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形象のはざまに:現代美術への視点 3

芸術表現一般を根底から支えるものとしての形象をテーマにすえ、1980年代後半以降の日本の美術状況の本質に迫ることを試みた。「現代美術への視点」シリーズの第3回目として企画された本展は、意欲的な仕事を発表しつつある中堅、若手の作家15名に焦点を当てた。 開催概要 東京国立近代美術館 1992年9月22日‒11月8日(42日間) 11,452人(1日平均273人) 28.0×22.6cm (143) p. 形象について / 本江邦夫 線について:かたちから形象へ / 松本透 絵画、隣人としての / 中林和雄 [美術]「現代美術への視点─形象のはざまに」展 基準なき時代に / (Y) 東京新聞(夕) 1992年9月25日 [美術]「形象のはざまに」展 表現手段と空間 柔軟にとらえる / (菅)読売新聞(夕) 1992年9月30日 [美術]「形象のはざまに」展 しっくりと落ち着いた雰囲気 / 三田晴夫 毎日新聞(夕) 1992年10月5日 [美術]「形象のはざまに」展 躍動見せる「気」 / (三) 朝日新聞(夕) 1992年10月6日 [美術]「形象のはざまに」展 同時代の感覚 大画面で表現 / (吉) 朝日新聞(夕刊大阪版) 1992年12月19日 [crossing]形象のはざまに 展覧会を実見して気づいたこと / 嶋崎吉信 Art & Critique 21 1992年12月 [crossing]形象のはざまに 形象のはざまに─笠原たけしを中心に /美濃ちどり Art & Critique 21 1992年12月 モダニズムの彼方 絵画が絵画でありはじめる根源的地点 / 田野倉康一 図書新聞 2129 1992年12月12日 [Art] Modern art in a traditional vein / Lorna Ryan, The Japan Times, October 18, 1992 84点 赤塚祐二 朝比奈逸人 伊藤誠 岩本拓郎 笠原たけし 黒川弘毅 佐川晃司 清水誠一 鷲見和紀郎 高見沢文雄 中上清 中村一美 橋本夏夫 丸山直文 全寿千 / 15人 本江邦夫 建畠晢 中学・高校美術科担当教諭のための美術鑑賞講座 / 本江邦夫 京都国立近代美術館 国立国際美術館

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ルネ・ラリック展

モダンデザインの巨匠、ルネ・ラリック(1860‒1945)の大規模な全貌展。アール・ヌーヴォー期のジュエリー、アール・デコ期のガラス作品を中心に、ジャポニスム的要素、ルネサンス美術、オリエント美術、象徴主義絵画、さらにギリシャ神話などの古代の物語からのテーマによるものなど、幅広い作品が展示された。グルベンキアン美術館、パリ装飾美術館などから大量の出品を受け、また巨大なガラスの噴水を入り口付近に展示し注目された。 開催概要 東京国立近代美術館 1992年5月23日‒7月12日(44日間) 122,980人(1日平均2,795人) 26.5×18.1cm (348) p. 二つの時代のラリック / イヴォンヌ・ブリュナメール ラリックとカルースト・グルベンキアン / マリア・テレザ・ゴメス・フェレイラ ラリックのジャポニスム / 樋田豊次郎 ラリック、創作者、魔術師 / エヴリーヌ・ポセメ 工房から工場へ:ガラスの変容 / ジャン=リュック・オリヴィエ [展覧会]宝飾とガラス工芸 / 朝日新聞(夕) 1992年6月12日 詩情あふれるガラス工芸の世界 / 朝日新聞 1992年6月30日 [美術]ルネ・ラリック展 小宇宙表現した宝飾類 / (虻) 朝日新聞(夕) 1992年7月7日 ルネ・ラリック展 / 稲賀繁美 新美術新聞 638 1992年5月21日 317点 ルネ・ラリックのデザインと技法 / 樋田豊次郎 アール・ヌーヴォーの宝飾 ─ ルネ・ラリックを中心に / 友部直 ルネ・ラリック ─ アール・ヌーヴォーの華 / 樋田豊次郎 ルネ・ラリック ─ アール・デコの香り / 樋田豊次郎 中学・高校美術科担当教諭のための美術鑑賞講座 / 樋田豊次郎 日本経済新聞社

