科を修了したのち、ドイツ留学をはさんで帝展、文展に作品を発表しました。戦後になって、代表作《道》に見られるような平面的で単純化をきわめた作風へ展開し、風景画家としての独自の表現を確立しました。そして、自然や街を主題に「生」の営みをいとおしむかのように描いた作品、祈りの風景ともいえるほどに沈潜した精神的な深みをうかがわせる唐招提寺御影堂の障壁画などによって、戦後の日本画界に大きな足跡を残しました。 東山魁夷の作品は平明でわかりやすい描写のうちに、清新な抒情性と深い精神性を湛えています。それは徹底した自然観照から生まれた心象風景であり、自身の心の奥底に潜む想いの表白にほかなりません。また同時に、その作品は日本の伝統につらなりつつ、時代に生きる感覚を確かに宿しています。東山芸術が今なお多くの人々の共感を得るのはまさにそれゆえであるといえるでしょう。 本展は、東山魁夷の代表的な本制作101点、スケッチや習作53点(いずれも東京会場の出品数)を出品するものです。唐招提寺御影堂の障壁画からは《濤声》(部分)、《揚州薫風》を展示します。本展では、これらの作品を7つの章に分け、さらに5つの特集をもうけて紹介することで、ともすれば見落とされがちであった東山魁夷の画風の展開や、制作のプロセス、表現の特質などにも迫りたいと考えます。 会期中、展示替があります前期:3月29日(土)~4月20日(日)後期:4月22日(火)~5月18日(日) 混雑状況17(土)、18(日)は終日、混雑が予想されます。平日の午後3時以降は比較的ゆとりがあります。15(木)・16(金)・17(土)の夜間開館をどうぞご利用ください。 *著作権保護のため、画像の転載を禁止します ここが見どころ 代表作が目白押しの大回顧展 東山魁夷の画業を語る上で欠かすことのできない代表作、ほとんどすべてが会場に集結します。また、今まで紹介されることの少なかった作品もあわせて会場に並びます。本制作101点、スケッチ・習作53点(いずれも東京会場の出品数)を数える大展覧会は、これまでの東山の回顧展で最大規模です。東山自身が画業の転機とみとめる《残照》、東山を一躍人気作家へと押し上げた《道》、東山作品のなかで最も人気の高い《花明り》などの重要な作品が、展示替えをおこなうことなく全会期を通して展示されることも、本展の大きな特徴です。 7章構成で東山芸術に迫る 東山魁夷の作風展開ならびに作画傾向に注目し、7章に分けて作品を紹介します。東山芸術の確立期は、これまで自身の言述に従い《残照》を出発点とすることがほとんどでした。しかし、東山の画業初期に見られる写生を基礎におく作風は、《道》以降、簡潔な画面構成による作風へと変化します。このことに注目し、本展では第2章の始まりに《道》を据え、東山の作風展開を作品に即してたどります。全体の章分けは編年的な区分けにとどまりません。第5章では、ともすれば自然の風景ばかりを描いたと思われがちな東山が、若い頃から折りに触れ描いていた町並みや建物を主題とする作品に注目し、その表現の特徴を探ります。 5つの特集展示 特集展示を5つ設け、多角的に東山の芸術に迫ります。5つの特集は次のとおり。特集1「ドイツ留学」、特集2「《自然と形象》と《たにま》」、特集3「白馬のいる風景」、特集4「窓」、特集5「唐招提寺の障壁画」。 白馬は全部で11頭 1972年に描かれた白馬のシリーズ。この展覧会では本制作5点、習作6点を紹介します。そのうち習作は展示替を予定していますが、一度の来館で少なくとも8頭の白馬に出会えます。 唐招提寺からはこの2点 奈良・唐招提寺の御影堂障壁画の制作は、11年あまりにも及ぶ、東山の画業における一大プロジェクトでした。制作は二期に分けられ、入念な準備のもと1975年に《山雲》(上段の間)、《濤声》(宸殿の間)が、80年に《黄山暁雲》(桜の間)、《揚州薫風》(松の間)、《桂林月宵》(梅の間)が、81年に《瑞光》(鑑真和上坐像厨子扉絵)が完成しました。この展覧会では、《濤声》の一部と《揚州薫風》を、ギャラリー4を御影堂内部に見立てて展示します。 音声ガイドは東山本人が語ります 本展でご利用いただける音声ガイド(有料、500円)は、東山魁夷の作品世界によりよく親しんでいただくために、画家が当館で1968年冬におこなった講演会「私と風景画」の音声記録と、彼が綴った文章を基に構成しました。25作品の解説のうち12作品は、東山の肉声による解説となっています。 展覧会構成 第1章 模索の時代 昭和戦前期から戦後へかけては、東山にとって模索の時代といえます。美術学校を出てドイツに留学、やがて戦争で死を覚悟したなかで見た熊本の風景の美しさや、戦後千葉の鹿野山の夕暮れのなかで自然と深く一つになることのできた体験を通し、東山は風景画家として開眼してゆきます。ここでは1948(昭和23年)の日展出品作《郷愁》までの作品で、自らの世界を探し求めてゆく過程を検証します。 第2章 東山芸術の確立 戦後の混乱で、日本画の世界は厳しい状況に置かれました。しかし、既に風景画家としての立ち位置を明確にしていた東山に、迷いはなかったといえます。もちろん、当時奔流のように流れ込んだ新しい美術思潮に、影響を受けなかったわけではありません。しかしその中で、戦前までに形をなしてきた日本画の表現に確信をもちつつ、自らの資質を生かしたところに東山芸術は確立しました。形態を単純化し、不必要な要素を切り捨てた簡潔な構成に特徴がありますが、そこに至る過程を1950(昭和25)年の日展出品作《道》から1961(昭和36)年の《萬緑新》に辿ります。 第3章 ヨーロッパの風景 1962(昭和37)年、東山はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーを旅行しました。この章の作品のほとんどが、その折りに取材した風景を題材にしたものです。どの作品も北欧の雄大で静寂に満ちた、神秘的ともいえる風景をみごとにとらえており、厳しい自然と、力強い生の営みへの強い共感を窺うことができます。ここではとりわけ、水平性や垂直性を強調した構成、背景が湖面に倒影した上下相称の構図が特徴的といえます。 第4章 日本の風景 北欧から帰国後、京都を題材に描いた作品がこの章の中心となります。「京都」は自然と人間の共生がつくりあげた文化そのものであり、その意味では風景といっても、これまで東山が多く描いてきた自然の風景とは大きな違いがあります。円みや柔らかさのある構図や暖かみを帯びた色彩だけでなく、画面を覆う湿り気を帯びた空気に、透明感のある北欧風景とはまったく異なった、いかにも京都らしい雰囲気が色濃く漂っています。 第5章 町・建物 自然の風景を描く画家と思われている東山も、町や建物を主題とする作品を少なからず描いています。この章の中心となるのは、1969(昭和44)年にドイツ、オーストリアを旅行して取材したヨーロッパの古都を描く作品です。この連作で、画面が再び縦方向への動きを強調するものへと変化しているのは、ヨーロッパの石の文化のもつ強固な造形性を意識したゆえでしょう。画面には街に生きる人々の息づかいが感じられ、それは京都の連作とも共通する特徴といえます。この章では「町」をみる東山独自の視線を探ります。 第6章 モノクロームと墨 東山が「墨」の世界の扉を開くきっかけとなったのは唐招提寺御影堂の障壁画制作でした。それまでの表現と異なり、色を抑制してゆく表現は、唐招提寺を取り巻く宗教的雰囲気のなかで、ますます精神性を深めてゆく過程にも重なります。この章では1973(昭和48)年の日展出品作《夕静寂》から唐招提寺障壁画までの作品によって「墨」の世界に至る過程を追います。 第7章 おわりなき旅 唐招提寺障壁画を制作以降も、東山はそれまで描いてきた主題や手法を大きく変えることはありませんでした。晩年になり旅に出ることもほとんどなくなる頃からは、過去の想い出が寄せ来る波のようの繰り返し画面にあらわれ、それまでの抒情性に加えて、どこか夢幻的ともいえる独特の雰囲気が浮かんでくるようになります。それは遠い過去の中を果てることのない遍歴の旅を続ける東山が、さまざまな想いをこめて奏でる追憶の旋律のようでもあります。 イベント情報 講演会 「若き日の東山魁夷」 川崎鈴彦(日本画家) 2008年4月5日(土) 14:00-15:00 当館講堂 当日先着順 150名。聴講無料。 「東山魁夷 画業の軌跡」 尾崎正明(本展企画者・当館特任研究員) 2008年4月19日(土) 14:00-15:30 当館講堂 当日先着順 150名。聴講無料。 関連企画 「東山魁夷展」こどもセルフガイド自然を描く 東山さんは自然をこよなく愛し、たくさんの風景を描き続けました。東山さんのあしあとをたどってみよう! 「東山魁夷展」会期中に来場した小中学生には、東山の作品を見るためのヒントやクイズ、画家に関するエピソードなどを紹介したセルフガイド(解説リーフレット)をプレゼントします。 教職員鑑賞プログラム「生誕100年 東山魁夷展」美術館活用研究会 *学校教職員が対象のプログラムです 2008年4月4日(金) 14:00-15:00(講演)/10:00-20:00(展覧会観覧) 先着150名(要事前申込)申込方法などの詳細はこちらをご覧ください。 カタログ情報 開催概要 企画展ギャラリー・ギャラリー4 2008年3月29日(土)~5月18日(日)会期中、展示替があります前期:3月29日(土)~4月20日(日)後期:4月22日(火)~5月18日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)東山魁夷展会期中の木・金・土曜日は、20:00まで開館します*入館は閉館30分前まで 4月7日(月)、14日(月)、21日(月)、5月12日(月) 一般1300(1100/900)円、大学生900(800/600)円、高校生400(300/200)円●いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金*前売券の販売は3月28日まで●中学生以下、障害者の方及び付添者1名は無料*それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください●本展観覧券で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧になれます●とてもお得なチケット情報2月29日までの販売*ペアチケット 1800円2人分の入場券がセットに。切り離して1枚ずつご利用になることも可能です*モディリアーニ展とのセット券 2000円国立新美術館「モディリアーニ展」(3/26~6/9)とのセット券です●チケット取扱チケットぴあ(Pコード:前売687-704, 当日687-705, ペアチケット687-706, モディリアーニとのセット券687-707)、ローソンチケット(Lコード:33454, モディリアーニとのセット券39957)ほか都内主要プレイガイドペアチケット、モディリアーニ展とのセット券はオンラインのみでの販売となります。オンラインチケット(電子チケット)は、引換券です。そのままでは入場できないので、展覧会場入り口にて実券とお引換ください。 東京国立近代美術館、日本経済新聞社 大和ハウス工業 日本興亜損害保険、三菱商事 唐招提寺 長野県信濃美術館 東山魁夷館 2008年7月12日(土)~8月31日(日)
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わたしいまめまいしたわ:現代美術にみる自己と他者