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イサム・ノグチ展

日本人を父に、アメリカ人を母にもつ日系アメリカ人で、彫刻、環境芸術、舞台美術、陶芸やインテリアなど幅広い分野で活動した芸術家、イサム・ノグチ(1904‒88)の没後初めての本格的回顧展。初期から晩年までの展開を追いながら、その作品の形態的な語彙を分類し、全体を6部で構成して系統的に理解できるように努めた。石、ブロンズ、木、土などさまざまな素材による彫刻のほか、大きなプロジェクトの模型、絵画を含む約90点が出品された。 開催概要 東京国立近代美術館 1992年3月14日‒5月10日(50日間) 70,166人(1日平均1,403人) 28.0×23.3cm (222) p. 間の詩学:イサム・ノグチの彫刻 / 空間について / 髙橋幸次 [美術]イサム・ノグチ展 実質的空間との共同 / (Y) 東京新聞(夕) 1992年3月27日 [美術]イサム・ノグチ展 全体像に迫る第一歩 / 三田晴夫 毎日新聞(夕) 1992年4月3日 イサム・ノグチ展 日本的簡潔さ持つ現代性 / 滝悌三 日本経済新聞 1992年4月7日 [美術]イサム・ノグチの回顧展 「地球人」の幅広い空間 / (菅) 読売新聞(夕) 1992年4月10日 [from Exhibition]イサム・ノグチ 「数寄者」の空間 精神のよりどころとしての〈環境芸術〉 / 関根伸夫 美術手帖 656 1992年7月 [Leisure] Suddenly Japan Recognizes Its Own Artists / Carol Lutfy, International Herald Tribune, March 20, 1992 91点 中学・高校美術科担当教諭のための美術鑑賞講座 / 髙橋幸次 朝日新聞社

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古賀春江:創作のプロセス 東京国立近代美術館所蔵作品を中心に

大正後半から昭和初期にかけて、海外の動向に鋭敏に反応しながら理知と抒情に満ちた作品を描いた前衛画家、古賀春江(1895‒1933)。当館は1955年に古賀春江同好会(高松太郎、川端康成ら古賀の旧友6名)より多数の作品・資料の寄贈を受け、その後もコレクションの拡充に努めてきた。本展はそのコレクションを中心に、油彩画29点とスケッチブック等の資料を含む水彩・素描約90点によって、改めて古賀の知的遍歴をたどった。 開催概要 東京国立近代美術館 1991年12月21日‒1992年3月1日(55日間) 17,705人(1日平均322人) 24.5×21.5cm (136) p. 序論:古賀春江 ─ 変幻の背後にあるもの / 田中淳 [美術]古賀春江展 昭和初期の匂い漂う / (虻) 朝日新聞(夕) 1992年1月7日 [美術]「古賀春江─創作のプロセス」展 懐かしのモダニズム / (K) 東京新聞(夕) 1992年1月10日 [美術]「古賀春江─創作のプロセス」展をめぐって 「昭和の前衛」の青春譜 / 日野耕之祐 産経新聞 1992年1月27日 [展覧会季評]古賀春江展─創作のプロセス / 松浦寿夫 季刊みづゑ 962 1992年3月 [Art] Koga show traces creative process / Julia Cassim, The Japan Times, February 2, 1992 124点 中学・高校美術科担当教諭のための美術鑑賞講座 / 田中淳

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荒川修作の実験展:見る者がつくられる場

ニューヨークで約30年間活動を続け、世界の現代美術にインパクトを与え続けてきた荒川修作(1936‒2010)が、1990年当時繰り広げていた知覚に関する「実験」を集大成した企画。1960年代初頭の作品と、知覚を検証するための装置とも言える近作によった本展は、それ自体が一つの実験場を構成し、見る者に自らの知覚と身体を問い直させる場となった。 開催概要 東京国立近代美術館 1991年11月1日‒12月10日(34日間) 14,652人(1日平均431人) 33.0×23.8cm (334) p. 序論:空間を形成する─荒川修作のモティーフの諸層をたどる試み / 髙橋幸次 アラカワを見る / C. W. ハクストハウゼン 空間的出来事の留保 / ジャン=フランソワ・リオタール 現代美術のなかで 荒川修作展の意味 / 針生一郎 公明新聞 1991年11月26日 「精神のディズニーランドに」 NY在住の荒川修作氏 東西国立美術館で個展 / 田中三蔵 朝日新聞(夕) 1991年11月28日 荒川修作の実験展 知覚に挑む美術の極北 / (M) 産経新聞 1991年12月2日 [美術]「荒川修作の実験」展 曖昧さの装置 / (Y) 東京新聞(夕) 1991年12月6日 [今週のArt情報]今なお健在 ! 反芸術家・荒川修作の偉業を知る / 鴨橋才蔵 週刊東京ウォーカー 1991年11月5日 荒川修作展 “見るものをつくる”荒川の暴力的構築物は確実に美術の枠を越え始めた / 小山登美夫 ぴあ 1991年11月7日 囚われの日常から解き放つための実験装置 / 開発チエ City road 21-12(249) 1991年12月 荒川修作の実験展─見る者がつくられる場 ぶっちぎりの独走 / (西) 新美術新聞 624 1991年12月11・12日 [特別企画]荒川修作 「見る者がつくられる場」読解 / 工藤順一 美術手帖 650 1992年2月 [Art Perspective]見る者がつくられる場 荒川修作の実験展 / 難波英夫 ダンスマガジン 2-3 1992年3月 [The Creators] Shusaku Arakawa Painter and Sculptor, Playing with Destiny / Tsuyuhiko Hinatsu, Asahi Evening News Sunday ed., December 1, 1991 70点 (対談)荒川修作 髙橋幸次 京都国立近代美術館