展覧会について ときどき、自分というものの存在が、きわめてあやふやで頼りなく感じられることはありませんか? その不安のようなものは、どこからやってくるのでしょう。 「わたし」というものが最初から存在するのではなくて、「他者」 ― 社会に生きるほかの人々 ― との関係の中でできあがっていくものだとするならば、今日わたしたちが感じる、めまいにも似た存在の不安は、ただのアイデンティティの問題にとどまらないはずです。 「他者」とのコミュニケーションのあり方や、わたしたちをとりまく現実を認識するあり方の変化にも目を向けてみましょう。 価値観が多様化し、それがインターネットなどの高度情報技術によって増幅されることで、「わたし」と「他者」との関係は幾重にも複雑なものとなり、そのために「わたし」という存在は、定めがたいものになってきたのかもしれません。 しかし、このような混沌とした状況は、わたしたちが改めて「わたし」のあり方を考え直すチャンスでもあります。 そのためには、ものを見ること、認識すること、そこから紡ぎあげた思考を他者に伝えること、そういったひとつひとつの行為を、繰り返し吟味する作業が不可欠です。 そして、これらはまさに今日の美術における重要なテーマとして、多くのアーティストによって探究されてきました。 今回の展覧会では、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館のコレクションを中心として、現代において「わたし」の根拠を問い、「わたし」を取りまく世界を認識し、「他者」との新たな関係を切り拓こうとする作品を集めて、それらを複数の視点からご紹介します。主な出品作家(順不同、図版掲載作家は省略):梅原龍三郎、中村彝、岸田劉生、藤田嗣治、谷中安規(たになか やすのり)、麻生三郎、椎原治、靉光、北脇昇、ウォーカー・エヴァンズ、植田正治、浜口陽三、河原温、宮島達男、村上友晴、岡崎乾二郎、ブリジット・ライリー、日高理恵子、フランシス・ベーコン、須田一政、ポール・ストランド、高嶺格(たかみね ただす)、郭徳俊(かく とくしゅん) ここが見どころ さまざまな「わたし」と「他者」の関係を前にして、あなた(観客)もめまいを起こすかも!?5人のキュレーターが各セクションを担当。そのため、いつもとちょっと違う展覧会になるはず?当館だけでなく、国立美術館のコレクションの中からよりすぐった現代美術をご紹介します! カタログ、チラシ、ポスターなどの印刷物はもちろんのこと、会場内のグラフィックデザインもあの服部一成氏がデザイン! 1500㎡に95点を展示(牛腸茂雄の60点組など写真や版画のシリーズものは1点と計上) 2003年当館での個展でも話題をよんだ牛腸茂雄の《SELF AND OTHERS》。全60点を展示! ビル・ヴィオラ、キムスージャ、高嶺格の代表的な映像作品を展示! 展覧会構成 わたしはひとりではない 「本当の自分を探したい」。多くの人がこんな風に言います。しかし本当の自分、たったひとつの揺らぎない自分というものは、果たしてあるのでしょうか。家族といる自分、友人といる自分、ひとりの時の自分。誰もが状況に応じていくつもの自分を使いわけています。そうした複数の自分の束こそが、「本当の自分」の正体なのではないでしょうか。イントロダクションとなるこの章では、大正から昭和にかけて制作されたたくさんの自画像とともに、変装によって自分のイメージを無数に分裂させる注目の若手写真家、澤田知子の作品などをご紹介します。 アイデンティティの根拠 「わたし」が「わたし」であることの確実さ、つまりわたしのアイデンティティ(自己同一性)は、いかにして確保されるのでしょう。このセクションでは、文字や記号を用いて、自己同一性の根拠を探る作品に始まり、複数の対象間に「同一性」を感じ取ること、複数の対象間に「差異」を見出すこと、そういった認識のメカニズムを解き明かすような作品(河原温、高松次郎、村上友晴、岡崎乾二郎、宮島達男)をご紹介します。 暗い部屋(カメラ・オブスクーラ)と「わたし」 暗い部屋に一点のピンホールを穿つことで外界の倒立像が壁面に投影されるカメラ・オブスクーラ(「暗い部屋」の意)の原理と、その延長線上に成立した写真という装置。これらは世界と「わたし」との間に距離を作り出し、世界を離れたところから見つめ、思考する「自己」を切り出します。「暗い部屋」とは、「わたし」の内面に通ずる秘めやかな空間なのです。ここでは、アパートの自室それ自体を「カメラ・オブスクーラ」とすることで外の世界の写真を撮影した伝説の作品、山中信夫の《ピンホール・ルーム》を紹介します。 揺らぐ身体 通常わたしたちは、視るという行為を、絶対的かつ知的な行為と考えることで、日々を送っています。しかしその前提は、ちょっとしたことで打ち崩されてしまいます。ここでは、草間彌生、ブリジット・ライリー、日高理恵子、金明淑(キム ミョンスク)の大きな絵画が4点、展示されます。それらは一見シンプルな作品ですが、前にすると、くらくらして、「視る」という行為が本来どれだけ身体的であるか、実感されるのです。 スフィンクスの問いかけ 「朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か」というスフィンクスの謎かけはあまりにも有名です。ここでは、絵画(フランシス・ベーコン)と彫刻(舟越桂)で表されたスフィンクスによって、その問いかけの意味を、考えていただきます。謎かけの答えは、オイディプスによって「人間」と明らかになったわけですが、しかしその英雄自身は、スフィンクスと出会う前に父を殺し、後には母と交わった悲劇の人物(男性)でもあったことを忘れてはなりません。 冥界との対話 「わたし」の生成にとって、人間に組み込まれた不可避の「死」というプログラムは決定的な役割を果たします。しかし、その「死」は直視することを躊躇させるような深い闇としてあるために、社会は、「死」を「生」の充実に転化する装置として「物語」や「宗教」を必要としてきたのでしょう。死は、個人の生を際立たせると同時に、それを個人というレベルを越えた集合的な記憶や感情と結びつけるのです。ここではビル・ヴィオラのヴィデオ・インスタレーション《追憶の五重奏》や、須田一政の写真「風姿花伝」(シリーズ、出品は一部)が展示されます。 SELF AND OTHERS 1983年に36歳で早世した写真家、牛腸茂雄の残した連作《SELF AND OTHERS》全60点をまとめて展示します。