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移行するイメージ:1980年代の映像表現

1980年代の美術において重要な局面をなした、写真媒体を用いる作家を紹介した。彼らは写真の自立や芸術性の確立といった従来の枠組みを離れ、たとえば身辺に遍在する写真イメージを、社会を覆う巨大な消費システムの象徴的断片と捉えて作品に導入する。イメージを流通させるシステムそのものに干渉し、同時代の文化や社会が直面する問題に対し批評的手段となるような、新しい写真表現を浮かび上がらせた。 開催概要 東京国立近代美術館 1990年11月20日‒12月16日(24日間) 6,431人(1日平均268人) 29.6×21.0cm (152) p. 序論 / 河本信治 古い魅力の復活 / アラン・サヤグ [文化往来]多様な方向性、写真を用いた美術作品 / 日本経済新聞 1990年12月15日 67点 小山穂太郎 野村仁 森村泰昌 デニス・アダムス エヴェルガン バーバラ・エス ソフィー・カル ジェフ・クーン ハンナ・コリンズ ロリー・シモンズ トーマス・シュトゥルート マイク&ダグ・スターン アンドレ・セラノ ヘレン・チャドウィック パトリック・トサニ カレン・ノール アン・ハミルトン ペーター・フィシュリ&ダヴィッド・ヴァイス リチャード・プリンス ベルンハルト&アンナ・ブルーム クリスチャン・ボルタンスキー シャルル・マトン アネット・メサジェ オリヴィエ・リション ジョルジュ・ルース ルイーズ・ローラ / 26人(組) 京都国立近代美術館

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写真の過去と現在

発明後150年以上を経た写真について、その歴史を網羅する通史展としてではなく、1990年代における写真の存在を問い直し、その社会的意味から審美的意味までを改めて広く探ろうと試みた展覧会。そこには写真を育んだ近代という時代の諸相が色濃く反映されている。1920年代から90年までの作品を5つのセクションに分けて構成した。 開催概要 東京国立近代美術館 1990年9月26日‒11月11日(41日間) 15,639人(1日平均381人) 30.0×22.5cm (195) p. 序論:写真の「過去と現在」 / 松本透 [美術]「写真の過去と現在」展 問い直す写真の価値 / 田中幸人 毎日新聞(夕) 1990年9月28日 写真の過去と現在 / 柳本尚規 公明新聞 1990年10月9日 [文化往来]「写真とは」考えさせる展覧会 / 日本経済新聞 1990年10月12日 [展覧会季評]「写真の過去と現在」「マン・レイ」ほか / 松浦寿夫 季刊みづゑ 957 1990年12月 [Arts] Photo show highlights expression / Diane J. K. Makovsky, The Japan Times, October 14, 1990 Photography Exhibitions / Kyoko Nakajima, The Daily Yomiuri, October 25, 1990 Art Photos in the Land of Cameras / Kay Itoi, International Herald Tribune, October 27 ‒28, 1990 247点 42人(組) 京都国立近代美術館