写された人々の多くは、こちらをまっすぐに見つめています。そのまなざしの集合体にとらえられたとき、わたしたちは「他者」との距離に思いを巡らさずにはいられないでしょう。 「社会と向き合うわたし」を見つめるわたし 自画像から始まったこの展覧会は、再び作者自身の姿を表した作品群で終わります。しかしこのセクションで展示される作品は、いずれもただの自画像ではありません。他者と向き合い、関わろうとする自分の姿を、もうひとりの自分が冷静に見つめ、対象化し、ときにユーモアを交えて表しているかのようです。 イベント情報 ギャラリー・トーク 担当キュレーター5人によるリレー式ギャラリー・トーク 2008年2月8日(金) 18:00-19:30 企画展ギャラリー 蔵屋美香(当館主任研究員)三輪健仁(当館研究員)鈴木勝雄(当館主任研究員)保坂健二朗(当館研究員)大谷省吾(当館主任研究員)*以上は大まかな順序になります 参加無料(要観覧券)、申込不要 「写真と<わたし>」 2008年2月22日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー 竹内万里子(当館客員研究員、写真批評家) 参加無料(要観覧券)、申込不要 カタログ情報 B4の大きなカタログは、服部一成氏によるもの!「わたしいまめまいしたわ 現代美術にみる自己と他者」展のカタログのデザインは、チラシやポスターと同じく服部一成(はっとりかずなり)氏によるものです。服部氏の仕事は多岐にわたります。「キユーピーハーフ」(1997-)、「キリン淡麗グリーンラベル」(2002-05)、「オンワード 組曲」(2000-01)などの広告キャンペーンのアートディレクション 。『流行通信』誌リニューアル(2002-04)のアートディレクションとロゴデザイン。そのほか、パッケージデザイン、ブックデザイン、CDジャケットデザインなどなど。美術展では、森美術館の「ビル・ヴィオラ展」(2006)や川村記念美術館の「ハンス・アルプ展」(2005)や横浜美術館「中平卓馬展」(2003)などのグラフィックデザインが知られており、当館でも「ドイツ写真の現在 ― かわりゆく「現実」と向かいあうために」展(2005)を手がけていただきました。今回は、出品作品が多数あることなどから全点掲載とはなっていませんが、B4という大きな版型をいかして、図版が迫力あるものとなっていたり、作品同士を対比しやすくなっていたりするだけでなく、服部氏ならではのグラフィックがページが表1・表4以外にも施されていて、見ごたえのあるカタログとなっています。 B4版 縦36.4×横25.7cm/52p(表1~表4を含む) pp.6-13 わたしはひとりではない (蔵屋美香)pp.14-19 アイデンティティの根拠 (三輪健仁)pp.20-21 暗い部屋(カメラ・オブスクーラ)と「わたし」 (鈴木勝雄)pp.22-25 揺らぐ身体 (保坂健二朗)pp.27-29 スフィンクスの問いかけ (保坂健二朗)pp.30-33 冥界との対話 (鈴木勝雄)pp.34-39 SELF AND OTHERS (蔵屋美香)pp.40-45 「社会と向き合うわたし」を見つめるわたし (大谷省吾)pp.46-47 作品リスト 本体1200円(税込) 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2008年1月18日(金)~3月9日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日 *2008年2月11日は開館し、翌12日は休館 一般420円(210円) 大学生130円(70円) 高校生70円(40円) 中学生以下、65歳以上、キャンパスメンバーズ、MOMATパスポートをお持ちの方、障害者手帳等をお持ちの方と付添者1名は無料。それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。*本展の観覧料で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」と「特集 国吉康雄」もご覧いただけます。 2008年2月3日(日)、3月2日(日) 東京国立近代美術館 本展は当館のみでの開催となります
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日本彫刻の近代
展覧会について 日本には古来、仏像、神像、建築装飾、置物など、今日「彫刻」と総称されるさまざまな表現が存在しています。しかし、祈りのための彫像や日常の愛玩物ではなく、西洋的、近代的な意味での純然たる鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が本格的に移入されはじめたのは、「絵画」よりも遅く、明治30年代になってからのことでした。それと前後して、象牙の置物や根付などの工芸美術品が外国向けの輸出品としてもてはやされたり、歴史的偉人や事績を顕彰するための記念碑彫刻が推奨された時代などもあり、彫刻というジャンルが、芸術家個人の自由な表現として認められるのは、ようやく明治末年から大正初めにかけて、荻原守衛や高村光太郎らの活躍をみてからでした。その後、大正から昭和にかけての日本彫刻の歩みも、決して平坦なものではありません。ロダンの弟子のブールデルや、マイヨールらに学んだ彫刻家たちが、20世紀の思潮を持ちかえる一方、伝来の木彫界でもさまざまな変転があり、また戦後になると、多種多様な素材・技法による抽象表現が現われてきました。 この展覧会は、幕末・明治期から1960年代までの近代日本彫刻史を、68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返りながら、この分野における「近代」とは何であったかというテーマに、さまざまな角度から光を当てようとするものです。