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手塚治虫展

日本が世界に誇るマンガ家手塚治虫(1928‒89)を「イメージの思想家」として捉え、「1 冒険とロマン」「2 理想を求めて(アポロン的世界)」「3 現実のなかで(ディオニュソス的世界)」「4 生命の詩(輪廻転生の世界)」「5 歴史の中へ」の5つのカテゴリーにおいて、約1,500ページの原画を中心に構成展示した。美術館がマンガを展示する方法として原画という“オリジナル”にこだわり、選択した結果であり、これには賛否多様な反響があったが、国立美術館がマンガを取り上げたこととそのコンセプトは、大部なカタログとあいまっておおむね好意的であり、その後の手塚研究と美術館におけるマンガ展に大きな足跡を残した。 開催概要 東京国立近代美術館 1990年7月20日‒9月2日(39日間) 128,804人(1日平均3,303人) 34.3×25.4cm (351) p. 美術館活動の中の手塚治虫展 / 岩崎吉一 手塚治虫:ひとつの二重性 / 本江邦夫 「鉄腕アトム」:作品解釈のための試論 / 近藤幸夫 [しごとの周辺]ヒューマニズム / 桜井哲夫 朝日新聞(夕) 1990年7月30日 イメージ思想家・手塚治虫 /吉弘幸介 読売新聞(夕) 1990年7月31日 [美術]手塚治虫展 並でない画家としての構成力 / 田中幸人毎日新聞(夕) 1990年8月3日 [プリズム]手塚漫画の新イメージ/漫画虫 毎日新聞(夕) 1990年8月7日 [美術]手塚治虫展 美術館の歴史を変えた / 奥田裕 産経新聞 1990年8月9日 [色いろ調]漫画であることの意味 / 安井収蔵 新美術新聞 580 1990年9月1日 [新美術時評]秘かに速やかに差し替えられた人種差別問題 / 木下直之 新美術新聞 591 1991年1月1・11日 [Arts] Truth, Justice, and the Comics / Azby Brown, Asahi Evening News, July 27, 1990 A Japanese Chronicle, in Cartoons / Kay Itoi, International Herald Tribune, August 25, 1990 約1,500点 日本雑誌協会 朝日新聞社

是非とも見ておくべき、東京国立近代美術館主催、の、コレクション、を中心、とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ、をめぐって

東京駅からここまで歩いてみました。酷暑の皇居の濠端を、和気清麻呂の銅像を傍目に、そのすぐそばの美術館を目指しました。紀元2600年を記念した銅像の隣には「国体擁護」とある碑が並んでいます。戦後80年の今年ですが、節目に関心のない筆者でも、暑さと清麻呂像にあてられて、遠い戦争の只中に置かれているような錯覚を起こしました。このあたりで戦争の匂いを嗅ぐことはそう難しくありません。 会場風景|5章 日常生活の中の戦争|撮影:木奥惠三 美術館の冷めた空気に我にかえりながら観覧した今回の展示は、丁寧に、戦中期から戦後に至る日本における美術の動向を、今では人々が知識を共有しているとは言えない歴史的文脈を整理しながら、専門的に過ぎずに提示しており、素晴らしいと思います。戦時の美術の分類について表を用いながら平易に解説し、植民地主義的な施策を続けた日本と、アジアとの視線の交差、観光や風景に潜む時局的文脈、憑かれたように劇的な表現を行う作家たち、女性の活動、そして戦後へと継続する問題に触れるなど、若い世代や、インバウンドの旅行者にも、通常は美術展で扱われない資料や解説なども提示しながらわかりやすく紹介していました。これまで様々な論議にさらされてきた作戦記録画を多く展示しながらも、それらの有無に問題を集約させてしまう粗雑な論議に陥らずに、率直なバランスのとれた展示を展開させています。おそらく多様な軋轢(あつれき)を抱えながら準備を進めたであろう担当諸氏の努力と配慮に敬意を払いたいと思います。多くの方にご覧いただきたい展示だと思いました。「戦争」の名の付かぬタイトルは誹(そし)りを受ける懸念もある一方、以前「美術と戦争」(姫路市立美術館、2002年)という展示を担当した筆者としては、「戦争」という言葉にばかり反応して「美術」の文脈を見過ごす来場者が多かった経験からみると、作品や資料に対峙して展示を冷静に見る仕組みとしては有効な面もあると感じました。先入観が支配しやすいこのような展覧会を「見る」ことはそうたやすいことではありません。 作戦記録画は連合国≒アメリカが戦利品として持ち帰った153点の作品群に対して日本側が返還要求を行い、1970年に無期限貸与として日本に移送され、現在に至るまでの約60年間、常に一定の関心を集め続けたという意味では特異な作品群です。一方で、これらの作品群がその注目に値する形で本来の姿を見せてきたとは思えません。今回の展示はその問題への一つの答えとしての役割を果たしていると考えます。作戦記録画の歴史文脈化、次世代への問題の継承はこれまでの長過ぎる放念の中で喫緊(きっきん)の課題でした。 戦勝国の欧米でも従軍画家などによる視覚的表現が為されましたが、当たり前のように歴史的記録として社会に定位しました。一方ドイツでは連合軍に接収された8700点を超える作品群が戻されていますが、それらが本格的に展示され、検討されることはほぼありません。世界的文脈の中でも1930年代–40年代の戦中期の視覚的表象の問題は未だ微妙なバランスのもとに置かれています。 量的にも内容的にも企画展にふさわしいこの展覧会を、せめて普通の企画展として広報・周知を行い、図録を発行してもらいたかったという希望はぬぐえません。これらの欠如が、展覧会が「普通でない」ことを物語ります。展示は見なければわかりません。周知せずには潜在的関心にも届きません。図録なしでは見た記憶は消えてゆくだけです。「記憶をつむぐ」ことをうたうこの展覧会名は、一方で多くの方の眼を閉ざす自己矛盾の姿を呈しています。今回、東京国立近代美術館自身が半ば開いた扉を、閉じることはもちろんのこと、いつの間にか狭めてしまうようなことはあってはならないことです。 日本の美術において、戦争が終わったなどと言うことは出来ません。この展示は端緒にすぎないと考えています。このような企画、試みが継続されない限り、未知で不明な部分の多い、美術における昭和期の戦争の問題はわたしたちから遠く離れ、消えてゆくのみです。 会場風景|8章 記録をひらく|撮影:木奥惠三 向井潤吉の戦争末期の作品と戦後の民家シリーズの一作品の併置で展示が終わります。一見凡庸な形で締めくくられるこの終わり方こそが、現在まで戦争をあいまいな形で引きずり、問題を宙づりにして、行方を定められずにうろうろし続けるわたしたちの姿を表すように見えたのは暑中の思い過ごしなのでしょうか。