絵画史と比較すると、日本の近代彫刻史を通覧する試み自体が少なく、また、研究成果の蓄積も、残念ながら十分とはいえません。本展が、日本彫刻における近代について改めて見直すきっかけとなり、彫刻芸術の魅力を広く紹介する機会となれば幸いです。 ここが見どころ 日本の近代彫刻100年の100点 まとめて見る機会のなかなか少ない日本の近代彫刻。本展では高村光雲の代表作《老猿》(重要文化財)をはじめ、貴重な作品を数多く各地から集め、明治からの日本近代彫刻100年間の歩みを、100点の作品でたどります。 多様な主題、材質、技法 日本の近代彫刻は、100年の間に多様に展開しました。そのため本展で紹介する作品は、主題も宗教的なものから肖像、動物、そして抽象まで幅広く、素材も木、石、ブロンズ、象牙、鉄、アルミなど多岐にわたります。さらに、高さ3mにも及ぶ竹内久一《神武天皇立像》からわずか7cmの高村光太郎《柘榴(ざくろ)》まで、実に多様な作品が集まります。 カタログを一般書籍として刊行 日本の近代彫刻史の教科書をめざした詳細なカタログを淡交社から一般書籍として刊行。書店でもお求めいただけます。3つの巻頭論文と時代別の8つの論考、そして個別のエピソードを紹介したコラムなど、読み応えのある一冊です。 展覧会構成 I 「彫刻」の夜明け 明治初期に西洋から伝えられた「彫刻」という概念と、それまで日本に存在した仏像や人形や置物などとの間で、作家たちは新しい表現を模索し始めました。こうした黎明期の取り組みを、宮川香山(初代)、高村光雲、石川光明などの作品によって紹介します。 Ⅱ 国家と彫刻 明治20年代頃から、近代国家体制の整備の一環として、権力者の像や歴史や神話と関連する主題の銅像が全国に設置されていきました。高村光雲、竹内久一、大熊氏廣などの作例を、実際の銅像は移動不可能なため、試作品や関連作品、写真などによって紹介します。 Ⅲ アカデミズムの形成 1907(明治40)年開設の文部省美術展覧会(文展)で活躍した新海竹太郎、朝倉文夫、建畠大夢、山崎朝雲らの作品を紹介します。展覧会制度の整備によって、特定の個人を顕彰する銅像的なものから鑑賞のためのものへと、彫刻は変化していきました。 Ⅳ 個の表現の成立 明治時代末から大正時代前期にロダンの芸術が紹介され、作家の個性と内面の表現を重視する新しい彫刻思想が広まりました。高村光太郎、荻原守衛、中原悌二郎、戸張孤雁など、この潮流の中で制作した作家たちの作品を紹介します。 Ⅴ 多様性の時代 大正後期から昭和前期にかけての時期は、ロダンの紹介から時を経て、技法や題材が再検証された時代です。高村光太郎、石井鶴三、橋本平八など、伝統と近代とをめぐって葛藤しながら、個性を探求していった作家たちを紹介します。 Ⅵ 新傾向の彫刻 1920年代に西洋のモダニズムの影響を受け、従来の彫刻概念を変えようとした仲田定之助らの前衛的な作品や、都市の近代化の中で彫刻と建築との総合を目指した団体「構造社」の作家たちの作品を紹介します。 Ⅶ 昭和のリアリズム ブールデル、マイヨール、デスピオといったロダン以後のフランス近代彫刻の影響を受けながら、大戦間の時代に日本人彫刻家としてのアイデンティティを模索していった高田博厚、柳原義達、佐藤忠良、舟越保武などのヒューマニスティックな作品を紹介します。 Ⅷ 抽象表現の展開 きわめて多様に展開した戦後の抽象表現を「抽象彫刻の草創期」、「転換期――彫刻の「表面」をめぐって」、「物質と空間――1960年代後半~」の三つに分け、堀内正和、建畠覚造、豊福知徳、若林奮らの作品を紹介します。 イベント情報 パネル・ディスカッション 2007年12月8日(土) 13:00-16:00 当館講堂 黒川弘毅(彫刻家、武蔵野美術大学教授)、田中修二(大分大学教育福祉科学部准教授)、古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)、松本透(当館企画課長) 聴講無料、申込不要、先着150名 ギャラリー・トーク いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要 大谷省吾(当館主任研究員) 2007年11月30日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー 松本 透(当館企画課長) 2007年12月14日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2007年11月13日(火)~12月24日(月) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日 *2007年12月24日(月・振休)は開館 一般850(700/600)円、大学生450(350/250)円、高校生250(150/100)円 中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方と付添者1名は無料*それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金 本展観覧券で、当日に限り、「天空の美術」、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧いただけます 観覧券は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスにて取り扱います(一部店舗を除く)*前売券は、9月19日(水)から11月12日(月)まで 東京国立近代美術館、日本経済新聞社 すでに宮城県美術館(2007年8月7日~9月17日)、三重県立美術館(2007年9月26日~11月4日)で開催され、当館が最終会場です
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天空の美術