14の夕べ

歴史はいつも、夕べに生まれる…… 「未来派の夕べ」や「ダダの夕べ」、「9つの夕べ-シアターとエンジニアリング」など、美術における伝説的なイベントはいつも、「夕べ」におこなわれてきました。8月26日―9月8日の14日間、美術館は夕方から特別開館し、美術、ダンス、音楽、演劇、朗読など多彩なジャンルの「パフォーマンス」が繰り広げられます。 出演者はいずれも各ジャンルの第一線で活躍する作り手ですが、とりわけ楽譜、台本、舞踏譜、テキストといった「スコア」と、実際の演技や演奏において生じる「インプロヴィゼーション(即興)」、この両者の関係性から表現を捉えたときに、きわめて刺激的なパフォーマンスを見せるアーティストたちです。 普段は企画展がおこなわれる約1500㎡のギャラリーを会場に、14日間日替わりで14つのプログラムが用意されます。気鋭の若手による新作あり、歴史的作品の再演あり、その日限りの、つかの間の「劇場(シアター)」が毎夕立ち上がります。 企画展ギャラリー 見どころ 14日間日替わりのプログラム。各アーティストの出演は一回限り、連日見逃せません! 全てのプログラムを無料でご覧いただけます! 毎日17:00開館、メインプログラムは19:30頃から1~2時間を予定(各日の詳細は上記プログラム・スケジュールをご確認ください)。夏休みの方は夕方からゆったり、たっぷりお楽しみいただけます。またお仕事を終えられてからの方も、余裕を持ってご来館いただけます。 メインプログラム開始まで、エントランスホールをラウンジとし、ライブ、トークイベントなどを予定。またBEER MOMATにてフード&ドリンクを販売、夏の夕べに心地よいひと時をお過ごしいただけます。 プログラム・スケジュール 8月26日[日]19:30開演東京デスロック 「リハビリテーション」 演出|多田淳之介出演|夏目慎也、佐藤誠、石橋亜希子(青年団)、石橋志保(中野茂樹+フランケンズ)、Enric Castaya Orchestra 東京デスロック《再/生》2011年7月 STスポット 東京デスロック2001年設立。演劇を「現前=現象」の芸術と捉え、俳優の身体、時間、観客を含めた現象そのものを演劇作品として上演する。シェイクスピアなどの海外古典や国内の近・現代戯曲のほか、ネット上のテキストのコラージュや無言劇なども手がける。最新作「モラトリアム」では音楽家、ダンサー、現代美術家と共に8時間にわたる上演空間を構成。主宰・演出の多田は国内史上最年少で公立劇場の芸術監督に就任。海外、国内地域・教育機関での芸術活動にも積極的に取り組んでいる。 8月27日[月]19:30開演福永信/古川日出男/谷川俊太郎 福永 信1972年生まれ。著書に『アクロバット前夜』(新装版『アクロバット前夜90°』)、『あっぷあっぷ』(村瀬恭子との共著)、『コップとコッペパンとペン』、『星座から見た地球』、『一一一一一』。編著に『こんにちは美術』全3巻。 古川日出男2011年7月9日、渋谷SARAVAH東京でのイベント「東へ北へ」よりPhoto: かくたみほ 古川 日出男 小説家。1966年生まれ。主な著書に『ドッグマザー』、『馬たちよ、それでも光は無垢で』(以上新潮社)、『LOVE』(新潮文庫、三島由紀夫賞)、『ベルカ、吠えないのか?』(文春文庫)、『アラビアの夜の種族』(角川文庫、日本推理作家協会賞・日本SF大賞)、『聖家族』(集英社)など。以前から文学の音声化に積極的に取り組み、2007年には雑誌「新潮」に商業文芸誌初となる朗読CD『詩聖/詩声』を特別付録として発表した。 谷川 俊太郎1931年東京生まれ。詩人。1952年『二十億光年の孤独』でデビュー。以後詩、エッセー、脚本、翻訳などの分野で文筆を業として今日にいたる。詩集に『21』、『ことばあそびうた』、『定義』、『みみをすます』、『日々の地図』、『はだか』、『世間知ラズ』、『minimal』など。 8月28日[火]20:00開演奥村雄樹 「河原温の純粋意識あるいは多世界(と)解釈」 出演|奥村雄樹 奥村雄樹《ジュン・ヤン 忘却と記憶についての短いレクチャー》2011年 奥村 雄樹1978年生まれ。2012年、東京芸術大学大学院博士後期課程修了。主な個展に2010年「くうそうかいぼうがく・落語編」(MISAKO & ROSEN)。