展覧会について 星空を見上げ、はるか遠い世界に思いをめぐらせることはありませんか。また、流れる雲に思いがけないかたちを見出すことはありませんか。ひとは古くから、天空の世界に刺激を受けてきました。とりわけ美術家たちは古くから、この世を超えた世界へのあこがれを託したり、かたちも重さもない空の高さや星の光をいかに表すか追求したりと、さまざまなかたちで表現を行ってきました。この展覧会では、20世紀初頭から今日までの、空や星、雲をテーマにした絵画・写真・オブジェ約40点を集め、ご紹介します。 下記の作品については、展示期間が限定されていますのでご注意ください。 北脇昇《劫火2》10月27日‐11月18日《月2》11月20日‐12月2日《劫火1》12月4日‐12月24日 野村仁《'moon' score(月の譜)dec. 19, 1975~ dec. 31, 1976》10月27日‐11月18日《'moon' score(月の譜)jan. 1, 1977 ~ jan. 27, 1977》11月20日‐12月24日 展覧会構成 彼方へ ひとは空を見上げるとき、地上で営まれる日常生活から離れ、人間の尺度を超えた無限の広がりや時間の流れに思いをはせています。モダンな和服姿の女性たちが天体望遠鏡をのぞきこみ、彼方へと視線を投げる、太田聴雨《星をみる女性》。切手にもなった人気作品です。他に自らと姉、恋人をオリオン座の三つ星に見立てた関根正二の《三星》(1919年)や、アメリカの作家ジョゼフ・コーネルが星への旅を夢想して作ったオブジェ《ウィーンのパン屋》(1950年)などを展示します。 定点観測 刻々と移り変わって二度と同じすがたをとることのない雲。そして、何万年ものあいだ変わらぬ秩序で回転を続けてきた星たち。一瞬と永遠という、一見相反するものをとらえるため、ひとは定点観測――雲や星を長い期間同じ精神的な構えから見続けること――という方法を見出しました。アメリカ写真の父、アルフレッド・スティーグリッツが雲を写した名作「イクィヴァレント」シリーズ、「イクィヴァレント」へのオマージュとして撮り始められた川田喜久治の「ラスト・コスモロジー」シリーズ(トップ画像)、月の動きを五線譜上の音符に見立てた野村仁《‘moon’ score(月の譜)1979.1.1》(1981年)など、おもに写真の連作によって表現された雲と星のすがたをご紹介します。 光をつかまえる 絵具とキャンバスという物質を、青空とそこに満ちる光という手に触れることのできないものに変換しようとした、小林正人の《絵画=空》。今回は作家自身のセレクションにより、《絵画=空》を、制作の原点である卒業制作《天使=絵画》(1984年、個人蔵)と共に展示します。 イベント情報 キュレーター・トーク 2007年11月11日(日)11:00-12:002007年12月21日(金)18:00-19:00 ギャラリー4 蔵屋美香(当館主任研究員) いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要 アーティスト・トーク 本展出品作家である小林正人さんのアーティスト・トークを開催します。 11月02日(金) 18:30-19:30 2F 所蔵品ギャラリー アーティスト:小林正人(画家) ギャラリー内で作品を前に、作者自身にお話をうかがう好評企画「アーティスト・トーク」。13回目となる11月2日(金)は、画家・小林正人(こばやし まさと)(1957- )さんをお迎えします。昨年度購入したばかりの《Unnamed #7》(1997年)を前に、「天空の美術」展出品の《絵画=空》(1985-86年)など他の作品の話題も交えながら、ご自身の創作の秘密について語っていただきます。夕刻からの開催になります。みなさまぜひ竹橋までお越しください。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館本館 ギャラリー4(2F) 2007年10月27日(土)~12月24日(月) 月曜日、ただし12月24日(月・振休)は開館 一般 420円(210円)大学生130円(70円)高校生70円(40円)中学生以下、65歳以上および障害者とその付添者(原則1名)の方は無料。 それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 本展の観覧料で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」展(本館、所蔵品ギャラリー)もご覧ただけます。 お得な観覧券「MOMATパスポート」でご観覧いただけます。 「天空の美術」展および、所蔵作品展「近代日本の美術」展のみ11月3日(土・文化の日)、11月4日(日)、12月2日(日) 東京国立近代美術館
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平山郁夫:祈りの旅路
展覧会について 展覧会の構成と見どころ 今年、平山郁夫画伯は、77歳の喜寿を迎えられました。また絵を学びはじめてから60年にあたります。本展は、これを記念し、その画業を回顧するものです。 平山画伯は、はじめ、仏教に関する伝説や逸話にもとづく抒情性豊かな作品で大きな注目を浴びました。その後、玄奘三蔵のインドへの求法の道やシルクロードを旅し、そこで繰り広げられた雄大な歴史の流れに感銘を受け、風景としての歴史画ともいうべき独特の画風をつくりあげました。それは奈良・薬師寺の玄奘三蔵院の大壁画となって大きな実を結ぶことになります。近年は日本の文化にも大きな関心を寄せ、日本各地に取材した作品に新しい境地を切り開いています。 こうした平山画伯の旺盛な制作活動の根底にあるもの、それは、広島での被爆を経たうえでの、生きること、生かされていることへの問いかけと、その経験から導かれた平和への切実な祈りです。その想いが率直にあらわされた《広島生変図》、《平和の祈り―サラエボ戦跡》などの作品を見るとき、平山画伯が60年にわたる制作活動において表現しようとしてきたものに、私たちは改めて気づかされるのです。 この展覧会では代表的な作品のなかから約80点が出品されます。