主なグループ展に、2008年「釜山ビエンナーレ 2008 Expenditure (Sea Art Festival)」(釜山)、2009年「"Now that I'm by myself," she says, "I'm not by myself, which is good"」(ダイバースワークスアートスペース、ヒューストン)、「ラブラブショー」(青森県立美術館)など。2012年は東京都現代美術館(グループ展)、愛知県美術館(個展)、ポーランドのギャラリーラスターで発表予定。 ⇒公式ページ 8月29日[水]19:30開演No Collective 「Concertos No.4」 出演|伊藤珠里、河野聡子、杉原尚樹、寺西一、東保光、豊田奈千甫、中井悠、野々村之子、日向賢、北条知子、水内義人、百瀬文、葭原滋男、米子匡司、他 No Collective中井悠を中心とする音楽/パフォーマンス(その他)制作集団。現在はニューヨークが主な拠点。最近の活動として、東京で2008年に行なわれたコンサートの準備、公演、およびドキュメンテーションの過程を演劇として再構成した台本Concertos (Ugly Duckling Presse, 2011)の出版、アルゼンチンの作曲家/コレオグラファーEllen C. Covitoのアメリカ初となる音楽/ダンスコンサートの開催 (Panoply Performance Lab との共同キュレーション) など。日本での発表に、「気象と終身―寝違えの設置、麻痺による交通」(アサヒ・アートスクエア、2010年)など。 ⇒公式ページ 8月30日[木]19:00開演手塚夏子 「ただの「実験」がメディアになるのか?の実験」 ファシリテーター|手塚夏子実験の作成と試行|井出実、田仲桂 手塚 夏子1996年より、マイムからダンスへと移行しつつ、既成のテクニックではないスタイルの試行錯誤をテーマに活動を続ける。2001年より自身の体を観察する『私的解剖実験シリーズ』始動。02年、私的な実験の小さな成果が「私的解剖実験 -2」に結晶。同作品はトヨタコレオグラフィーアワードファイナリストとして同年7月に上演。人のダンスの手法について思考し体で試行する「道場破り」など、自主企画も多数。10年より、国の枠組みを疑って民俗芸能を観察する試みであるAsia Interactive Researchを始動。 ⇒公式ページ 8月31日[金]20:00開演高嶋晋一 「Half of Us」 出演|福留麻里、高橋永二郎、高嶋晋一 高嶋晋一《You say here “Wish I was here”》2009年 高嶋 晋一1978年東京生まれ。パフォーマンスやヴィデオによる作品を制作/発表。2008年四谷アート・ステュディウム最優秀アーティスト賞受賞。主な展覧会/公演に「インターイメージとしての身体」(山口情報芸術センター、2009)、「気象と終身―寝違えの設置、麻痺による交通」(橋本聡との共同企画、アサヒ・アートスクエア、2010)、「ポジション・ダウトフル」(ユニット「前後」名義での神村恵との共作、blanClass、2011)など。 9月1日[土]20:00開演小杉武久 「Circuits」 出演|小杉武久、和泉希洋志、高橋悠治 小杉武久Photo:高嶋清俊 Kiyotoshi Takashima撮影場所:2009年 国立国際美術館 小杉 武久1938年東京生まれ。1960年に日本で最初の即興演奏集団「グループ・音楽」を結成。60年代初め、イヴェント作品が「フルクサス」によって欧米に紹介される。1969年「タージ・マハル旅行団」を結成し、国内外の様々な場所で演奏。1977年のアメリカ移住以来、「マース・カニングハム舞踊団」の音楽家として活動。1995年から2011年まで同舞踊団の音楽監督を務める。また、個人としても、世界各地の芸術祭、コンサート、展覧会に数多く参加している。 9月2日[日]17:00開演大友良英 one day ensembles 「INVISIBLE BORDERS」 出演|大友良英、秋山徹次、石川高、梅田哲也、大口俊輔、木村仁哉、Sachiko M、鈴木広志、テニスコーツ、吉田アミ、千住フライングオーケストラ 大友良英 one day ensemblesPhoto: Peter Gannushkin 大友良英 one day ensembles 音楽家。