「仏陀への憧憬」、「玄奘三蔵の道と仏教東漸」、「シルクロード」、「平和への祈り」の4章構成で、平山画伯の芸術の軌跡をたどります。 会期中展示替えがあります。詳細は出品作品リスト をご覧ください。 都合により、次のとおり展示期間が変更になりました。《流水無間断(奥入瀬渓流)》(no.74):10月14日まで。《黎明讃岐路 四国霊場八十八番 大窪寺》(no.75):10月16日から ここが見どころ 画業60年、代表作を一堂に 画業の転機となった《仏教伝来》(1959年)をはじめ、燃えさかる炎に包まれた広島の鎮魂を願う《広島生変図》(1979年)、近作《平成洛中洛外図》(2004年)など、平山郁夫の画業を振り返る上で欠くことのできない代表作が、全国から集まります。 《大唐西域画》7場面13画面を、一挙公開 奈良・薬師寺の玄奘三蔵院伽藍におさめられる《大唐西域壁画》は、平山郁夫が構想から完成まで約30年の月日を費やした畢生の大作です。玄奘三蔵の辿った苦難の道のりを、壮大な大陸西域の風景として描くこの作品を、平山郁夫は壁画完成から7年を経た今年、新たに小品として再制作しました。今春、所蔵館で初公開されたのにつづく、全7場面13画面の一挙公開となります。 シルクロードの過去と現在を巡る旅 平山郁夫は学術調査団へ参加するなどしてシルクロード上の各地へおもむき、長い年月をかけてこの道を、作品によって点から線へと繋いでゆきました。なかには、捨て置かれた廃墟に触発され、文明の栄えたありし日の都市の姿を描いた作品もあります。シルクロードの東と西、過去と現在を巡る旅を、本展でお楽しみください。 大画面の迫力と、繊細な描写 平山郁夫ほど、大画面、ことに屏風形式の作品を精力的に描いている日本画家はいないといっていいかもしれません。そしてその大画面には、実に繊細な描写がなされています。とりわけ1960~70年代の作品に顕著に見られるこの表現は、小さな図版では見て取ることができません。ぜひ、会場でじかに接してご覧ください。 展覧会構成 第1章 仏陀への憧憬 1959年の《仏教伝来》の制作を機に、平山郁夫は1960年代後半にかけて、釈迦の生涯を題材に多くの作品を制作する。しかしそれは信仰の対象としての仏画ではない。描かれているのは釈迦という一人の人間のドラマである。平山は、苦行する釈迦の姿に、被爆の後遺症を背負った自身の人生を重ねあわせることで、劇的であると同時に実感としての生の重みをあわせもった重厚で深みのある画面をつくり出した。これらの作品は次のステップ、玄奘三蔵の歩いた道をたどり、シルクロードを踏破する足がかりともなってゆく。 第2章 玄奘三蔵の道と仏教東漸 平山郁夫は《仏教伝来》の制作以降、玄奘三蔵の足跡を自らたどり、絵画化したいという願いを抱くようになる。それは玄奘の苦難に満ちた旅路と、挫けることのなかった不屈の意志を自らの人生に重ねようとしたのであろう。またそれは、画家としての果てしない道を歩んでいくために意識的に自分自身に課した闘いであったかもしれない。この巡礼にも似た旅から生み出された数々の作品には、成功した玄奘の苦闘や歓喜への共感ばかりではなく、志を半ばに中途で倒れていった多くの僧たちの願いもこめられている。 第3章 シルクロード シルクロードは、古くから東西を結ぶ交通路であり、文化が行きかう交流の道でもあった。平山郁夫にしてみれば玄奘三蔵の道がシルクロードと重なる以上、この道を歩むことになるのは当然のなりゆきだったろう。平山は、文明や歴史は名もなき一人一人の想いの積み重ねからなると考え、画面にそれをうつしとろうとする。平山の描く風景画や人物画が分厚い歴史の確かな堆積をも感じさせるとすれば、その作品はかつて描かれた伝統的な歴史画とは異なる、平山が新しく切り開いた現代の歴史画ということもできよう。 第4章 平和への祈り 《仏教伝来》と《平和の祈り―サラエボ戦跡》には、平和への願いが率直にあらわされている。平山郁夫が抱く平和への想いは、真理を伝えようと求法の道に殉じた人々やシルクロードの繁栄を支えた名もなき人々の想いを、荒涼とした大地に聞こうとすることとも共通している。また、仏教説話にもとづく連作を描きはじめた頃、原爆で死んでいった人々のために、後世に残るたった一枚の絵を描こうと苦しんだことにもつながっている。平山の制作の根底にあるもの、それは平和への祈りである。 作家紹介 平山郁夫 略歴 1930(昭和5)年 6月15日、広島県豊田郡瀬戸田町(現尾道市瀬戸田町)に生まれる1945(昭和20)年 学徒勤労動員の作業中、広島陸軍兵器支廠で被爆1947(昭和22)年 東京美術学校(現東京藝術大学)に入学1952(昭和27)年 同校を卒業、前田青邨に師事1953(昭和28)年 第38回院展に《家路》が初入選、以後入選を重ねる1959(昭和34)年 第44回院展に《仏教伝来》を出品し、高く評価される1964(昭和39)年 日本美術院同人に推挙される1973(昭和48)年 東京藝術大学教授に就任する1984(昭和59)年 奈良・薬師寺の玄奘三蔵院壁画制作に着手1989(平成元)年 東京藝術大学学長に就任する1993(平成5)年 文化功労者として顕彰される1996(平成8)年 日本美術院理事長に就任する1997(平成9)年 故郷の瀬戸田町に平山郁夫美術館が開館1998(平成10)年 文化勲章を受章する2000(平成12)年 12月31日、玄奘三蔵院《大唐西域壁画》完成2007(平成19)年 東京国立近代美術館と広島県立美術館で回顧展を開催 イベント情報 講演会 「平和への祈り」 平山郁夫 2007年9月20日(木)終了しました。 14:00-15:00 学術総合センター・一橋記念講堂 (東京都千代田区一ツ橋2-1-2) 定員500名。聴講無料。要申し込み。 「平山郁夫 祈りの旅路」 尾崎正明(当館副館長・本展企画者) 2007年9月29日(土)終了しました。 14:00-15:30 当館講堂 聴講無料。定員150名。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2007年9月4日(火)~10月21日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 9月10日(月)、9月25日(火)、10月1日(月)、10月15日(月)*9月17日(月・祝)、18日(火)、24日(月・振休)、10月8日(月・祝)、9日(火)は開館いたします 一般1,300円(900円)、大学生900円(600円)、高校生500円(350円)中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料。それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください。*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。*本展の観覧券で、入館当日に限り、同時開催の「崩壊感覚」(2F ギャラリー4)、所蔵作品展「近代日本の美術」(4-2F)もご覧いただけます。*観覧券は東京国立近代美術館の他、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、CNプレイガイドなどでもお求めいただけます。 東京国立近代美術館、読売新聞東京本社 財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団 日本サムスン、光村印刷 広島県立美術館 2007年11月2日(金)~12月24日(月・振休)
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リアルのためのフィクション
展覧会について 本展は、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館のコレクションを中心に、現在活躍中の4人の女性作家が1990年代に制作した作品、約15点によって構成される小企画展です。1990年代は、アートがかつてないほどに多様化した時代と言われます。むしろ混沌といってもよいかもしれません。その背景には、情報技術の急速な発達ばかりでなく、東西冷戦構造の解体などが複雑にからみあっています。「リアル」なものが捉えにくくなった時代に、アーティストたちはどのような表現を生み出そうとしてきたのでしょう。本展で紹介する4人のアーティスト――イケムラレイコ、ソフィ・カル、やなぎみわ、塩田千春――は、扱う素材も、「リアル」なものに迫ろうとするアプローチの仕方も、さまざまですが、彼女たちはみな、ある種のフィクション(虚構)をしつらえて、それを通して逆説的に、私たちに「リアル」なものの扉を開く鍵を示しているようにみえます。リアルのためのフィクション。彼女たちが静かにあるいは饒舌に語りかける物語は、あなたの「リアル」を感じる力を揺り動かすことでしょう。 イケムラレイコの生み出す少女たち。あるときは絵画で、あるときは彫刻で提示されるその少女たちは、作者自身の分身でしょうか。彼女たちは、闇の中に横たわり、あるいは佇みながら、ひたすら内なる声に耳を傾けているようにも見えます。 ソフィ・カルは、あるルールを決めてそれに基づいて行動し、その記録を作品とします。フィクションがドキュメント化されることで、虚実の境目がしだいに曖昧となり、作品を見る私たちを幻惑します。 やなぎみわは、きわめて人工的な空間の中に、物思いにふけるようなエレベーターガールたちを配します。消費空間の中で商品と私たちをつなぐ役割の彼女たちもまた人工的に作られた商品のような相貌を帯びるのです。 塩田千春は、大量の泥を浴びるパフォーマンスを映像作品にしました。身を清めるはずの入浴によって泥まみれとなるその映像は、見る者に驚きを与えますが、それはまた同時に、近代文明に囲まれた生活の中で、大地に還ろうとする儀式のようにも見えます。 ここが見どころ ・東京国立近代美術館のコレクションに、普段東京では眼にする機会の少ない京都国立近代美術館、国立国際美術館の作品を加えた、国立美術館3館が所蔵する、豊かな現代美術のコレクションの一端をご覧いただけます。 ・今回ご紹介する作品は、絵画、彫刻、写真、文字テキスト、映像と、実にさまざまな手法によって作られています。本展は、コンパクトながら、多様化する現代美術の状況を見て取るための、好い機会となるでしょう。 ・展覧会の内容をやさしく解説したパンフレット(豪華12ページ!)を、会場で無料配布します。ぜひ、鑑賞のお供にご利用ください。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 ギャラリー4 (2階) 2007年3月10日(土)~5月27日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)※入館は閉館30分前まで 月曜日 ただし3月26日(月)、4月2日(月)、4月30日(月)は開館します 一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生70(40)円中学生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料。 それぞれ入館の際、学生証、健康保険証、運転免許証、障害者手帳などをご提示ください。 ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 本展の観覧料で「所蔵作品展 近代日本の美術」もご覧いただくことができます。 「生誕100年 靉光展」観覧券で、当日に限り、本展および「所蔵作品展 近代日本の美術」をご覧いただけます。 4月1日(日)、4月29日(日・昭和の日)、5月6日(日)、5月18日(金・国際博物館の日) 「リアルのためのフィクション」展、所蔵作品展のみ。「生誕100年 靉光展」は観覧料が必要です。 東京国立近代美術館