1959年横浜生れ。十代を福島市で過ごす。常に同時進行かつインディペンデントに多種多様な作品をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がけ、その数は70作品を超える。近年は「アンサンブルズ」の名のもと様々な人たちとのコラボレーションを軸に展示する音楽作品や特殊形態のコンサートを手がける。震災後は福島と東京を行き来しプロジェクトFUKUSHIMA! を立ち上げ奔走中。 ⇒公式ページ 9月3日[月]20:00開演神村恵カンパニー 「沈殿図」 構成・振付|神村恵振付・出演|臼井彩子、剣持真理子、白井愛咲、栩秋太洋、神村恵 神村恵《385日》2010年Photo: 松本和幸 神村恵カンパニー神村 恵|振付家・ダンサー。幼少よりバレエを学ぶ。2000年、国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。同年より、オランダのロッテルダムダンスアカデミーにて1年間学ぶ。04年よりソロ作品を発表し始め、06年からはカンパニーとしても活動を開始。国内外で継続的に公演を重ねている。10年7月、トヨタコレオグラフィーアワードにファイナリストとして出場。10年11月、「飛び地」をシアターグリーンにて上演。 ⇒公式ページ 9月4日[火]20:00開門core of bells 「The pulverized callow feast」 core of bells2003年湘南で結成。カテゴライズ不能の自由極まりないサウンドと一見「非−音楽」とも思えるアイディアでその音楽性を揺らがす5人組。2010年にリリースした1stアルバム「ボトルキープ2010」や、FUJI ROCK FESTIVAL’10「ROOKIE A GO-GO」でのライヴが話題を呼んだほか、ギタリスト・杉本拓との合作アルバム「gesupiria2 ―Lost Banchos―」のリリース、美術家・小林耕平とのパフォーマンスを収めたDVD「PRECIOUS TIME ONLY YOU」のリリース、ワークショップなど、その横断的な活動はほかに類を見ない。 ⇒公式ページ 9月5日[水]19:30開演小林耕平 「タ・イ・ム・マ・シ・ン」 出演|小林耕平、山形育弘 小林耕平「このほうきはあなたであり、そして順序もあるので、はき出すことで並べ換え、語ることもできる。」2012年 Blanclass、横浜 小林 耕平 1974年東京生まれ。1999年、愛知県立芸術大学卒業。主な展覧会に2007年「ボルタンスキープレゼンツ La chaîne 日仏現代美術交流」(BankArt1929)、「六本木クロッシング2007 未来への脈動」(森美術館) 。2009年「ヴィデオを待ちながら ― 映像、60年代から今日へ」(東京国立近代美術館)。2010年、「気象と終身―寝違えの設置、麻痺による交通」(アサヒ・アートスクエア)、「PLATFORM 」(練馬区立美術館)。2012年、「Double Vision:Contemporary Art from Japan」(モスクワ市近代美術館)、「このほうきはあなたであり、そして順序もあるので、はき出すことで並べ換え、語ることもできる。」(blanClass Live Art) 9月6日[木]20:00開演村川拓也 「ツァイトゲーバー」 演出|村川拓也出演|工藤修三 村川拓也《ツァイトゲーバー》2011年 村川 拓也演出家/映像作家。1982年生まれ。2005年、京都造形芸術大学卒業。同年、ドキュメンタリー映画『迷と惑』、台湾・Wushantouドキュメンタリーフェスティバル招聘。2012年、『「無人島」のちに「対話」』大阪市立芸術創造館 芸創CONNECT vol.5 優秀賞受賞。主な作品に、2009年、『建築家とアッシリアの皇帝』(作:フェルナンド・アラバール)アトリエ劇研(京都)。2010年、『小走り/声を預かる』(引用文献:宮本常一)アトリエ劇研(京都)。2011年、『移動演劇 宮本常一への旅 地球4周分の歌』(引用文献:宮本常一)岡山県犬島野外舞台(岡山)、『ツァイトゲーバー』シアターグリーン(東京)、2012年、ドキュメンタリー映画『沖へ』京都シネマ(京都)。 ⇒公式ページ 9月7日[金]17:00-22:00橋本聡 「偽名」 出演|遠藤水城、梶田竜嗣、小林晴夫、沢山遼、柴田知世、高嶋晋一、高橋永二郎、河口遥、豊嶋康子、中井悠、成相肇、橋本聡、桝田倫広、松井勝正、三輪健仁、百瀬文、他 ・画像データを差し上げますので、記録メディアをご持参ください。 橋本 聡 1977年生まれ。最近の発表に、2010年「行けない、来てください」(ARCUS)、「気象と終身―寝違えの設置、麻痺による交通」(アサヒ・アートスクエア)、グループ展「もっと動きを―振付師としてのアーティスト」(広島市現代美術館)。2011年「‘Sell Me Your Concept’ in India」(インド)、グループ展「不幸なる芸術」(switch point)。2012年グループ展「Omnilogue: JOURNEY TO THE WEST」(Lalit Kara Academy, ニューデリー)、「独断と偏見:観客を分けます」(国立新美術館)、2017年「未来芸術家列伝IV」(東京)など。 橋本聡「独断と偏見:観客を分けます」2012年3月24日 国立新美術館 ⇒関連ページ 9月8日[土]20:00開演一柳慧企画・構成|一柳慧出演|一柳慧、甲斐史子、有馬純寿 Photo: 岡部 好 Koh OKABE 一柳慧 1933年兵庫県生まれ。作曲を平尾貴四男、ジョン・ケージ、ピアノを原智恵子、ヴィヴェレッジ・ウェブスターらに師事。1950 年代後半からニューヨークを中心に、ケージ、デヴィッド・テュードアらと実験的音楽活動を展開。1961 年帰国、偶然性や図形楽譜を用いた作品と、欧米の新しい音楽の紹介と演奏によって、さまざまな分野に強い刺激を与える。作曲家として、また、ピアニストとして世界各国で精力的に公演に取り組み、常に現代音楽の最前線を更新しながらプロデューサーとしても多数の企画に携わる。 ⇒関連ページ *各日17:00開場。メインプログラム開始まで、エントランスホールをラウンジとし、ライブやトークイベントなどを開催。またBEER MOMATにてフード&ドリンクを販売、夏の夕べに心地よいひと時をお過ごしいただけます。 *都合により開演時間は変更することがございます。 *作品のコンセプト上、開演後の途中入場をご遠慮いただく場合がございます。ご了承下さい。 *以下にて最新情報を発信中です メインプログラム開始までのラウンジDJ担当者発表! 8月26日(日) 空間現代|DJ (17:00-)+Live (18:30-) 8月27日(月) Riow Arai 8月28日(火) 石田多朗/大和田 俊 8月29日(水) No Collective 8月30日(木) KAZUHIRO ABO 8月31日(金) Taro Peter Little 9月1日(土) 湯浅 学+松村正人 9月2日(日) *17:00より「大友良英one day ensembles」によるメインプログラム開演 9月3日(月) KAZUHIRO ABO 9月4日(火) core of bells 9月5日(水) ポチョ☆ムキンコ[公魚]|DJ (17:00-)/表現|Live(18:30-) 9月6日(木) 荏開津 広& Cameron McKean 9月7日(金) *17:00より「橋本 聡」によるメインプログラム開演 機材提供:オタリテック株式会社、おっとり社 9月8日(土)17:00-18:00予定「結果とは過去である──そして、穴の底では、夢みるように」 まだ来ぬ14番目の夕べを待ちつつ、過ぎさった13の夕べを振り返るトークイベント「結果とは過去である──そして、穴の底では、夢みるように」を行います。 出演|上崎千[慶應義塾大学アート・センター所員(アーカイヴ担当)]、森大志郎[グラフィックデザイナー]、三輪健仁[当館研究員]。 記録集 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2012年8月26日(日)~9月8日(土) *入場無料(申込不要) 東京国立近代美術館

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